どっかに脳みそ忘れてきちまったんだ。
きっと母親の腹ん中。
いや、てめえの損得にしか関心のねえあの女のこった、
あんなクソろくでもねえ男のガキにやってなるもんかってなもんで、
腹ん中に脳みそ一個、がっちりキープして、側だけ出してよこしたにちげえねえ。
ご丁寧にっつーか、ご愛想につーか、ちんこだけくっつけてよ。
あっはっは、そうかいそうかい。
わかったわかった、リョーカイだ。
だったらはいはい、そうだね、気ちげーとして生きてきゃいいってこった。
だってそうだろ、脳みそもらえねえで生まれてきたんだからな。
ああ、ありがたやありがたやときたもんだ。
もう金輪際、キョーイクってえやつとは無縁でやってこーって話だ。
そんでついでに納得。
あの日、かわいいガキのつもりでいた俺に母親の言った言葉……
「ろくな人間になんないね」
はいはい、そりゃそうだ。
言われたときゃ、それがてめえのガキに言う言葉かってドタマに来たもんだが、
今ならなんぼでも納得できるってもんだ。
ところが世の中、気違えにはなんて生きにくいんだ。
てえのも気違えってだけで、どこにも生き場所が見つかんねんだ。
生きるどころか、行きてえ場所さえ定まんねえ。
なんつっても脳みそ忘れて来てんでね、どこ行って何したらいいかもわかんねってこった。
いやあ、のっけから参ったね、ってんで、とりあえずはしょーがねえ、
気違えじゃねえ真似事でやってくかってことにしたわけですよ。
ね、そうなんですよ。
気違えで生きてけねんだからしゃーないね、ってことであります。
でも根が気違えですからね、どうにもこうにもまともに食ってくってことが
どういう事柄の上に成り立ってるかがわかんねんですね。
脳みそねっすからね。
しかしですね、生きてたいんなら、メシの一杯にもありつけてえんならってんで、
ほら「しかし」なんて言葉も覚えたんですね。かしこになったわけじゃねんです。
脳みそないなりにいろいろ拾ってくわけですわ、道のそこここから、
それなりに見えるために役に立ちそうなことを。
で、「しかし」とか言っちゃってね、そうこってね。
(つびこんてぃにゅーど)