しかし、と言ったきり黙っちまったらただの脳たりんだ。
しかし、と言ったからにはそのあとに続く言葉がなけりゃならないのである。
それまで言っていたことと反対の言葉が出てくりゃしめたもん、ってやつだ。
しかし、それまで何を言っていたか覚えてりゃそれも可能だろうが、
中には記憶力に自信がないバカってのもいて、
脳みそを母親の腹の中に忘れてきた野郎なんてのはその代表みてえなもんで、
それは俺だ。
で、何を話してたのか、俺は思い出そうとして、頑張っている自分に気がつく。
無理だ、無理だ、という思いが胸の中に溢れかえるのはこういう時だ。
思い出すなんて、無理だ。
そして耳の奥からよみがえる声ーーろくな人間にゃならないね。
ああ、なれないんだよ。
俺は頑張れない。何一つ、頑張れない。だからこんなんなっちまったんだ。
でもな、こんな人間にしちまった、そのいっちゃん下地を作ったのは誰だい?って話だ。