作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(485)」 | ロロモ文庫

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日本酒の実力(2)

事情を山岡たちに話す江戸一番の経営者の均野。「江戸一番の品質を高めるために多額の金額を投資することになり、日本酒の大きな卸問屋にお金を借りました。その卸問屋を金上が乗っ取ったのです。金上は問屋を乗っ取ると、問屋の傘下にある酒造会社を軒並み支配下に入れようと画策を始めました。私たちは金を返せない。となると会社を解散するか、金上の言うことを聞くかどっちかです」「金上は何を要求してるのですか」

「私どもが造る酒を金上が新たに買収した酒造会社に売れというのです。金上は買収した酒造会社を大々的に売り出すために酒がたくさん必要なんです」「汚い話だが、日本酒の世界ではよくある。桶買いと言って、大きな酒造会社が小さな酒造会社の酒を桶ごと買って、それを自分の名前で売る」「しかも金上は品質はどうでもいいから、今より三倍の量を造れといういのです」「ひどい話だ」

「なぜ金上はお酒の卸問屋を乗っ取ったのかしら」「それは阪神大震災のせいですよ。日本最大の酒どころ、灘が大きな被害を受けました」「ぬう。クソ金上は混乱に乗じて、日本酒業界に乱入しようというのか。二木さん、君の晩餐会に美味しい本物の日本酒が欲しかったら協力しろ。君の祖父さんは二都銀行の会長、お父さんは頭取だ。融資を頼んでくれ」「わかったわ」

ダメだという二都銀行の専務の銀高。「今、日本の銀行はバブル経済が破綻した影響を受けて、不良債権の整理に懸命です。こんな時に行く先のない不安のある業種にお金を貸すわけにはいきません。日本酒醸造業は決して成長力のある産業ではない。日本人の生活様式は今後ますます洋風化し、飲む酒も洋酒に重きが移る。当然、日本酒に対する需要は減るのです」「とにかく俺の持ってきた酒を飲め。話はそれからだ」「むう」

イの酒を銀高に飲ます山岡。「これだ。この嫌な匂い。甘ったるい味。これが日本酒ってやつだ」ロの酒を銀高に飲ます山岡。「おお。これは香りは甘く、味は力強いけどくどくない」イは三倍増醸酒、ロは純米酒だと言う山岡。「第二次世界大戦中、米が不足してるのに酒が必要となって、工業的に作ったアルコール、ブドウ糖、酸味料、化学調味料、水を加えて、米だけで造るより三倍の量に増やした。それが三倍増醸酒だ。普通、それは戦争中のことと思う。ところが日本酒業界では普通酒といえば、三倍増醸酒のことだ」「なんだと」

それは金儲けにためだと言う山岡。「日本の酒造業界は酒税を徴収するために大蔵省の監督下にいる。大蔵省は酒の質に無関心で、酒税のことしか関心がない。酒税業界も同じ原料で三倍の酒を造れるなら、伝統的な酒造りなどやる気がしなくなる。テレビで宣伝している大手の酒造会社は三倍増醸酒を造って儲けてきた」「なんだと」

「日本酒は米だけで作るのが当り前なのに、日本酒業界ではわざわざ純米酒などと言う」「確かに純ぶどうワインなんて言わんな」「この日本酒の苦境は日本酒醸造業者が招いた」「そんな業界に金を貸せるか」「結論を出すな。実は大手の酒造会社は最近、三倍増醸酒をあまり造らない」「ぬ。反省したのか」「そう思うのが素人の浅はかさだ。大手は三倍増醸酒よりもっと儲かる酒を造りはじめた」「なんだと」