人と人のつながり方として
思いつく限りのことをあげてみても
これは考えつかない、と毎回思うのが
小川洋子さんの作品である。
広く知られている「博士の愛した数式」
以外にも「ひよこトラック」や「猫を抱いて象と泳ぐ」
など、今まで誰も考えつかなかった
心震えるつながりが展開される。
最近読んだ「約束された移動」もそのひとつである。
お互いに知り合いもしないのに
特殊な方法でつながることだ。
そんな話はよくあると思うかもしれないが
「知らない」と「出会う」
が共存するその方法が
とりわけ美しいのだ。
「片方の妄想かもしれず
そうでないかもしれず」の「曖昧さ」に
座って読んでいても宙に1cm浮くがごとく
ぞくぞくしてしまうところがいいのだ。
彼と彼女のつながる「X次元」は二人だけのもの。
誰も知らず当人だって知っているかどうか…。
インターネットで世界につながる時代になったから
知らずに出会う、は
現代にある心象である。
しかし、この「X次元」のようなところで
つながる世界だって
すぐ触れられる隣にあると自分には思える。
自分はときどきそのX次元に
いったりまたこっちに来たりしている気が
…しないでもない。