朝、目がさめてトイレに行こうとしたら視界がおかしい。かみさんに目を見てもらったら、左目はなんともないが、右目が上下と右にしか動いていないという。左のほうを見ようとすると、だから、視界が「割れる」。
「9月20日で定年なんだよ」とそのおっさんは言った。「直らねえってこともあるだろうから、そうなっちまった時の(定年後の)楽しみも考えとかないとな」
これまでも結構大変な人生を歩んできたんだろうな、と思った。でなけりゃそんなことになってるのにこんなことは言えない。
原因は神経か、目の筋肉の磨耗か、それとも、脳から来てるのか。
「今度乗った時までにわかったら、教えっからっしゃ」
そう、軽い調子でおんつぁんは言った。が、再び俺の車に出くわすなんてまずありえない。
こういう人に俺もなりたい、とは思ったがこんな突然の病気に、俺ならやはり耐えられない。案外、そんな「耐えられない気分」を薄めるために、ウンちゃんにぶっちゃけて見せたのかもしれない。そうかもしれない。
明るさは光だ。仲良くしようとする心がけは宝だ。