作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(668)」 | ロロモ文庫

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料理の3原則!?

子供を産んだテルエのために美味しく煮たイカを作りたいがうまくいかないと嘆くブラック。「ショウガと酒を醤油の味つけで2通り煮てみやした。右はとろ火でじっくり、左は短時間でさっと」「じっくり煮たほうは身が固くてイカ自体の味が抜け、イカのにおいが強くなりすぎ。さっと煮たほうは味が物足りなく、なんだか生臭く、イカ自体の味も十分ででない」「そうでげすか」「ぬ。これは博士鍋で解決できる。料理博士に会わせてやるぜ」

早稲田大の小林教授をブラックに紹介する山岡。「ブラックよ。お前のイカの煮方は料理の原則から外れている」「ぬう」「料理の原則の第一は香りを逃さないこと。食材の中の香りは蒸気と一緒に逃げる。だから長時間沸騰させてはいけない」「ぬう」「第二の原則。食べ物に適した温度と時間で調理する。調理の適温は100度より低い。肉や魚は80度くらいでいい」「ぬう」「第三の原則。味は料理が冷めていく過程で、食材に染み込み、温まる過程でしみ出すということ。食材は冷めていく時、食材の中の水の分子が外に出て、味の分子が食材に入り、食材が温まる時、味の分子が外に出て、水の分子が食材に入り込む」「ぬう」

「では、どうすればいいか。まず食材を調理の適温まで熱し、そして適温の達したら、熱を加えるのをやめ、同時に毛布か何かで鍋をくるむ。すると調理適温がしばらく続き、食材は完全に煮え、そのあと徐々に冷めていく。その過程で味がしみ込んで調理は完成する」「ぬう」「そこで作り出したのが博士鍋だ」「ぬ。鍋のまわりにもう一つ覆いがついている」「俺はスカートと呼ぶが、着脱可能だ。スカートをつけたまま鍋に火をかけると、熱はスカートと鍋の間に押し付けられ、鍋全体がまんべんなく熱せられ熱効率がよくなる」「ぬう」「食材は適温になったところで、平らな台の上の置く。鍋のまわりはスカートと台のよって囲まれた空気の布団に包まれることになる。空気は熱を伝えにくいので、毛布でくるんだのと同じ形で鍋の保温ができるのだ」「ぬう」

博士鍋でイカを煮る小林。「イカは丸ごと入れ、調味料も入れ、火にかける。適温調理法だと沸騰も続けず調理できるからイカや魚の生臭さが出ない。魚を75度程度で10分くらい調理すると、まったく生臭く美味しく調理できる」「ぬう。とろ火でぐつぐつ煮たイカが臭くなったのはそのせいか」「しかも長時間煮るとタンパク質が凝固して身が固くなる。それじゃイカの旨みがなくなる」「火から鍋をおろして20分経ったからもういいだろう」

そのイカのうまさに驚く山岡とブラック。「とろりと柔らかくて、甘くて少しも臭くなくて、とても新鮮な味わいでげす」「イカの身の熱の通り方がギリギリだ。半熟卵みたいな繊細な味だ」「鍋を火にかけると煮汁がわーっと沸騰する。そこでポンと火から外して保温するとイカの芯は冷たいから、ちょうど75度くらいになって半熟状態となる」「これでテルエさんに美味しいイカを食べさせてあげられるでげす」「イカだけじゃない。肉もスープも天ぷらも何でもおいしくできるんだ」