作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(599)」 | ロロモ文庫

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舌で味わう!!

情報産業研修会で、食べ物について正しい情報を伝えなければならないという山岡。「フグ料理屋にしても養殖と天然を使ってるのを違いも無視して、同列に並べて安い高いと言うのはおかしい。養殖のフグはコリコリしてるが身の滑らかさで天然のフグにはかなわない。天然のトラフグの白は歯ざわりももっちりと心地よく、淡泊なのに深いうまみが舌を包み、艶冶な香りが鼻に抜ける。チリにしても養殖物は煮すぎると身のうまみが抜け、身もばさついて生臭くなる。天然のトラフグは煮すぎても身はしっとりときめ細かく、豊穣な香りが立ち上がり、生の時とは違った成熟なうまみが口の中に広がる」「ぬう。腹が減った。昼飯にしよう」

昼食を食べる山岡たち。「あら、うどんですか」「好きでね、毎日一杯食べないと気がすまい」「そんなうどんが美味いか」「ぬ」「そんな縄みたいに太いうどん、美味しいとは思えん」「むう、どんなうどんが美味いんだ」「細めで薄いやつだ」「平らな麺だったら1センチは幅がなくちゃダメよ」「それは名古屋のきしめんだ」「そうよ、幅広で厚みのある麺を味噌味でしっかり煮込む。うどんはそうじゃないと」「バカ言うな。平べったい麺なんてうどんじゃない。うどんは細目で切り口は四角でないと」「うるさいわね」「なんだと」「バカ野郎」「山岡、お前がフグの話をしたからみんな仲が悪くなった。なんとかしろ」「ぬうう」

まずこれを食えと言う山岡。「山芋を拍子木に切り、刻み海苔で散らし、酢醤油をかけたものだ」「これはいい」「この甘味が何とも言えないわ」「歯ざわりがしゃくしゃくしていい」「じゃあこれを食え」「そうめんか」「そのつゆをかけて食べろ」「ぬ、これも山芋だ」「さっきの拍子木切りの山芋と違って、極細に切ってある分、とても繊細な感触だ」「拍子木切りで味わえなかった風味が味わえる」「最後はトロロ汁だ」「おお、ねっとりとこくがあって甘みがあって」「ご飯にかけるといい」「山芋だけでこれだけの感動を与えるとは」「さすがは究極のメニューの担当者だ」「じゃあお前ら仲直りしろ」「ぬう。なんでだ」

説明する山岡。「今の山芋の3つの違いは単に形だけだ。拍子木に切ったか、極細切りにしたか、すりおろしたかだけの違いだ。我々は食べ物の味というと、酸っぱい、甘い、塩辛いなどと化学的な味覚に頭がいくが、物理的な形状が味に及ぼす影響が大きい。今の山芋の料理でそれがわかったと思う。さて口論の種のうどんだが、うどんの好みは断面が平べったいとか四角いか丸いか太いか細いかで争っている。ダシとか味付けとか以前に物理的な形状に神経を注いでる。材料は同じ小麦粉だ、しかしお前たちは山芋の場合、拍子木切りも極細切りもトロロ汁も美味しいといい、その形状の違いをむしろ楽しんだ。山芋でできるなら小麦粉ででもできるだろう」「ぬう。自分の好みに凝り固まらず、他人の好みも理解しろということだな」