作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(605)」 | ロロモ文庫

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真の国際化企画(中)

大原に1都1道2府43県を回るという山岡。「バカなことを言うな。今度の企画は国際化が眼目だ。国内をうろうろして何になる」「本当の国際化は国内の理解を完璧にしてからだ。最近の若い世代は日本の事を知らない。知らないから伝統的なものを時代遅れとバカにする。今、日本で言われる国際化は欧米化だ。欧米の物まね文化しか知らないのでは新しい文化の創造に貢献できない。日本各地には郷土食豊かな食文化が残っている。その郷土の食文化を通じて我々は日本の文化の根っこのところをと理解できる」「バカ」「ぬ」

「日本の郷土料理なんか垢ぬけなくて国際化も何もあったもんじゃない」「ぬう」「おばあさんのぼたもち?おじいさんのアジのたたき?そんなのテレビでやらせろ」「ぬうう」「最初はアメリカでどうだ。それともフランスか」「ぬううう」「来週、世界新聞協会の国際文化交流委員会の晩餐会を開くことになった。山岡、晩餐会の献立を担当しろ」「ぬうううう」

もっと究極のメニューと至高のメニューの対決をしろと山岡に命令する団。「週刊タイムの部数が落ちてるんだ」「俺は日本全県味めぐりをしたいのに社主のアホがダメだといいやがった」「ぬう、それはいい。全県味めぐりで究極と至高の対決。これで雑誌も売れる」「雄山が納得するかな」「俺が責任を持って説得する」

世界新聞協会の国際文化交流委員会の晩餐会に海原は出席してくれたと山岡にいう団。「でも究極のメニューとの対決の話は」「何が文句がある。地方の郷土料理では究極や至高のメニューに取り上げる価値はないと言うのか」「違う。雄山はお前が地方の食文化や郷土料理を扱うと村おこしのための観光呼び物つくりの程度のものになり、日本文化を正しく伝えないと思ってる。だから今日の料理を見て判断すると言ってる」「ぬう。ふざけやがって」

前菜に沖縄名物の豆腐ヨウを出す山岡。「泡盛の古酒を添えてある」「これは鮮烈」「チーズに似た風味だがチーズより一層滋味深い」「豆腐が材料とは思えない、ねっとしとした舌ざわり、濃厚なうまみ」「そこに古酒を包むと高貴で芳香な味と香りが体を包む」前菜に北海道産エゾ鹿の肉の大和煮を出す山岡。「柔らかい。絹のような舌ざわり」「肉をこんなに優しい味に仕上げるのは日本人だけだ」前菜について説明する山岡。「日本の国土の特殊性をわかってくれ。豆腐ヨウの沖縄とエゾ鹿の北海道とは3000キロ以上離れている。日本は国土面積は小さいのに、南北に非常に長い島国なんだ」

コゴミにクルミのあんかけを出す山岡。「コゴミはクサソテツの若芽で、日本人の大好きな山菜の一つだ。その上にクルミをすったものをかけた。岩手県の郷土料理、日本の山の味だ」「さわかやな味だ。さっぱりし山菜の味にクルミのトロリとした脂の味が合う」秋田県の名物料理キリタンポ鍋を出す山岡。「キリタンポとは、炊いた米のご飯をつぶして、木の棒に取って形をつけ、炭火で焼いたあと木から外したものだ」「米の餅とも違う。都会的でなく土の匂いのする料理だが、粗野でなく練り上げられた味だ」

二つの料理について説明する山岡。「日本の国土の特殊性をわかってくれ。日本の国土は南北に細長い島国だけでなく、その国土の85%が山だ。しかし日本人はその山を有効に使う。普通の国だったら山岳地方の人しか食べないような山菜が全国的に食べられている。そしてキリタンポだ、稲はもともろ寒冷地での栽培に適さないが、日本人はそれに改良を加え、北海道まで稲の北限を広げた。秋田県も稲作に不向きな雪国だが、今は日本でも有数の美味しい米の産地だ。キリタンポは日本人がこの南北に細長い国土を相手に重ねてきた格闘の歴史が練り込まれている」

今日の料理の趣向は日本の郷土料理だと海原に言う団。「日本の国際化は欧米一辺倒になって日本の文化を見失う危険があると山岡は思ってる、だから若い人に食文化を通じて、伝えようと計画を進めている。究極のメニューに地方の食文化を取り入れた料理を加えていく予定だ。雄山、あんたは至高のメニューに各地の郷土料理を取り入れないかな」「その質問に答える前に言っておこう。今日の献立は実にくだらん。こんなやり方では若い人に日本の文化の伝統を伝えることなどできん」「ぬう」