作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(712)」 | ロロモ文庫

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挑戦!珍素材(前)

浅草で電球を食べる胃袋魔人を見て驚く山岡たち。「人間は鍛えれば何でも食べられるようになるのかしら」「ぬ、あの人は特異体質だ」「我々は食べられないと思ってるものを食べてる人っているな。オーストラリアのウィチェッティ・グラブという芋虫」「俺はイナゴの佃煮に驚いた」「俺は水掻きだ。香港でアヒルの水掻きを見た時に驚いた」

ぬうと叫ぶ根山。「俺は美食俱楽部で海原雄山に自由な発想で料理を作ってみろと言われている。それで普通食べるものではないと思われているものを雄山に出すことを閃いた。山岡、力を貸せ」「ぬううう」

海原に粕汁を出す根山。「ぬ、これはたくあんの古漬けのしっぽと一番上の頭の部分、客には出さないところだ」「その通りだ」「ぬう、酒粕が違う。最近は酒を絞るのに、ほとんどの蔵が機械で絞る。残った酒粕は本当の絞りかすで、酒のうまみが残らない。ところがこの酒粕には米と酒のうまみがたっぷり残っている。昔通りの船で絞った酒の粕だ。たくあんのしっぽの部分の繊維っぽい感触には心地よい野趣がある。頭の部分は日に当たって育つ分、味が濃くて力がある。この部分を捨てては大根の本当のうまみはわからぬ。ぬうう、たくあんの古漬けの酸味と酒粕の芳醇な味の対比が食欲をそそる」

海原に鶏の足を出す根山。「ぬう、中華風に調理したな。鶏の足を皮ごといったん油で揚げ、八角を効かせたタレの入った鉢に入れて蒸し上げる。鶏の皮のゼラチン質がとろりと柔らかくなって、蠱惑的な感触を舌と歯に与える。栄養の満点、しかも原価はただ同然だ」

最後の料理を出す根山。「ぬう、この鉢はワサビか」「ワサビの葉と茎を刻んで、日本酒と醤油につけたものだ。客におろしたものを出した後に葉と茎が残るが、調理人はこうして食べる」「ぬう、熱いご飯に混ぜて食べるとうまいが、今日は粥か」「美食俱楽部では有機米を自家精米するが、不揃いな米粒や精米の時に形の壊れたものは粥にする。粥のふたを取ってみろ。面白いぞ」

むうと唸る海原。「これはざざ虫の佃煮だ。ざざ虫は川に棲むカワゲラ、トビゲラ、カゲロウなどの幼虫の総称で、長野県あたりではこうして醤油で煮て食べる。まさに珍味だ。一見堅そうだが身は柔らかい。しかも思いもよらず脂が乗っていて香りも立ち、粥を相性がいい。そして粥は小米で作ったことで、きめ細かくとろりとなった」「自由な発想で料理を作ってみろと言ったから作ったぜ」

あざとすぎると激怒する海原。「俺の意表をついて喜ぶ人間は誰だか見当はつく。このたわけ者が。士郎ごときの助けを借りるとは。もう一度やり直せ。今度は士郎の助けでも借りて、世間の意表をつくものを作れ」