2・3年前、頭上からガガガガガ、突然の騒音。
それは2・3日でやんだが、その後、ドタドタドタドタ、また別の騒音。
ガガガガガはフローリングの工事音で、ドタドタドタドタは板床をかかとで無遠慮に歩き、走り回る音だった。
朝10時まで寝て、やっと充分に眠ったと思える我が身体、たちまち悲鳴。
直接の苦情のあとも我が睡眠時間は保持できず、勘弁してくれ!どうにかしてくれ!の投書も数回。
しかし毎朝8時半に始まる運動会は収まらず、2008年暮れ、久しぶりの投書。
そのほぼ一時間後、ピンポン。
モニター画面を見れば、五厘刈りの雪だるまがあごを突き出し、「上の者ですけど」。
初登場。
これまで文句を言いに行った時に現れ出たのは20代半ばと思しき母親と幼き娘。
旦那は初登場だったのだ。
しかも、五厘刈りの体重100キロはくだるまいぶっとい腕つきの雪だるま男。
思わず台所へ向かいかける俺。
いかん!俺は何を考えているのだ。包丁はいらねえだろ!
ふっと息をつき、ドアへ。
金具をかけ、半開きで応対。
しかして、彼は、
「娘は畳の部屋だけで、しかも発泡のシートみたいなの、わかりますか、あれの上だけで遊ばせてて……」
「こんなこと(苦情、投書)が続くなら引っ越そうかとも考えてるんですよねえ……」
「自分も不規則な勤務ではあるんですよね……」
「10時までですか、そうですか……」
見る見るしぼむ恐怖。
見る見る膨らむ、なんかこっちがいじめてる感じ。
金具をはずしてドアを完全オープン、
そして、気がつくと俺は言っていた。
「少々はこっちも我慢するから……そういうことで、気をつけてくれるかな」
和解?
そう、和解してしまったのだ、俺は。
もちろん相手が「五厘刈りの体重100キロはくだるまいぶっとい腕つきの雪だるま男」だったからじゃない。
いや本当に、マジで、そうじゃない。
なんだかね、その家のあるじとやっと話が出来たら、
そして相手もとんでもなく気を使いまくってると知ったら、そんな心になってしまったのだ。
不思議だね。
しかし……なんでこっちも我慢せにゃならんのだ?
とあとから思い返した私。
我慢、はおかしいだろ。
と考えて出た。結論が。
問題は相手(上の住民)ではないのだ。
かかとの歩み、その一歩一歩ががっちり聞こえてきてしまうような床を張った奴らがいけんのである。
年明け前から、上はこっちが気の毒になるぐらい静かにしてくれている。
なんつっても雪だるまなので時折、ミシッと鳴るが、ドタドタドタは、まったくなくなった。
もし万が一、再び俺の睡眠不足ノイローゼが発生した時には間違えぬようにしたい。
いけんのは、かの家族ではないのだ。
むしろ彼らと共闘して業者をば責めねばならぬのだろう。
大丈夫とは思うけど。
しかし……旦那、
登場はもっと早くにして欲しかった。
出てくんの、遅すぎだろうが!
まったく近頃の若いモンは。
あっ……!