すーさん!とか呼ばれて振り向く俺らも俺らだが、まずは呼ぶほうだ。
と言っても、もちろん彼女だって誰彼かまわず同じ呼び方をするわけじゃない。
店子といえば子も同然なんていう言葉は、確かに平成生まれの俺にわかるわけもない。
大体にしてなんで、大家といえば親も同然なのか。ただの語呂合わせじゃねえのか。
しかしそんな江戸時代みたいなことを言われてあけっぴろげに笑って見つめられたりすると、
俺みたいにどっから湧いて出たのかもわかんねえような生き物には、何やら効くのである。
何がどう効いてくるのかは皆目わからない。でも確かに「効く」のだ。彩子さんってのは。