儀式 | ロロモ文庫

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輝道さんのところなら私一人でよかったのにと言う律子に電報は僕あてに来たんだと言う満州男。「居所を知ってたのも僕だけだ」島に行くまで丸二日かかると言う満州男に、やっぱり行くのはよそうかしらと言う律子。「そんなに長い時間耐えられそうもないわ」「輝道君の電報、嘘かもしれないじゃないか」

「あの人、嘘をつく人じゃないわ」「本当だとしたら、残っているのは君と僕だけ」「あなたはおじいさまと同じ89歳くらいまで生きるでしょうよ。もっとかしら」「バカにしてるのか」「真面目なお話」「君は僕を何と思ってるんだ」「親戚」「それだけか」「結婚式や葬式の時だけ会える」「律子さん。君は輝道君にも同じことが言えるのか」

昭和22年。満州から母のキクと一緒に14歳の満州男は日本に引き上げる。昭和21年に満州男の父の鐘一郎は自殺しており、韓一郎の一周忌の法事が開かれ、韓一郎の父の一臣、一臣の妻のしづ、一臣の妾の子である勇や守、一臣の養女の節子、節子の娘の律子、一臣の妾の子の進の子の忠、立花輝道らが参列する。

満州男は東京に連れて行き、韓一郎に変わって立派に育てると断言する一臣。満州男はあなたの子ですかと勇に聞かれ、共産党から見てもわしはそんな大人物に見えるかと笑う一臣。ロシア兵とキクさんの間に何かあったとみな思っていると笑う守。ロシア兵は優しかったはずだと怒鳴る勇。こんなところでそんな話をと泣くキク。看護婦あがりのキクはすぐに元気になってもらわないと困ると言うしづ。法事が終わったあと、三角ベースの野球をする満州男と輝道と律子と忠。私は審判をすると言う節子。

汽車の中で眠れたかと律子に聞く満州男。「変な夢ばかり」「どんな」「あなたに関係のないことよ」「僕の親父の一周忌の日、野球をしたことを覚えているか」「野球なんかしなかったでしょう」「だって君はバッターボックスに立ってたじゃないか。輝道君はキャッチャーで」「嘘よ。何かの思い違いよ。野球なんかやったのはあなただけ」「違うよ。君のお母さんがアンパイアだった。僕の球を褒めてくれたじゃないか」「あなた。母の影響で今みたいになったと言うの」「節子さん。あなたは審判をしてくれましたよね」

昭和27年。満州男は高校野球の全国大会に出場するが、準々決勝の前夜にキクが危篤の電報を受け取り、準々決勝では致命的な失投をして、チームを敗戦させてしまう。ユニフォーム姿で母の通夜に参列する満州男。日本は独立したから、君たちの力で日本を正していくのだと満州男と輝道に言う一臣。

律子は満州男か輝道の奥さんになるのかと言う守に、戦争の影響で満足なカップルができなかったのでそれは絶対ないと言うしづ。満足なカップルは俺とお前だと言う一臣に9年も別居してですかと聞くしづ。お前はこれから一緒に暮らすのだと言う一臣に、今までどおり輝道の教育係をすると言うしづに、二人とも一緒に暮らすのだと言う一臣。君は東大を出てブルジョアコースを歩むのかと勇に聞かれ、大学はやめましたと答える輝道。

満州男にあなたが成人になったのでと言って、韓一郎の遺書を渡す節子。死の直前に韓一郎がお前のところを訪れたのは人倫に外れる行為だと言う一臣に、人倫は最初から外れていたと言う節子は、一臣によって韓一郎との仲を裂かれ、無理矢理一臣の女にされたと答える。

最後の決着をつけると言い一臣は節子を抱こうとするが、輝道に見学させていただくと言われて、途中で席を立つ。僕の最初の先生になってくださいと頼んで節子を抱く輝道。君のお父さんは僕のお父さんかもしれないと言う満州男に、あなたの妹でもいいわと言う律子。思わず律子にキスをしてしまう満州男。

キクの葬儀は盛大に行われ、追放解除となり新公団の総裁となった一臣に参列者は口々におめでとうと言う。韓一郎は遺書に満州男が成人したころは共産主義の天下になると憂いていたが、その予想を外れたと満州男は実感する。キクの棺の前で号泣する節子。

船に乗ったらもう戻れないと律子に言う満州男。「それは私に言ってるの」「人は引き返すべき時に引き返さず、後で後悔することが多いからな」「それはあなたのこと?」「君は一回も後悔したことはないのか」「あなたとキスしたことかしら」船の切符を見て往復ねと言う律子。「もし輝道さんが生きていれば、私には帰りの切符はいらない」「律子さん。それが後悔しないと言うあなたの人生の終点になるのか」「いやだわ。怖い顔をして」

昭和31年。勇の結婚式が行われ、一同は祝い唄を披露するが、中国で戦争犯罪人としての刑期を終えて帰ってきたばかりの進は歌うことを断る。中国で自己批判書を書いたと言う勇の話は嘘なんだろうと言う忠に沈黙する進。毛沢東の中国は今の日本よりましかと忠に聞かれ沈黙する進。結婚式が終わり一つの布団の中で律子を挟んで眠る京都大学に進学した満州男と一臣の秘書になった輝道。

輝道は節子を抱いたと言う満州男。節子は優しかったと言う輝道。私とあなたが兄妹になったのはその後ねと言う律子に、兄妹なんかじゃないと怒鳴る満州男。翌朝、裏山で節子は死体になって発見される。これは自殺だと断言する一臣。一臣が節子を殺したのではと疑う満州男。

島に向かう船の中で横たわる律子にキスをする満州男。「あと5時間ちょっとで島に着く。島に着いたら君は永遠に僕から失われてしまうような気がする。この手。この髪。唇。さまよえるオランダ人の話を知ってるか。神の怒りを受けて永遠に死ぬこともできず七つの海をさまよう船長の話だ。僕もある種つまらない呪いにかかった人間だ。このまま君と永久に船の上で揺られていたい」「あなたは呪われてなんかいないわ。呪われたいと思ってただけの人よ」「律子さん。もし輝道君の電報が本当だったら、僕と結婚してくれるか」

昭和36年。急性盲腸炎になって満州男の嫁が式場に来れなくなったと話し合う勇と進と守。花嫁は逃げたんではと言うしづに、そんなことはないと言う進。一臣の押し付けた相手と結婚させられることになっていた満州男は自分こそ逃げたいと思う。招待客の手前、花嫁なしで披露宴を行うと言う一臣。花嫁なしの披露宴が行われ、いつまで日本を毒してる政財界の奴らとこんな茶番劇をやってると言う忠に、仕方ないじゃないかと答える満州男。

忠は交通事故であっけなく死ぬ。枕を抱いて、これが僕の初夜ですと言う満州男に、あまりいろんなことがあったんで気が狂ったのかと心配する勇。野球しか能がないと思っていたが、これほどバカとは知らなかったと満州男に言う一臣。あなたは真の日本女性と抱き着く満州男にいい加減にしろと蹴とばす一臣。一臣の腹に足を乗せて、あなたが責任者ですと言う輝道。君と結婚できたらと満州男に言われ、とっくに初夜を済ませてしまったと言う律子。僕はこの家を出ると言う輝道。

小舟に乗って島に向かう満州男と律子。(律子さん。あの夜以来、輝道君は東京のおじいさんの家から姿を消した。後で僕は輝道君がおじいさまが僕の父と結婚するはずだった女性に産ませた子だったことを初めて知った。輝道君を可愛がり育てたおばあさまもすぐ亡くなった。そのお葬式に輝道君は現れなかった。現れなかったと言えば、僕から逃げていった花嫁さんもついに現れなかった。あれから10年、同じ東京にいながら、僕とあなたも顔を合わせることはなかった)

昭和46年。一臣の葬儀が行われ、喪主になった満州男に挨拶する律子。自分は桜田家から逃れるために野球をして、今も野球部の監督をしてるのに、早く一臣の後を継ぐような仕事をしろと周りは言うと悩む満州男。早く結婚して桜田家の跡取りを作れと満州男に言う勇と進と守。満州男に可哀そうと言う律子。僕は埋められて段々息ができなくなってくると言う満州男。

「テルミチシス。テルミチ」と言う電報に目をやる満州男。小舟は島に到着し、満州男と律子は小屋に行くが、輝道は全裸で死んでいた。一臣の死を伝えた新聞の側にあった<真に桜田家を継ぎうる者は僕だけだ。僕は自らを殺すことによって、ここに桜田家を滅ぼす>と言う輝道の遺書を読む満州男と律子。

お帰りになってと満州男に言う律子。「あなたは東京でおじいさまのお葬式をしなければならない人。私はここに残って」「律子さん。君はここで死ぬつもりだな」「はい」「そんなことがわかって帰れるもんか」「じゃあ。私が死ぬのを見届けてくれるんですか」両手両足を縛り、薬を飲んで輝道のそばに横たわる律子。それを見て号泣する満州男は節子たちと三角ベースをする幻想に襲われるのであった。