作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(601)」 | ロロモ文庫

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新しい隣人

東京の文化は情けないと尾沢に言う新しくアパートに引っ越してきた典型的な大阪人の西川。「特に情けないのは食べ物ですわ。東京の味付けは醤油をぎょうさんぶちこんで、砂糖もばさばさ使いよる」「ぬう」「もともと東京には文化はなかったんやから、仕方ないけど」「まあとにかくはるさんが君に料理を作って御馳走したと言ってる」「そりゃあどうも」「何か魚料理をしようと言ってたな」「魚ねえ。ええですな。そうですな。この季節の魚なら」

バカ野郎と西川に怒鳴る尾沢。「そんなに東京がダメならとっとと大阪に帰りやがれ」「え」「何から何まで東京はダメだと言いやがる。はるさんが料理はと言っても、魚は近畿のじゃないとダメだ?おとといきやがれ、ぜいろくめ」

西川から事情を聴いて魚料理を作る山岡。「いい香りだ」「この脂の乗り方、すごいよ」「でも少しも脂臭くない。とても軽くて上品なのよ」「やっぱり、この季節、魚は」「魚は近畿が一番だってか。また大阪自慢かい」「尾沢さん、違うぜ、この魚の名前がキンキっていうんだ」「ぬ」「正式な学名はキチジだ。東北、北海道ではキンキン、千葉や茨城の方ではアカジなどと呼ぶが、キンキと呼ばれることが一番多い。北日本が主な分布地で関西の魚じゃない。一番美味しいのは冬の北海道で獲れるものだ」

「そやから僕、言うたんです。この季節の魚やったらキンキが一番やって」「そうか。近畿地方の魚でなきゃダメと言ったんじゃないのか」「西川、お前も間違えてるぜ」「ぬ」「キンキの煮つけだ。生姜をきかせて醤油と砂糖をたっぷり使ってる。食ってみろ」「ぬう。うまい」「キンキやキンメのような魚は薄味で上品にさっと煮たのでは持ち味が出ない。キンキ独特の風味、この脂の味、この美味しさを引き出すのは、醤油と砂糖を思い切りきかせることが必要だ」「ぬうう、すんまへん。しょっぱくて甘くても下品じゃない味もあること、ようわかりました」