作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(710)」 | ロロモ文庫

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副部長、受難

慢性膵炎で糖尿病になると悩む富井を中華料理屋に連れて行く山岡。「ぬう、中華はダメだ。脂っこいから」「今日の料理は脂っけなしだ。中華料理はどんなふうにでも調理できる」「ぬううう」

まず蛙のスープだという山岡。「蛙は脂を含んでない。それを鳥と豚のもも肉のハムのスープですっきり仕上げ、キクラゲの細切りと髪菜という淡水の藻類の一種が入ってる。髪の毛に似ているから髪菜と言うが、広東語でお金をもうけるという意味の発財と発音が同じなので、正月などのめでたい時によく使う」「ぬう。癖がなくてさっぱりしたいい味だ」

「鶏のささみを蒸したものだ。酢味噌をつけて食べろ」「む。鶏のささみもこうするとしっとりしたいい味になる」「ワタリガニと野菜の煮物だ。ワタリガニの味噌はよけて、白い身の部分だけ選んで取って、豆腐、パクチョイ、椎茸と一緒に煮てある」「ぬ。それぞれのうまみが重なって軽いけどいい味だ」「春雨とアワビの煮物だ。干しアワビを戻して細切りにして春雨と一緒に煮てある」「むう、春雨にアワビのうまみがじっくり染みて、ふっくらと優しい味だ」

デザートは中華風のお汁粉だと言う山岡。「小豆を汁沢山に煮て、タピオカを戻して作った小さな団子、蒸したタロイモを小さく切ったもの。それに干し杏が入ってる。タピオカはキャッサバの根からとったデンプンで、熱帯地方では米につぐ重要な主食で、消化吸収のよい素晴らしいものだ。タロイモは日本の里芋の親戚で、東南アジアから熱帯にかけて広く食べられる」「ぬううう、幸せだ。小豆の甘み、干し杏のすっぱみ、タピオカの情熱的な感触、タロイモの野の風味。お汁粉でこんなに鮮やかな味わいの合奏が楽しめるとは」富井は慢性膵炎でないことがわかり、すぐに暴飲暴食に戻るのであった。