S温泉一泊二日①「1号機」 | 愛と平和の弾薬庫

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心に弾丸を。腹の底に地雷原を。
目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

 仙台にちらっと初雪が降った直後の11月15日、いろいろタイヤ交換方面が混雑する以前にスタッドレスタイヤに履き替えていたもんね、とはいうものの数日前にはしっかり街が白く覆われる日などもあり、しかも行き先は山形とのほぼ中間、奥羽山脈の山裾に位置するS温泉郷、気温しだいではツルツルかもなあ、と少々ビビりつつその日を迎えたら、どこまでも青空の素晴しき日和、気温も朝から10℃越え。よかったよかった、といざ発進。向かうはこれで二度目となる☆☆ホテル。伴侶がなぜかすっかり気に入ってしまった、一人一泊1万ちょっとという宿。

 最近旅館に行くと、古い建物に建て増し建て増しで二重三重構造になっている宿が多くある。極めつけは岩手の志戸平温泉で、迷路のような大きな建物の中をどこをどういったら風呂に辿り着けるのやらといった調子で参ってしまった記憶があるが、小さな小さなこの☆☆ホテルもご他聞にもれず新館と旧館とに分かれていて、新と旧ではその部屋の様子に歴然とした差が生じていて、旧館のほうはトイレのない部屋さえある。もちろんそんな部屋は破格に宿泊料が安い。でもやっぱりトイレがねえとなあ、さんざん呑んでしまうクチにはつらい。たまらない。しかし部屋風呂なんぞはジャブジャブゴーゴーと温泉三昧を目指してきた身にはいらないいらない、というわけで、旧館の風呂なしトイレつき、1万ちょっとの部屋と相成ったのだった。

 俺なんぞは半端に貧乏人根性がしみついてるもんで、せっかくの「温泉の喜び」をしみったれた部屋でしょぼくしたくない、なんて思っちまうんだが、伴侶はそのへんが割り切れてる。「寝るだけなんだから部屋なんてどーでもいいの」と来たもんだ。「どーせ酔っぱけちまう(酔っ払っちまう)くせして!」 まさにまさに。

 しかし問題はしょぼいだの、しみったれただの、そんな範疇では収まらなかった。エレベーターにも新と旧があり、新館に泊まる分には新しいほうのエレベーターだけで事足りるからよいのだが、旧のほうに部屋を取ってしまった人間はどうしても旧のほうのエレベーター(いわく「1号機」!)も使わねばならず、なぜそれが問題なのかというと、この1号機、調整中で……ズレるのだ……エレベーターが、ちょっと、15cmぐらい、つまりはハガキ一枚立てたぐらい、時々。

 もちろん「ただいま調整中で段差が生じる時があります」なんて貼紙がしてあったりなんかして、「でも大丈夫だから!」というメッセージは伝わってはくるんだけど、やっぱりけっこうビビる。一応、片足でちょんちょん、なんて突っついてみてから乗る。が、がくんがくんと鳴ってやっと止まると、開いた時、やっぱ20cmぐらいズレてる。時々。

 今にしてちょっと、しまった!と思うのはこのズレた状態を写真にとってこればよかった!ということなんだが、でもカメラなど構えた時に限ってこういうヤツはピッタリ止まったりするんだよね、何度カメラを用意しても、きっと。

 はてさて、一泊二日のお話はまだつづく……。