怪談お岩の亡霊 | ロロモ文庫

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浪人の民谷伊右衛門に逃げた女房を追うのはもう潮時じゃないかと遊び人仲間の直助に言われる。「お岩が俺から逃げたのは、例の辻斬りの一件を感づいたかららしい。だが俺は岩を是が非でも連れ戻す。あれほどの体をした女はそうはいねえ」「ちぇ。聞いてられないよ。で今日は何を」「岩の親父の四谷左門が岩の妹のお袖を連れて、宅悦のところに行っていると聞いたんだ。それで左門を待ち伏せているんだ」

料理屋をしながら按摩もする宅悦に借金返済のためにお袖を奉公に出す左門。お袖を見て、あれはお岩よりも別嬪だと舌なめずりする直助。宅悦の店の女は男に体を売ると聞いて憤慨するお袖の恋人の佐藤与茂七。伊右衛門はお岩を返してくれと左門に訴えるが、辻斬り強盗を婿に持った覚えはないと言われる。「なんだと」「訴えないのがせめてもの情けだ。どけ」左門に突き飛ばされた伊右衛門は、町娘とぶつかる。伊右衛門を熱く見つめる町娘。

宅悦の店に友人の奥田庄三郎とやってきた与茂七は直助に買われそうになったお袖を助ける。お袖は俺の物だと叫びながら、伊右衛門のところに行く直助。一年待ってくれとお袖に囁く与茂七。「国に帰って親の許しを得てくる。それまで辛抱してくれ」直助は左門にお袖が宅悦の店で大変なことになっていると告げる。家を飛び出した左門を待ち伏せていた伊右衛門が斬る。「旦那。あっしの恋敵もお願いしますぜ」奥田庄三郎を与茂七と勘違いして斬る伊右衛門。

左門の葬儀に現れる伊右衛門。「必ずこの仇はとります。お岩、お前はすぐ俺のところに帰れ。お袖、お前は仇討本懐までの方便に直助と仮の夫婦になってその身を守るんだ」そんなことをと言うお袖に、伊右衛門様のために死ぬ気になって御奉公すると言う直助。与茂七はお袖のことを思いながら江戸を去っていく。

それから一年。お岩の器量はめっきり落ち、伊右衛門は憂鬱な日々を過ごしていた。伊右衛門の隣に金貸しの伊勢屋が越してくる。その娘は伊右衛門とぶつかったお海であった。お岩に灸を打つ宅悦はあなたも大変ですなと同情する。「伊右衛門殿ももう少し優しくされても」「それを言わないでください。私が元気になればあの人だって。それよりも一日も早く父上の仇を」

伊勢屋はお梅と一緒になってくれと伊右衛門に頼む。「去年、浅草の境内であなた様に会ってから、娘はずっとあなた様のことを。それでやっとあなた様を探して、ここに参ったのでございます」「でも、わしには妻が」「存じております。金で済むことでしたら、この伊勢屋は何でも致します」家に帰ってお岩を気味の悪い目つきで見る伊右衛門。

直助を釣りに誘う伊右衛門。「お前、まだお袖さんに手を触れてないそうだな」「へへへ。行こうとすると短刀を喉に当ててね。死なれちゃ業腹だからね」お岩が邪魔なら斬ってしまえばと言う直助。「そうなるとお袖さんは一人ぼっち。こっちの仕事もしやすくなるんですがね」「外道の考えは単純でいいよ」

お梅の乳母のお槙は血の道の妙薬だと言って、丸薬をお岩に渡す。下男の伍平は病気の母に飲まそうと丸薬を盗もうとするが、伊右衛門に見つかって拷問を受ける。伍平を縛り上げた伊右衛門はそこにやってきた宅悦に見張りしてろと言いつけて、伍平を縁側の下に放り込む。

伊勢屋はお槙の持っていった薬は毒薬だと伊右衛門に話す。「人の顔を一変させる大毒薬。あの毒でお岩様の顔が変わったら、民谷様も愛想がつきるかもしれないと。恐ろしい企みでございますが、娘の心が不憫でならぬのでございます」

お岩は丸薬を飲んでしまい、顔は醜く変わり果ててしまう。家を飛び出した宅悦を捕まえる伊右衛門。「宅悦。お岩はあの薬を飲んだか」「じゃあ、お前さんはやはり伊勢屋の娘と」伊右衛門は宅悦にお岩に間男をしないと殺すと脅す。宅悦はお岩を襲うが、お岩の恐ろしい顔を見て、これは伊右衛門に頼まれてやったと白状する。

「不義密通の罪であなた様を追い出して、お梅さんと一緒になろうと言う伊右衛門さんの企みであります。あの薬はあなたの顔を変えて、伊右衛門さんに心変わりさせようとした伊勢屋の企み」鏡を見て、これが私かうぎゃああと叫ぶお岩は世をはかなんで自害する。

そこに現れた伊右衛門はお前を不義密通の罪で斬ると宅悦に言う。あそこに、と呻く宅悦。「そうか。あいつがいたな」縁側の下から伍平を引っ張り出す伊右衛門。「お前、話を聞いたのか」「……」「そうか、聞いたんだな」伍平を刺し殺した伊右衛門は、お岩と伍平の死体を戸板に打ち付け、宅悦と一緒に死体を堀の中に放り込む。

伊右衛門とお梅の祝言が行われ、伊右衛門はお梅を抱こうとするが、そこに直助が現われる。「民谷さん。お前もたいした業悪だな」「首が飛んだって動いてみせるよ、俺は。直助、何の用だ」「言わずと知れた口止め料さ」金を渡して直助を追い払った伊右衛門は改めてお梅を抱こうとするが、お梅の顔がお岩に見えたため、お梅の首を斬りおとす。そしてお岩や伍平の亡霊に襲われた伊右衛門は乱心状態となり、伊勢屋一家を皆殺しにして行方をくらます。

堀で釣りをする直助は伊右衛門と再会する。「旦那、久しぶりですね。今どうしてるんで」「あれからすることなすこと全くな」「今どこに」「本所蛇寺に縁起担ぎに隠れている」女物の着物と櫛を拾った直助は、これは銭になりますよとお袖に見せる。これは確かに姉のものと顔色を変えるお袖。「直助。お前はお姉さまは不義密通の上、逐電と言った。お前は私の味方なのか」「味方でございますよ」

そこに流しの按摩で現れる宅悦。「あ、お前は」「おや、これは。はは、世間は狭いや」そして櫛を見て血相を変える宅悦。「これはお岩様の。助けてくれ」半狂乱になって逃げだす宅悦を追うお袖と直助。そこに現れる江戸に戻ってきた与茂七。「お袖さん。会いたかった。喜んでくれ。国の両親は許してくれたぞ」

これはいったいどういうことだ、と驚く直助は、もう逃れられないと自分のしてきた悪事を全て与茂七とお袖に告白する。「さあ、もう逃げも隠れもしねえ。すっぱり殺ってくれ。こんなしくじりは一生で一度でたくさんだ」

直助を斬ろうとする与茂七を制するお袖。「まだ大事なことが一つ残っています」「え。なんでしたっけね」「父の仇。姉の仇。民谷伊右衛門の居所です」「それは言えねえ。悪党には悪党の仁義がありまさあ。お袖さん、あっしの最大のしくじりはあんたに惚れたことだ。いけねえ、いけねえ。悪党に愚痴は禁物だ。愚図愚図しねえで、さっぱり殺っておくんなせえ」

悪党らしく最後の勝負をしてみないかと直助に言う与茂七。「お袖さんを賭けてだ。これから私とお前とお袖さんで民谷の隠れ家に斬り込むのだ。俺が残るか、お前が残るか、二人とも死ぬか、それとも二人残って最後の勝負を決するか。刀に運命を問うてみるのだ」「気に入った。やりやしょう」

本所蛇寺でお祓いを受ける伊右衛門であったが、またお岩と伍助の亡霊に悩まされて、乱心状態で刀を振り回す。そこに父と姉の仇と言って現れるお袖。「佐藤与茂七。縁あって助っ人する」お前は何だと直助に聞く伊右衛門。「都合によりお前さんの敵にまわり、この人たちの助っ人だ」「おもしれえ。相手になってやる。三人とも地獄の道連れだ」

直助は伊右衛門に斬られるが、伊右衛門に致命傷を与える。「お袖さん、とどめ」事切れる直助。お袖に刺される伊右衛門。「はは。直助。縁がなかったねえ」事切れる伊右衛門。お袖の前にお岩の亡霊が現われて消える。姉上様と駆けだそうとするお袖を与茂七はそっと抱きかかえるのであった。