作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(664)」 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

恍惚のワイン(2)

わしはワインブームは嫌いだと山岡に言う大原。「そんな人を集めてワインブームを批判する座談会を開き、それで文化部で記事にする。それを読んださとみはソムリエになろうなんて思わないだろう」「ぬ。バカバカしい」「問答無用。業務命令だ」

いやいやアンチワインブーム座談会を開く山岡。「どうも最近のワインブームはおかしいですな。騒ぐのは主に赤ワインばかり」「それがおかしいのよ。赤ワインは体にいいからというので、人気は出たんですって」「ポリフェノールとやらがはいってると言うんでしょ。それだったらチョコレートだって沢山はいってる」「体にいいからワインを飲むなんて、まるで健康飲料みたい」「まったく滑稽ですな」

「前菜は舌平目のワイン蒸し。ワインは白ワインのルイ・ラトゥールのコルトン・シャルルマーニュ1987年です」「なんとも素晴らしい香りだ」「むう、この力強く豊穣な味」「ワインブームとか言うなら、こういうワインを飲んでから言ってほしい」「ワインの本当の価値はこういう名醸ワインにあるのを知らないで、語る人間が多いから情けない」「日本のワインブームは底が浅いんだ」

「この舌平目、コルトン・シャルルマーニュとよく合う。ところがワインブームで騒ぐ連中の中には、日本風に調理した白身魚もワインに合うという輩がいる」「フランス人が白身魚と白ワインと言うと、白身魚でも日本風に調理した物でも合うと思い込んでしまう。フランスでは白身魚はバターやクリームを使って調理する。ところが日本では醤油が主だ。調味料によってまるで違った性質になること考えずに、日本風の白身魚料理も白ワインに合うと思い込む」「日本風に調理した白身魚で白ワインを飲むと、生臭くてやりきれないのに」

「次の料理は鹿肉のソテー、赤ワインソースです。ワインはシャトー・ラトゥール、1975年」「素晴らしい。完璧に熟成している」「この色は液体のルビーだ」「こんなワインを飲むと安くていい加減なワインは飲めないな」「このワインは四半世紀かけて熟成している。ところがワインブームに乗った連中は若いワインを飲んでいる」「しかもその赤ワインで日本食を進めるからあきれるよ」「この間も寿司屋でマルゴーを飲んでる人間がいた」「ワインブームに乗ってる連中は、なんでも合わせてしまう」「彼等のバカ騒ぎがワイン文化を破壊するのよ」

いい加減にしろと吐き捨てる山岡。「確かにコルトン・シャルルマーニュは素晴らしいワインだが、値段はべらぼうに高い。シャトー・ラトゥールは5つあるボルドーの一級格付けワインの一つで、世界中のワイン愛好家の垂涎の的だ。当然値段もべらぼうだ。こんなものを飲めるのは世界でもほんの一握りだ。世界の99%の人間は獲れて2,3年のワインを楽しんでいる。お前らに言わせると世界の99%の人間はワイン文化を知らないことになる」「ぬう」

「そして日本料理とワインを合わせようとする人は味覚も嗅覚もない。それはあまりに考えが狭い。日本人にとってワインはまったく新しい文化だ。ワインに出会ったばかりの今、試行錯誤でいろんなことをするのは当然。それを批判したらワイン文化が根付かなく」「そこまで言うなら責任を取ってもらうぞ」「み」「私はワイン評論家の上杉利光。30年以上ワインに親しんできた。もし日本料理とワインが合うのなら、ワイン評論家をやめる。もし合わなかったら、お前に責任を取ってもらう」「わかった。その場にさとみさんを連れていこう」