男の紋章 | ロロモ文庫

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昭和6年。大島組の大親分庄三郎の息子の竜次は医者の道を目指していた。どうしてお嫁さんをもらわなかったのと庄三郎に聞く大島組の代貸の勘三の娘の晴子。「晴子みたいないい娘に出会わなかったんだよ」「まあ」「竜次はどうした」「病院です。午後から二つも手術があるんですって」「あいつもやっと一人前の医者になったか。晴子、お前はいくつになった」「19よ」

「そんなになったか。全く勘三には勿体ない立派な娘になったもんだ」「お父さんも言ってるわ。竜次さんはおじさまには勿体ない立派な息子さんだって」「ははは。晴子、お前は竜次のかみさんになる気はねえか」「……」「お前と竜次で俺の跡を継いでくれればいいんだがなあ」「竜次さんはお父さんやおじさまと違います。立派なカタギです」

上海帰りの斎賀は大島組の縄張りを密かに狙っていたが、庄三郎の貫録と人徳の前に圧倒されていた。子分たちに庄三郎を刺して男になれとハッパをかける斎賀。庄三郎に竜次の嫁になれと言われたと話す晴子。「そんなの嫌よね、竜次さんは」「……」俺は田舎の診療所に行こうと思ってると話す竜次。「山の中の採石場で医者がいつかないんだ」「どうしてそんなところに。おじさまが可哀そうよ」

おふくろが亡くなって以来、親父は俺一人を育ててくれたと言う竜次。「敵に後ろを見せるな。一人になっても戦え。でも俺は渡世人の生活が」「竜次さんは違うわ。立派なカタギよ。立派なお医者さんになったじゃないの」「でも親父も勘三さんも俺に跡を継がせたいんだ。それを言えずに押えている親父の顔を見てると、たまらないんだ。だから誰も知らない土地に行きたい」

竜次は庄三郎に黙って診療所に向かおうとするが、庄三郎に俺が何も知らないとでも思っていたのかと言われる。「竜次。俺はまだお前にいたわれるほど老いぼれちゃいないぜ」「すいません。お父さん」「風邪を引いたり、腹を壊したりするんじゃねえぜ」「ありがとう」「元気でやれよ」

村田組の女親分のきよと斎賀が会っていると庄三郎に話す勘三。「斎賀のことだ。何を企んでいるか」「勘三。二度ときよのことは口にするな」力を貸してくれと言う斎賀に、大島組とは因縁があると言うきよ。「あんたたちが卑怯な真似をしなければ、力を貸してもいい。ただせがれの竜次には手を出さないでくれ。あれはカタギだ」「わかりました。来年の祭りは斎賀組が仕切ってみせます」「そいつはどうかな。大島に比べるとお前はまだ貫目不足だけどね。ははは」

竜次は山の中の診療所に赴任するが、西野組が人夫を酷使する現状に憤りを感じ、西野に待遇改善を要求するが、あなたは医者だから患者の手当てをしてればいいと言われてしまう。そこに現れる庄三郎の義兄弟の菊浦。「これはどうも」「いやあ、ここに大島の若がいると聞いたもんだ」「大島?東海道の大島組。じゃあ、あの先生が」

てのひらがえしで竜次にペコペコする西野。俺は竜次を迎えに来たと言う菊浦。「大島が可哀そうだ。帰ってやってくれないか」「やめてください。今日のことにしても大島組と言う看板が奴らを抑えたんです」「組織は力だ。使いようによっては善にも悪にもなる。大島はそこのところを十分承知している。そのことを一番よく知ってるのは、あなたじゃないですか」

動揺する竜次は庄三郎が斎賀の子分に刺されて殺されたと聞いて、大島組に戻る。斎賀に挨拶に行き、庄三郎の跡を継ぐことを宣言する竜次。そこに現れるきよ。「庄三郎親分も馬鹿なことをするもんだねえ。せっかくカタギになった息子を渡世人にするなんて」「これは私の意志です」

「帰ったら親父さんに言うんだね。縄張りは命を賭けて守るものだ。自分の女房と同じようにね」「お言葉ですが、親父は命を引き取りました。闇討ちにあって」「……」「では、失礼します」私はお前を見損なったと斎賀に言うきよ。「二度と私の前に面を出さないでくれ。闇討ちなんかやるなんて、卑怯な」

竜次に話したいことがあると言う勘三。「親分も私も黙ってましたが、実は村田のあねさんが若の本当のおふくろさんです」「え」「元はと言えば、あっしの不始末で、賭場のいざこざから親分は先代の村田の親分と出入りになり、心を鬼にしてあねさんを村田にお返しになったんです」「……」「25年前でした。あねさんは愚痴ひとつ言わず村田にお帰りになった。親分は他の女に目もくれず、若だけを頼りに生きてきた」勘三に竜の刺青を彫ってくれと頼む竜次。「俺の背中に親父と同じやつを。男の紋章だ」

なぜ大島組を継ぐのと竜次に聞く晴子。「いつも言ってたわね。俺はヤクザが嫌いだって。二代目はお父さんが継げばいいじゃないの」「……」菊浦が発起人となり大島組二代目を襲名した竜次は陸軍より弾薬庫の補修工事を命じられる。工事を取り仕切る竜次にこのままではすまんと警告する斎賀。竜次に大島組の縄張りを私に預けてくれと言うきよ。

「私が庄三郎に捨てられたのも渡世の義理なら、庄三郎が刺されたのも渡世の道だ。だがお前さんだけはそんな道を歩かせたくない」「きっぱりお断りします」「これは村田きよとしてでなく、お前の母として言うんです。私はお前が子供の頃からお前のことを心配してきた。お前が医者になったと聞いた時、私は身内の者に赤飯を配った」「……」

「竜次、カタギに戻ってくれ」「村田の親分さん。私にはおふくろなんかおりません」きよに背中の刺青を見せる竜次。「親父と同じ男の紋章です。これに負けないよう立派に父の遺志を継いでみせます」「竜次」

斎賀組は補修工事の邪魔をたびたび繰り返し、ついに勘三は殺されてしまう。この決着はつけると言う竜次にやめてと叫ぶ晴子。「男の義理だの人情だのずっと聞かされてきたわ。こんな卑怯な世界が男の世界なの。ヤクザなんてバカの集まりよ」「やめてくれ、晴ちゃん。俺は喧嘩をしに行くんじゃない。話し合いに行くんだ」「竜次さん。行かないで。行けば殺される」

単身斎賀組に乗り込んだ竜次は、工事を続けさせてくれと斎賀に訴える。「大島組の縄張りが欲しければくれてやる。大島組は今日からカタギだ」「そんなことを言いに来たのか。お前、まさか生きて帰れると思っちゃいまいな」「君たちはこれほど俺が譲歩してもやると言うのか」義憤に駆られた竜次は斎賀の子分を叩き斬り、銃で撃とうとする斎賀の右手首を斬り落とす。竜次は斎賀の子分に取り囲まれるが、そこにきよが子分を引き連れて現れる。「竜次」「お母さん」「竜次」「仕方なかったんだ。斬るつもりはなかったんだ」「竜次」