はれるや荘の彩子さん 5 | 愛と平和の弾薬庫

愛と平和の弾薬庫

心に弾丸を。腹の底に地雷原を。
目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

「あら、すーさん、行ってらっしゃい!気をつけてね!」

今日も笹焼彩子さん、つまり大家の声で俺は起こされる。

このすーさんは203のすーさん、タクシー運転手の多摩木さんだ。

ここに引っ越してくる前に大きな会社をクビになったとか言って、いくつも面接に行った結果、何とか入れたのがタクシー会社らしいが、まだ他の仕事も探してるんだってこった。彩子さんがそんなことを言っていた。

他の住人のことなんか正直どうでもいいし、第一住人のことをべらべらしゃべるのはどうかと思うが、彩子さん本人は勿論、多摩木さんも大して気にはしていないらしい。俺はといえば、慣れた。ただ一言、慣れた。慣れるしかないということを学んだ、と言ってもいい。