男はつらいよ 奮闘篇 | ロロモ文庫

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葛飾柴又にある団子屋「とらや」に現われる車寅次郎の母の菊。「あんた、竜造さんの奥さんでっしゃろ」「へえ」「私でんがな、お菊」驚くつね。「まあ、お菊さん」「しばらく」驚く竜造。「あんたも元気でな」「もう久しぶりに柴又に帰ってきて、あっちこっち見てなつかしゅうてな」寅次郎の父親は遊び人で芸者をしていた菊との間に寅次郎を産ませたあとに、本妻との間にさくらを産ませていた。

一年前に寅次郎から手紙があったと話す菊。「近々嫁をもらうことになると書いてありまっしゃろ。親を喜ばそうちゅう気持ちが嬉しゅうてね。すぐにこっちに行こう思うたけど、旅館が忙しゅうて。まあ旅館言うても温泉マークでしゃろ。税務署とか保険所とか暴力団とか警察とかいろいろいじめられましてなあ」「そうですか」「で、寅の嫁はん、どんな娘でんの」「いえ、それはですね」

そこに息子の満男とともに現れるさくら。喜ぶ菊。「あんた寅の嫁ですか」「え」「ほんなら、その子は私の孫ですか。まあ可愛いなあ」違うんですと言う竜造。「これは寅の妹なんです。さくら、寅のおっかさんだよ」おかしいと思いましたと笑う菊。「こんなきれいな子が寅の嫁さんのはずないわい。私、なんでこんな慌て者なんやろ。で、寅の嫁はんは?」「お兄ちゃんの嫁さん?」

さくらに寅次郎が一年前に所帯を持つという手紙を書いたらしいと言う竜造。「浦安の節子さんのこと?」「ああ、そうかもしれない。でもあれは去年の夏だろう。一年前と言えば、幼稚園の秋子先生」「御前前のお嬢さんじゃない」「あれはちっと前よ」呆れる菊にいろいろありましてと言うる竜造。「ほんまにいろいろあったんでんなあ。それで結局は」「その、相も変わらず独身で一人と言うことで」「ああ、そうですか」

寅次郎は旅に出てていないと聞いて、宿泊している帝国ホテルに戻る菊。帝国ホテルなんて凄いわというさくらに、無理してるんだと言う竜造。「貧乏芸者だったお菊さんが30年ぶりに故郷に錦を飾って帰って来たんだ」「今頃何してるかしらねえ、お兄ちゃん」

そこに戻ってくる寅次郎。あんたのおっかさんが来たと寅次郎に言うつね。「帝国ホテルにいるんだよ。すぐ電話しなよ」「俺にはおふくろなんていねえよ」「何言ってんだよ。産みの親じゃないか」「冗談じゃねえや。そりゃ俺はあのクソババアから生まれ出たかもしれねえよ。勝手にひりっ放しにして逃げた女がどうして母親なんだ」

工場で働く博に、お前の女房と喧嘩してしまったと言う寅次郎。「老人夫婦とクダクダ言うから、頭に来てやっちまったよ。さくらは泣いちまったよ」「さくらに何をしたんですか」「何もしないよ。お前、顔見せてやれよ」どうしたんですと言う博に、あんな奴に家の敷居はまたがせねえと言う竜造。「兄さんのお母さんのことですか」

そうだよと答えるつね。「東京にいるんだから、顔見せてやったっていいじゃないか。だってさ、お菊さん、寂しいんだよ」「兄さんは逢わないって言うんですか」「会ったって話すことなんかねえって」俺はおっかさんと言えばいいと言ったんだと言う竜造。「そうすればお菊さんは涙流して喜ぶんだと」「そうですか。しかし、さくら、何もそんなことで泣くことないじゃないか」

そうじゃないのと言うさくら。「私たちが一生懸命話している時、お兄ちゃんたら、プーって大きなおならをするの」そうだと言う竜造。「しかもとびきり臭い奴だぜ」そこに戻ってくる寅次郎。「なんだい。まだガタガタやってるのかよ」「兄さんが悪いんですよ。人が真剣に話してる時にオナラは」「何言ってんだい。出ちゃったものはしょうがねだろう」

神経がたるんでるから出るんだと怒る竜造。「俺たちは寅の事を心配して言ってんだぞ」「それが大きな世話だった言ってるんだ」落ち着いてくださいと言う博。「たかが屁ぐらいで」たかが屁くらいとは何だと怒る竜造に、あんたはあの音を聞いてないからそんなことが言えるんだと怒るつね。そりゃそうよと同意する寅次郎。「たれた本人がびっくりするくらいでっかい音で」我慢できねえと寅次郎に掴みかかる竜造。「うるせえな。屁くらいで泣き面しやがって。糞したら自殺でもしなきゃなんのかい」「オナラじゃなくて、おふくろさんの話してんだ」

さくらたちに説得されて、しぶしぶ菊に会いに帝国ホテルに行く寅次郎。昨日はどうもと菊に挨拶するさくら。すぐにトイレに行く寅次郎を見て、ちっとも変ってないなと言う菊。「二年前に京都で会うた時は、忙しうて話もできなんだけど、あの時とちっとも変ってへん。もうちょっと何とかなってると思うてたけど」トイレから出てきてくだらない話をする寅次郎に、頭を抱える菊。「母ちゃん、どうしたんだい。久しぶりなんだから泣くなよ。俺と会えて嬉しいかい」「懐かしいよ。あぼらしいくらい懐かしいわ」

菊は寅次郎との思い出話をさくらに聞かせるが、寅次郎が真面目に聞かないので呆れる。「お前はほんまに情けない奴やな。母ちゃん、情けなくて昨日も寝れなかったよ」「俺のどこが情けないんだ」「お前のこと、いろいろ聞いた。いったい、お前何をしとんねん。御前様のお嬢さんとか恋人のいる娘はんとか、なんでもかんでも恋してどんどん振られやがってな。それが40に手の届く男のすることか。お前、脳が足らんのとちゃうか」

「何言いやがる、クソババア」「ええか。お前みたいな出来損ないに来てくれる女はな、脳が足らんでもよう来てくれましたと涙流して礼言うてもええねんぞ」「脳が足りねえとは何だい。そんな息子を産んだんのはどこのババアだい」「生まれた時は、ちゃんと足りてた」「そうだろうな。ひりっ放しで放り出されて、長い間雨風に打たれてりゃ、脳みその半分くらいは溶けてなくなるわい。みんなてめえのせいだぞ」

「それが生みの親に向かって言う言葉か」「誰がでめえなんかに産んでくれと言った。畜生、よくも言いやがったな。そのうちてめえが腰抜かすほどペッピンの嫁さんを連れてくるぞ」「結構なこっちゃ。そんな嫁さんできたら、喜んで死んでやるわ」「言いやがったな」

出ていく寅次郎を追おうとするさくらを制する菊。「アホを追いかけてもしゃあない。ほっとき」いくらなんでもあんなひどい言い方はないと怒るさくら。「脳が足りなくても息子でしょう。あたしにとってもたった一人の兄。あんないい方しないでください」「さくらちゃん。おおきに。あんな出来損ないをそこまで思うてくれてやって。おおきに」「……」とらやに戻ったさくらが、寅次郎が出て行ったことを知る。「嫁さがしに行ってくるって」「今度は短かったねえ。たった一晩しかいなかたじゃないか」

ラーメン屋で寅次郎は娘から「エギ、どうやって行けばいいか」と聞かれる。「なんだって」「エギ」「駅か。駅はね、この道まっすぐ行って。パチンコ屋を右に曲がって突き当りが駅だよ」ラーメン屋を出る娘。

あの子は頭が少しおかしいと寅次郎に言う主人。「そうかい」「ちょいと目には可愛い女の子でもとおるけど、目元なんかは間が抜けててさ。あれはどっかの紡績工場から抜け出したに違いないよ。今人手不足だから、工場の人事課長が田舎に行って、まあ変な娘だけど、頭数だけそろえときゃいいって引っ張ってきたものの、人並みに働けねえ。叱られてばかりで嫌になって逃げだすって奴だよ。そのうちに悪い男に騙されて、ストリップなんかに売り飛ばされるんじゃねえかな」

ラーメン屋を出た寅次郎は、その娘が交番にいるのを見かける。警官相手にしくしく泣く娘。「はっきり言いなよ。赤ん坊じゃないんだから」交番に入る寅次郎。「なんだよ」「あの、駅、どこです」「そこじゃないか」「ああ、そうですか。ずっと前からあそこで」「当たり前だ」娘に名前はと聞く警官に、大きな声はいけませんと言う寅次郎。「この娘は頭が薄いんですよ。それを旦那が大きな声で怒鳴るから、この娘は怖くて怯えてるんだ」「あんた、なんですか」「まあまあ」

娘に聞く寅次郎。「お名前、なんてえの」「太田花子」「ねえ、住所どこ。家」「青森県西津軽郡鰺ヶ沢町轟木」「青森か。遠いところから来たんだねえ。これからお家に帰ろうとしたんだな」「んだ」「そうか。大変だな。お茶でも飲むか。おい、ちょっと一杯入れてきて。そうか、青森か。あ、俺にもね」

お茶を入れてくる警官に、この人は優しい人なんだと言う寅次郎。「おまわりさん。この娘は青森に帰したほうがいいでしょうねえ」「そうだなあ。汽車の時間はあるかな」「ちょっと調べます」「花子ちゃん。お金あるか。え、これだけしかないのか。弱ったなあ」

急がないと上野での連絡が間に合わないと言う寅次郎。警官と寅次郎は金を出しあい、駅で弘前までの切符を買って花子に金を渡す。「じゃあ、あんた見送り頼むよ」「わかりました。じゃあ、花子ちゃん、行こう」「帰りによれよ。お茶入れとくから」

終点まで乗るんだと花子に言う寅次郎。「そこから上野に行って、青森行きの急行の乗り場を聞くんだよ。駅員さんとかおまわりさんに聞くんだ。その辺の男は悪い男だぞ」「……」「わかってんのか。何か心配だな。俺も一緒に行ってやりてえけど、汽車賃ねえし」

改札を出た花子を呼び止める寅次郎。「あのね、もし東京で迷子になったらな、葛飾柴又のとらやって団子屋に行きな。わかってんのか、葛飾柴又。ちょっと言ってみな」「カシシカシバマタのトラ」「いや、違う。違うよ」駅員から手帳を奪い、とらやの住所を書いたメモを花子に渡す寅次郎。「これ持って、迷子になったらおまわりさんに見せて。この家に訪ねていきな。そこで寅ちゃんに聞いてきたって言えよ。家の者、親切にしてくれるから」「トラちゃん?」「俺、寅ちゃんて言うんだよ。さあ行きな。早く行くんだよ」

とらやに現われ、「トラちゃん、いるべか」と竜造とさくらに聞く花子。「あんた、誰」「太田花子」警察はまずいよとつねに言う印刷工場の社長の梅太郎。「どうして」「たとえば、寅さんがあの娘を騙して連れ歩いたとしたら、これは誘拐罪だよ」「なんてこと言うんだ、この男は」「たとえばの話だよ」

じゃあなぜこの家に寄こしたんですかと聞く博に、飽きたんだろうと答える梅太郎。「可愛いけど、少し薄いだろう。面倒になりここに押し付けたのかもしれない」「そうですかね」「下手すると田舎からたちの悪い親が出てきて。よくも娘をキズモノにしたなと賠償金一千万なんて」

呆れる竜造。「どうして、そう話を悪い方に持て行くんだ」「俺は冷静なだけだ。この問題については第三者だからね」「何が第三者だ。風船タコが」とにかく青森の役場に手紙を出して両親を探しましょうと言う博。「それしかありませんよ」「そうね。そのうち、お兄ちゃん、帰ってくるかもしれないし」心配する大人たちをよそに満男と遊ぶ花子。

らやに戻ってくる寅次郎、「トラちゃん」「花子。来てたのか。切符なくさなかったか」「うん」「悪い男に声かけられなかったかい」「うん」「俺が書いた紙、ちゃんとおまわりさんに見せたんだな」「うん」「よかった。よかった。この店の人たちは親切にしてくれたかい」「うん」「よかった。俺、どうしてるか、心配で。無事でよかったなあ。泣くな。泣かなくていいんだよ」

花子をとらやに置くべきだと主張する寅次郎。「みんなの眼の届く柴又で働かしてやるのが、あの子にとって一番幸せじゃないのかい」「でも両親が心配しない?」「さくら、両親だってあの子の面倒を見るのは大変じゃねえか。日本の農村は貧しいからなあ」

寅次郎は社長の工場で花子を働かせようとするが、社長が手を出すんじゃないかと心配になり、結局とらやで働かせることにする。花子の世話を甲斐甲斐しく見る寅次郎が心配だとさくらと博に言うつね。「おいちゃんは早く花ちゃんを寅から離せって言うんだけど」「故郷に帰すのが一番でしょうけど」「さくらちゃん。青森の役場から何か言ってきたかい」「ううん。まだなのよ」

河原で歌う花子にお前は歌がうまいなと言う寅次郎。「寅ちゃん。岩木山って知ってるか」「いわきさんって誰だい」「人でねえ。山の名前だ」「津軽の岩木山か。知ってる」「じゃあ、福士先生も知ってるか」「福士先生?」「うん。山でねえ。わたすの先生だ」「学校の先生か」「うん」「ああ、知ってる、知ってる」

「あのな、福士先生、夕焼けの時、花子に岩木山に歌ってやれと言ったの。花子は歌がうめえから、岩木山もうんと喜ぶべって」「花子は福士先生、好きか」「うん」「先生に会いたいか」「うん」「福士先生の嫁になりたいか」「バカなことを。福士先生には奥さんいるんだもの」「そうか」

「寅ちゃんには奥さんいるか?」「そんなもんいるかよ」「わたす、寅ちゃんの嫁っこになるかな」「よせよ。何言ってんだよ。からかうんじゃねえよ。笑っちゃうよ。俺の嫁さんなんて。そんなこと、うぶなお前が言うなんて。でもよ、ありがとう。俺、その気持ちだけで十分なんだよ。花子、もう故郷に帰るなよ。ずっとここにいろよ。俺が一生面倒見るからよ」

花子は普通の子じゃないとさくらに言う竜造。「まあ寅も普通じゃねえ。早い話が足りねえ同士の結婚ってことだ」「でもねえ」「どんな子ができるか考えてみろ。寅の嫁だけには頭がしっかりした人をな」「でも、花子ちゃんはお兄ちゃんのことをあんなに慕っているわ。だったらいいじゃない。子供のことなんか。私、お兄ちゃんがあんなに嬉しそうな顔をしてるの、初めて見たの」さくらは寅次郎のことばかり考え過ぎると言うつね。「問題は花子ちゃんが寅と一緒になって、果たして幸せかってことよ。あたしたちはあの娘のことをよく知らないものねえ」

さくらに電話する菊。「実はね、さっき寅から電話がありましてね。嫁はんもらうと言うとりましたけど、今度はほんまでっしゃろな」「え、ええ」「そうですか。で、寅の嫁になるちゅうのはどんな娘でっしゃろ。あれの嫁になるくらいやから、ちょっと頭悪うおまんやろ。どんな嫁でも結構です。あの子のところに来てくれるいうその優しい気持ちだけでも、私嬉しゅうて。そのうち、私そちらに参りまして、お嫁さん見さしてもらいます」

とらやに現れる福士。「青森の鰺ヶ沢で教師をしています」「花子ちゃんの先生ですか」「このたびは花子がお世話になりまして。昨日、町役場からこちら様のお手紙を頂き、とんで参りました」「そうですか。花子ちゃんはよもぎ摘みに行ってますから、すぐ戻ってきますから」

花子は小さい時から私が生活指導してきたと竜造とさくらに語る福士。「発育は遅れてますが、私としては特別扱いすることなく人間として生きていく自信を与えてやりたいと思いまして。ああいう障害児こそ密度の濃い教育が必要であると思いました。紡績工場のような機械に振り回されると労働には初めから反対だったのですが、家の事情がありまして。半年前から行方知れずになって大変心配しておりました」

花子はどうでしたかと聞かれ、店を手伝ってもらって大変助かっていると答えるさくら。「そうですか。花子は歌が好きで」「ええ、ここでもよく」そこに歌いながらつねと戻ってくる花子。「花子。先生、迎えに来たぞ」「先生、来てくれたの」「先生、お前のことなんぼ心配したかわからんぞ。花子。切なかった」「先生」「花子。泣くんじゃねえ。先生が悪かった。お前のおとうもおかあも心配してたぞ」

とらやに戻ってきた寅次郎に、花子は田舎に帰ったと告げるさくら。「御昼過ぎに青森から学校の先生が迎えに来られてね。一緒に帰ったの。せめてお兄ちゃんが帰るまでと引き留めたんだけど。その先生、新学期が始まると言って」「……」「花子ちゃん、お兄ちゃんに会いたがってた。帰ったらすぐ手紙を書くって。先生もくれぐれもお兄ちゃんによろしくって。とってもいい先生よ」「お前たち、嫌がる花子を無理矢理帰したな」

それは違うと言う博。「花子ちゃん、故郷に帰るのを大変喜んでました」「でも俺は花子のそばに一生いてやると約束したんだ」「でも花子ちゃんは普通の娘じゃないから」「そうかい。わかったよ。それじゃ花子は俺みてえなヤクザ者のそばにいるより、津軽の山奥のナンジャラ先生のそばにいたほうが幸せだって言うのか」そのとおりよと答えるさくらを殴って。とらやを飛び出す寅次郎。

しばらくして、寅次郎からとらやに手紙が届く。<さくら。お前を殴って悪かったな。兄ちゃんは本当にバカな奴だ。こんなバカは生きてても仕方ない。花子も元気だったし、俺はもう用のない人間だ。俺の事は忘れて達者に暮らしてくれ>これじゃ遺書だよと言うつねに、やっぱり花子ちゃんのところに行ったんだわと言うさくら。「私、津軽に行ってみるわ」

さくらは鰺ヶ沢に行き、福士と会う。「いやあ、お兄さんは実に親切なええ方ですなあ」「兄が迷惑をかけませんでしたか」「とんでもない。花子が元気にばしとるのを見て、えかったえかったと。その晩は二人して酒を飲みまして。しかし、お兄さんは実に面白い方ですなあ。酔っぱらうと歌を歌って。もっとゆっくりしてもらいたかったけど、仕事が忙しいとかで。いやあ、セールスで年中旅暮らしとか。お兄さんも大変ですなあ」「はあ」そこに現れる花子。「この子もなんとかこうやって。正式の用務員を置けないので、アルバイトの形ですが。花子、料理こさらえるの上手だよな」元気そうな花子を見て安心するさくら。

バスに乗ったさくらは寅次郎と出くわす。「さくら」「何してんのよ、こんなとこで」「俺か。温泉入ってたんだよ」「何言ってるのよ。この葉書は何よ」「いや、あの時はあんな気分だったんだなあ。腹はすくし、金はないし。俺死んだと思ったか」「冗談じゃないわよ」「死ぬわけねえよな。毎日ここにいるバアちゃんと風呂で背中の流しっこをしてたんだ。ははは。けっこう毛だらけ猫灰だらけ。お尻のまわりは糞だらけってな」二人の乗ったバスは岩木山の近くを走るのであった。