秘録長崎おんな牢 | ロロモ文庫

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長崎・出島は海外文化の表舞台として華やかな発展を遂げていたが、その裏では悪徳がはびこり、犯罪が渦を巻いていた。犯罪者を収容する牢屋敷は町のほぼ中央にあり、その一角におんな牢があった。

赤毛の女囚おみつに聞く同心の緒方。「お前の罪状は火つけに主殺し。まず火あぶりは免れまい。火あぶりはなかなか死ねんぞ」「……」「有体を素直に申し上げればお上にも慈悲はある。お前はまだ二十歳前でわしも内心同情しとる。お前が潔く罪状を認めれば決して悪いようには図らん」「私は無実でございます。身に覚えがありません」「まだ、そのように申すか」

おみつは奉公していた浜田屋の主人を殺して放火した罪で捕えられ、オランダ商人とおたなという女との混血児で子供のころから天狗の子供とお化けと蔑まれていた。おみつは無実かなという博奕好きのお春に、あの子は無実ですと言う千賀。「あの人の目は罪を犯す人の目じゃありません」千賀はシーボルトの弟子で知り合いの女の子供を堕した罪で捕えられていた。私は産むわと言う盗癖のあるあやめ。「カールさんの子を産むんだ」へんと笑う牢名主のお熊。「女郎のお前の子なんか誰の子はわかりゃしねえよ」

拷問を受けてボロボロになって牢に戻ってくるおみつは本当に無実なんですと千賀に訴える。「罪状を認めれば火あぶりは免れるって言われたけど、身に覚えのないこと」「潔白であれば必ず身の証が立つわ。あきらめないことよ」一度目をつけられえたらダメだよと笑うお熊。「一生この牢で飼い殺しにされるお熊さんの言うことに間違いねえ」

おんな牢にお仙という女が入ってくる。そのふてぶてしい態度に怒ったお熊はヤキを入れようとするが、お仙は逆にお熊を締め上げて牢名主となる。お仙はおみつに冷たい態度をとる。「あいのこの顔を見ると無性に腹が立つんだよ。その化け物面が。あいのこなんか火あぶりになってしまえ」

おみつは浜田屋の手代の信吉と恋仲になるが、浜田屋の主人は信吉は私の娘のおつると一緒になって、浜田屋を継いでもらう身だとおみつを詰る。『その信吉を色仕掛けでたぶらかすとは』『たぶらかすなんて』『本当じゃないか。おつると一緒になることは信吉だって承知してるんだ』『信吉さん。本当なんですか』『……』『あなたが言ったことは嘘だったんですか』やかましいとおみつを一喝する浜田屋。『誰がお前のようなあいのこと一緒になろうと本気で思う男がいるもんか』『……』『なんだ、その目は。この泥棒猫が。夜の明けぬうちにとっとと出て行け』

緒方は眠ることも飯も食わせない地獄責めをおみつに仕向ける。あなたは幸せそうねと言う千賀に、廓の中だったらとっくに堕ろされてるもんと答えるあやめ。もし青い目の赤ん坊を産んだらただじゃおかないと言うお仙に、なぜそんなにあいのこが憎いんですかと聞く千賀。「ただ憎いだけさ」へんと笑うお熊。「お前も大方毛唐に捨てられただろう。抜け荷をやってたんだからね」「なんだと。今度そんなこと言うと腕をへし折るぞ」「へん。ムキになるところを見ると図星だね」

意識が朦朧となったおみつは自分の罪を認める証書に血判を押してしまう。女牢に盲人であんまのおつねが枕探しの罪で入牢する。丸一日眠ったおみつは血判を押してしまったと千賀に言う。「私、いくじなしでした」「それだけの責め苦にあえば誰だって。お上にもお慈悲があるって言ってたでしょう。生きていればきっと濡れ衣は晴れるわ」

おつねが取調べを受けている間に、お春とお仙は一晩だけの牢名主の座を賭けて丁半勝負をし、お春が勝つ。喜ぶお春。「ありがてえ。今晩だけは、畳の上で寝させてもらうよ」夜中、おつねは忍ばせていた針でおつねと間違えてお春を殺す。卒中で死んだと片付けられるお春。お春の首筋の傷の痕を見て、眉をひそめる千賀。

おみつが五日後に死罪が決まったと告げる牢役人に素直に言えばお慈悲があるのではと聞く千賀。「火つけ主殺しで死罪が免れると思ってたのか。たわけめ」どうにもならなかったと嘆くおみつ。「お熊さんの言うとおり、こうなるのが私の運命だったんです」なんとか逃げ出せないかしらと言うあやめ。「誰も知らない遠くの国に逃げるのよ。このままだとおみつさんは殺される」死ねばいいのさと言うお仙。「あいのこなんてこの世からいない方がいいのさ」なんてこといいやがるとお仙を殴るお熊。

あやめは産気づいて、青い目の赤ちゃんを産む。おつねはお仙を殺そうとするが千賀に取り押さえられる。「やっぱりそうだった。この針でお春さんを殺したのね」「お仙を狙って間違ったのさ」なぜ私を殺そうとしたとおつねの首を絞めるお仙。「言わなきゃ殺してやる」「頼まれたんだ。亥之さんに」「亥之?亥之がなぜ」「決まってるだろう。お前が下手にべらべら喋りゃあ、下手をすると亥之さんの首が飛ぶんだ。亥之さんは毛唐に抱かれた女なんか反吐が出ると言ってたんだ。ざまあみろ。枕探しはお前を殺すためにやったんだ」吟味を受けるために牢から出させるおつね。

お仙はあやめの子を殺そうとするが、おみつに阻まれる。この子は死んだほうがいいんだと言うお仙。「おふくろだってこんな子を産んだらどんなにつらい思いをするかわかならい。子供の方だって大きくなりゃ、自分の母親のことを恨むんだ。お前だってそうだろう」「恨むなんて。おっかさんはこの世に一人しかいない。おっかさんに会えるなら、どんなことだってします。おっかさんだって、きっと私のことを」「……」

「あやめさんを見ているとよくわかるんです。私を抱えたおっかさんのつらさが今の私には身に染みて。おばあさんも死ぬ間際までおっかさんを怨むんじゃないよと、幾度も、幾度も。おっかさんに会いたい。でももういいんです。もう一日しかないんです。お仙さんの言うとおり、私なんかが人並みな幸せを求めるのが間違ってるんです」

逃げるかいと言うお仙。「牢を破るんだよ。お前は無実なんだ」「え」「私は本当の下手人を知っている。私を殺そうとした亥之って奴だ。亥之は博奕ですってんてんになった日、浜田屋で火事場泥棒をし、主人に見つかって刺し殺した。おみつ、何としても亥之を引っ張って来るんだ。あいつがいればお前の証は立派に立つんだ」

おみつをダシにして自分も仇をとりたいんだろうと言うお熊に、その通りさと答えるお仙。「それがおみつを助けることになる」お奉行様に再吟味を頼めばと言うあやめに、きっと役人たちは握りつぶすと答える千賀。「はっきり無罪とわかっているのに殺されるくらいなら、思い切ってぶつかってみるのもいいかもしれません」

襦袢や腰巻を裂いて縄を作る女囚たち。お熊は全ての罪は自分がひっかぶると言う。あんたはお仙さんにいじめられたのにと言うあやめに、私はどうせ一生ここで飼い殺しだと言うお熊。天井板を外して牢屋から抜け出したおみつとお仙は縄を使って牢屋敷から抜け出す。

おみつを亥之の家に連れて行くお仙。「お仙」「なんて面してる。この通り、両足ちゃんとあるんだよ」「じゃあ、お前、牢を」「そうさ。お上の手で仇討してやるためにね」「……」「ドジなあんまを送り込みやがって」「あれがおつねの奴が勝手に」「やかましい。言い訳はお白洲でするんだ」

そこに現れるおみつ。「何だ、お前は」「あんたのせいで浜田屋殺しの下手人にされているんです。奉行所に行って本当のことを」「やかましい」ドスを振り回しておみつとお仙に襲いかかる亥之。そして亥之はお仙の胸を刺す。出刃で亥之の背中を刺すおみね。即死する亥之。「馬鹿、生き証人を殺してどうするんだ」と呟いて死ぬお仙。役人に取り囲まれるおみつ。「おみつ。神妙にしろ」「私、無実です。無実なんです」

おみつは浜田屋殺しと火付けの罪以外に、亥之殺しと破牢の罪が加わって、市中引き回しの上、磔にされて火あぶりの刑を受けるのであった。