その日、俺たちは大河原のえずこホールを目指しながらも四号線を蔵王まで行ってしまった。なんであのホールは浄水場のような見てくれなんだ?奥さんも同じことを言ってたぞ。そして「車を駐車場に収めたら軽く何か食べようね」の予定だったんで、隣りのFORTEとかいう商業施設に入ったんだが、なんか薄暗い。そばでも、と思って「Tukamoto」って、Tとuのあいだにsも入れたほうがいいよ、と思わずにはいられなかったテイクアウト風食物屋の前に立てば、各種そば・ラーメン類一律500円、スパゲティ700円。高いと思う。でもまあたまに来た大河原でもあるし、とか理由にもならぬ理由で自分を納得させてわれわれは山菜そばと塩ラーメンを頼んだ。すると、もうお湯を落としちまったので十分以上はかかるけどいい?と言う。こういう場合の「10分」は大抵20分である。で、お湯は今からちっちゃい鍋で沸かすのだ。しかもここはTとuのあいだにsが入ってない「立ち食いそば屋風テイクアウト的軽食スペース」のTukamoto。さらに、開園までもう30分もない。やだな。こんな店で開演時間を気にしながらじりじり待たされるのはやだな。しかしきっと終演は十時近いだろうし、絶対腹は減るな。で、食ったのは400円のたこ焼きでした。六個入。一個いくらよ、と奥さんが言う。66.66666……円。途中でマックでも食えばよかったなんて後悔は先に立たず。中々辿り着けず、着いてみたらなんかうらぶれた周囲環境。と愚痴はさっさと一段落にまとめ、リクオのHOBO CONNECTIONはよかった!の話へ入ろう。ハイロウず。
さて、タイトルの、「中川」ってのはSoul Flower Unionの中川敬、
「三宅」はずっと清志郎と一緒だった三宅伸治。
宮城県南・大河原の「えずこホール」、
ピアノマン・リクオがホスト役を務める「HOBO CONNECTION」。
おまけに梅津和時まで来ちゃて、わたしゃほとんど涙腺開きっぱだったよ。
メンツはもう一人、川村結花。「夜空ノムコウ」の作者だそうだ。
男の子の心情を切なく歌う中で、この曲はかえってやらなかったほうがよかった、
ってぐらい初めて聴く曲がよかった。素直に感動したのさ、俺。
川村っちが引っ込んで再びステージに現れ、梅津を引っ張りだし、
「清志郎さんと作った歌です」とリクオが始めたのは「胸が痛いよ」。
リクオと梅津さんのあいだに前かがみになって歌う清志郎の姿が浮かんだ。
梅津氏の音だけで清志郎の不在を痛感させられてるっつーに。
しかしリクオの歌のうまいこと。声が伸びる。でかい。安くない。
とか思ってたら梅津和時の「歌の時間」がやってきた。
震災後、何もできずにボケっとしてたらふっと曲ができたんで、
それをライブでやったらおおたか静流が詞を付けてくれたという「東北」。
まっすぐで深い声。まっすぐで深い真面目さ。
この日、ずっとステージに漂っていたものでした。
中川が出てきて空気ががらっと変わる。
「そら」「海へゆく」、新曲「世界はお前を待っている」、「死ぬまで生きろ!」はちょっとボ・ディドリー風に。あとからみんなでやった「満月の夕」ではリクオのコーラス、梅津和時と川村結花のお囃子、
三宅伸治の口元も動いてた。
三宅は出てきて歌いだしたら、これまた中川とは正反対方向に空気を変えた。
しっかり、三宅伸治。
しっかり、ブルーズ。
友部正人のカバー「(タイトルはわからない)」。
みんながステージに戻っての、「何もなかった日」。
そしてしっかり、ロックンロールも。
大円団――リクオが歌う「ミラクルマン」で最高潮。
アンコール一曲目は前記の「満月の夕」、そして感動の
あいしーまいらいふかむしゃいにん、ふろむざうぇすたんとぅじいーすと、
えにぃでーなう、えにぃでーなう、あいしゃるびれりしぃすと!
「I Shall Be Released」!
あいしゃるびーりりーすと!マジでそうありたい。