ウルトラマンA 第51話 | ロロモ文庫

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命を吸う音

野球をする春男にバイオリンのレッスンがあるのを忘れちゃダメでしょうと言う母親の芳子。「野球のバットばかり振り回してると指が動かなくなるわよ。さあ行きましょう」「春男、行ってしまうのかよ」「ごめんね」「4番バッターがいないとどうにもならないや」「ごめんなさいね。春男はバイオニリストにならなくちゃいけないの」「嘘だい、春男はプロ野球の選手になるんだろ。俺達の中じゃ一番うまいもんな」「春男、行きましょう」

バイオリン教室に行く春男。「春男ちゃん、もう一度、頭から」「先生。僕、弾けません」「どうしたの」「……」「春男ちゃんは素質があるんだから、もっと頑張らなくちゃ」「素質なんてないんです」「バイオリンはね、素質と練習だ。きっと春男ちゃんは練習が足りないんだね。みんなの中で一番いいバイオリンを持ってるんだから、もっともっと頑張らなきゃ」「……」「春男ちゃん、帰っちゃいけません。お母さんに言いつけますよ」

家に戻って野球に行こうとする春夫に、さっき先生から電話があったと言う芳子。「ママ、ぼく、バイオリン嫌いだ」「何言ってるんです。春夫ちゃん、お父さんは天才的バイオリニストだったのよ」「もうその話は何回も聞いたよ。死んだ時、僕を立派なバイオリニストにしろと言ったんだろ」「それを知ってて、なぜレッスンの途中で逃げ出そうとするの」「だって、僕、バイオリンが嫌いなんだ。素質がないんだ」「天才と言われたお父さんの息子に素質がないわけないでしょう」「だって本当に下手なんだ」「お稽古が足りないからです」「……」「さあ、もういっぺん行ってらっしゃい。バットとグローブはママが預かっときますからね」

バイオリン教室に向かう春男。(バイオリンがこわしちゃったと言えば、やらなくてすむんだ。でも怒られるかな。うっかり落としちゃった言えば、そんなに怒られずにすむかもしれない)バイオリンを地面に落とす春夫。怪光線を浴びるバイオリン。そのバイオリンを弾いて、美しい音色を奏でる春男。道端で練習しなくたってと春男に言う恭子とまゆみ。

レーダーに異常な反応があると竜に言う美川。「あれは何でしょう」「地点は?」「Q地区の路上です」「北斗。美川と一緒にTACパンサーでQ地区に行ってくれ」「はい」バイオリンを演奏し終えてへたり込む春男。「春男ちゃん、どうしたの」「ぼく、天才になった。このバイオリンで天才に」春男のバイオリンで美しい音色を奏でてへたり込むまゆみ。変だわと呟く恭子。「春男ちゃんのお母さんを呼んでこよう」

へたり込む春男とまゆみを見つける北斗と美川。「どうしたのかしら」「行ってみよう」春男とまゆみを抱き起す北斗と美川。「なんだ、あれは」「僕のバイオリン。空に飛んでっちゃった」「どうしたのかしら。気絶してる様子じゃないけど」「よかったなあ。これでバイオリンのレッスンに行かなくてすむ」

そこに恭子とともに現れる芳子。「春男ちゃん、しっかりして」恭子に聞く北斗。「君はこの子たちと一緒だったの?」「ええ、二人ともバイオリンを弾いたら、変になっちゃったの」「そうか、やっぱり、あれはバイオリンだったのか」「春男ちゃん、バイオリンは?」「お母さん、バイオリンは空に飛んでいきました」「バイオリンが空を飛ぶですって?馬鹿なことをおっしゃらないでください」「本当です。それに恐らくあのバイオリンには超獣がとりついています」「冗談じゃないわ。高いバイオリンなのに。春男、一体どうしたんです」「美川隊員、この子らをメディカルセンターに連れて、精密検査を受けさせてくれ」「北斗隊員は?」「バイオリンを追う。被害が広がるといかん」「でもどうやって」

私が行くと言う恭子。「あのバイオリンが音を出せば私にはわかります」「よし、頼む」「私も行きますよ。高いバイオリンに傷でもつけられたら大変ですからね」「でもお母さんは息子さんと一緒にメディカルセンターへ」「いいえ。春男は大丈夫です。立派なバイオリニストになる人間が、バイオリンを弾いて、このまま帰るなんて許されませんからね」「でも」

美川にここで言い争ってもしょうがないと言う北斗。「この子だけでも頼む」「はい」空飛ぶバイオリンをTACパンサーで追う北斗。「お母さん、あれが普通のバイオリンですか」「春男ちゃん、あのバイオリンで上手に弾いたわ」「ほんと?」「弾いたんじゃありません。きっとあの超獣が音を出したんです」北斗に連絡する美川。「メディカルセンターに収容された子は筋肉も考える力もほとんど失われています。あのバイオリンが吸い取ったんじゃないかしら」「美しい音で人の心を奪い、エネルギーを吸い取るんだな」

バイオリンを弾いてしまい、心とエネルギーを奪われる男。その音色を聞いてバイオリンに心とエネルギーを奪われる人々。巨大化して空を飛ぶバイオリンをTACファルコンで攻撃する南たち。爆発してギーコンとなる巨大バイオリン。ウルトラマンAに変身する北斗。ギーコンを斃すウルトラマンA。心とエネルギーを回復する春男たち。バイオリンを嫌がる春男君の心が超獣を呼んだんですねと竜に言う北斗。「うん。それにあくまでバイオリニストにしようとするお母さんの執念が超獣にエネルギーを与えたんだろうな」

ホームランを打つ春男を見て、北斗にあんな元気な春男は初めて見たような気がすると言う芳子。「お母さんの大きな期待が春男君の気持ちを押さえつけていたんでしょう、ねえ、隊長」「うん。子供は元気で伸び伸びと育つのが一番です。その上でなら、学問でも芸術でも自分で進んで努力するようになります」「おかげで私も夢から醒めたような気がします」