初めてその人の姿に触れたのは「スティング」においてだったと思う。
今調べたらその映画に出た時にはすでに、その人は48才だったらしい。
役者の世界に入るのがかなり遅かったようだ。
その後、名画座で「明日に向かって撃て」を見た。
「明日に向かって撃て」と「スティング」、どちらもロバート・レッドフォードとの共演ではあったけれど、
レッドフォードがどちらも若さに任せて先走る、というような若干似たような性格設定だったの対して、
どちらの映画でも渋さを売りにはするものの、
「明日に向かって撃て」では無骨さと落ち着きを併せ持ったおっさん、
「スティング」では知的さを備えたおっさん、としっかり演じ分け、
レッドフォードとの格の違いを印象づけた彼は、
1959年生まれの少年にとって最初で最後の「銀幕の大スター第一号」となったのだった。
(デニーロもパチーノも大好きだけど、「銀幕の……」と言うよりは、名優の域を出ないのは時代のせいだろう)
その後、少年が青年に、そしておっさんになるにつれ、世の中にはレンタルビデオなどというものが浸透し、
青年やおっさんは「ハスラー」や「長く暑い夜」で、その人の若い日々の姿に触れ、ぶっ飛んだ。
かっくいいぃぃぃ~~。
体じゅうから若さの、骨太な躍動感のオーラを発散しまくるその人は大スターそのものだった。
そして「評決」、「ハスラー2」。
老境の渋さ、賢明さを併せ持つ自信と確信に満ちた男をひたすら演じていた。
そんな彼が、最後にしっかりと両足で着地したところ、
それが「ノーバディーズ・フール」という映画だった。
(映画の中の彼は足に古傷を持つ男で、中々しっかり着地できてなかったけれど)
「Nobody’s Fool」
この映画の魅力は見た人だけがわかっていればいい。
見ていない人には一言たりとも説明したくない。
その人の魅力がぎっしり、隙間なくつまった映画だから。