兄チャンは俺の頬っぺたを叩いて俺を目覚めさせた。
熱い熱いその手の平が俺を正気に戻らせるに充分な何かを俺に伝えたからだった。
ハッとして目を開き兄チャンを見ると、兄チャンはすでに俺に背中を向けていた。
海を睨んでいた。
海の向こうには俺が昨日まで飲み込まれていたあの龍がいる。
龍の腹の中では誰もが同じ笑みで笑わされ、同じ歩幅で歩かされていた。
兄チャンはもう俺を振り向かなかった。
けれどその後ろ姿は俺に語っていた。
家族というものの大切さ、大きさを。
巨大で卑劣な龍に立ち向かう、兄チャンは大きな人に見えた。
そんなことは本当の目的じゃないのだけれど、
兄チャンはあの大きな龍をなぎ倒してしまうかも知れない。
命を賭ける気でいるんだ、と俺は気づかされた。