賞金首 一瞬八人斬り | ロロモ文庫

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甲州黒戸金山で採掘された黄金120貫が江戸に運ばれる途中で、伊那山岳党に襲われて強奪される事件が発生する。小石川で貧民のための施療院を経営する錣市兵衛は施療院を運営するために裏の仕事で賞金稼ぎをしていた。市兵衛を江戸城に呼ぶ老中の堀田正篤は120貫を取り戻したら10貫はお前にやると約束する。「期限は五日後の午の刻じゃ」「五日後の午の刻と言えば、確か日食だな」

甲府金山の麓にある台ヶ原宿に現れる市兵衛は、五両の賞金のかかっている盗賊の首を斧で叩き落とす薊弥十郎という男と出くわす。死んだ盗賊を見て喜ぶ聾唖者の蛭徳。市兵衛は山岳党の首領の夜叉狼が代官所に捕えられたことを知る。浪人の野呂陣内は弥十郎を極楽亭という酒場に連れて行き酒を振る舞う。「まったくお見事。お手前はさぞかし名のある賞金稼ぎであろう」極楽亭に乱入して、弥十郎に私が欲しくないかいと言う夜叉狼の妹の飛び天童。「兄が代官所に捕まっている。この身体を上げるから。兄を助けておくれよ」

代官所で金をどこに隠したと拷問を受ける夜叉狼。代官所を襲う市兵衛。「金のありかを喋ったら助けてやるぜ」「わかった」市兵衛は夜叉狼を奪って逃走するが、弥十郎に奪われる。市兵衛はライフル銃で弥十郎を狙撃する。夜叉狼を撃って逃走する弥十郎。人間は一生に一度はいいことをするもんだぜと瀕死の夜叉狼に話す市兵衛。

「お前の金で多くの人が助かるんだ。お前だって地獄に行きたくねえだろう」「確かに俺は一度金を手に入れた。だがすぐ取られちまったんだ。子分の音吉って野郎が裏切って、俺を訴人した。音吉を誑かしたのは極楽亭のお紋ってアマだ」そこで事切れる夜叉丸。そこに人殺しと叫んで現われる天童。「兄者を殺したのはお前だね」「違う。俺じゃねえ」「仇はきっととってやる。覚えておけ」去っていく天童。蛭徳に夜叉狼をねんごろに葬ってやれと命令する市兵衛。

お紋は邪魔者になった音吉を、熊蔵に始末させる。「こいつを代官所に届けるんだ。こいつの首でも五両になるはずだよ」市兵衛は夜叉狼を破獄させたということで百両の賞金が賭けられる。極楽亭に乗りこんだ市兵衛を熊蔵は地獄送りにしようとするが、あえなく地獄返しにされてしまう。見事な腕だと感心する陣内。「ははは。この店の女主人はお紋と言いましてな、黒戸金山の人足頭の棺桶辰の女です。ははは。ところで日食まではあと二日でござるな」

陣内をジロリと睨む市兵衛。「その当日をご帰国予定の尾州公が中山道諏訪宿をご通過の予定でしてな。尾州公は紀州家のご出身である今の上様とお仲がよろしくないと。あなたは薊弥十郎なる男と会ったと思うが、あの男はかつては尾州家の隠し目付の頭であったと聞いておりますぞ。いや、これはとんだお喋りを」

お紋はよくもうちの子分を殺してくれたねと市兵衛に迫るが、市兵衛は相手にしない。「金はどこにある」「お前さん、金色の夢を捨てて、色地獄に落ちてみないかい」しかしお紋は逆に市兵衛の性の奴隷となってしまう。「こんないい思いをしたのは初めてだ。私と手を組まないかい。私は棺桶辰から金のありかを探り出して見せる。あいつが夜叉狼から金を奪ったに違いないんだ」

黒戸金山に向かう市兵衛はお紋についていく蛭徳。まったくあいつは死神だと吐き捨てるお紋。市兵衛は天童に襲われる。「俺はお前の兄貴を殺してねえ」「嘘だ。信じるもんか」「いくら言っても信じねえなら、勝手に狙えばいいだろう」

天童を撃ち殺そうとするお紋を制する市兵衛。「この娘はお前ら亡者と違って、兄を思う気持ちが残っている」口惜しがる天童に声をかける弥十郎。「兄の仇はきっと討たしてやる。その前に金山に先回りして、金を手に入れるのだ。市兵衛は幕府のイヌだ。血も涙もない鬼のような男だ」

用心棒として連れてきたと棺桶辰に市兵衛を紹介するお紋。棺桶辰は人足を虫けらのように扱う血も涙もない男であったが、息子の太吉を猫可愛がりする男であった。市兵衛の素性は大丈夫なのかとお紋に聞く棺桶辰。「大丈夫だよ。百両の賞金首がかかっている男だから」「ふん。大層な男だな」「ふふ。お宝の半分は私のもんなんだから、あの男に守らせれば安心だよ」「あいつは確かに見どころのある男だが、お前の目の色が気にくわねえな。色と欲にトチ狂った目だ」「……」「ふふ。まあ金のことは俺にまかせておけ」お紋を抱く棺桶辰。

棺桶辰の用心棒として雇われる市兵衛。棺桶辰の妻のおかねは金のありかを教えるから、棺桶辰と手を切ってくれとお紋に頼む。「教えてくれ。二度と山に来ないからさ」「奥の廃坑だよ」太吉をさらうぞと天童に言う弥十郎。「棺桶辰にとっては目の中に入れても痛くない可愛いガキだ。必ず金を出す」「だけど、あんないたいけな子を使うなんて」「何を言ってる。市兵衛のやっていることを見ろ」

廃坑に忍び込むお紋に銃をつきつける棺桶辰。「やっぱりお前は金が欲しいんだな。これでお前があの市兵衛という男とグルってわかったぜ」その通りだと言う市兵衛。「では金のありかを言ってもらうぜ」しかし市兵衛はお紋とともに落とし穴に落されてしまう。市兵衛と一緒に地獄に落ちろと言って、お紋を射殺する棺桶辰。弥十郎はケモノのような人足たちが天童を凌辱する隙に乗じて、太吉をさらう。「棺桶辰。息子の命が惜しかったら、金のありかを言うのだ」

そこに落とし穴を脱出して、三つの棺桶を大八車に積んだ蛭徳とともに現れる市兵衛。「弥十郎。金は俺が頂いた。蛭徳、金を見せてやれ」二つの棺桶には金が、第三の棺桶にはお紋の死体が入っていることを見せる蛭徳。「弥十郎、金とその子を交換するか」「ふ。その手には乗らん。極楽亭に金を持ってこい。そこでガキと交換だ」

太吉を連れて去っていく弥十郎。子供をお願いしますと市兵衛に泣きつくおかね。極楽亭で尾州藩の武士と会う弥十郎。「予定通り、例の品物は諏訪宿の御行列に紛れ込ませるようにと」「うむ」「薊殿。その男、本当に金を持ってまいりますか」「必ず来る。あいつはそういう男だ」

極楽亭に向かう市兵衛の前に現れる野呂。「実は私は老中堀田豊後守の隠し目付。主君の言いつけで貴殿の監視をしていた。見事貴殿は黄金120貫を取り戻しになられたよう。このまま代官所まで私と一緒に。この黄金は徳川の命運を握る大事なもの。子供の命などどうなっても」「なんだと」「あなたはまさか幕府よりも子供の命を」「……」「待ってください。錣さん」

極楽亭に赴いた市兵衛は尾州藩の侍たちに取り囲まれる。金を奪って馬で去っていく侍たち。弥十郎は市兵衛に斬りかかるが、そこに現われ弥十郎に斬りかかる天童。「兄者を殺したのはお前だね」天童を斬り殺し馬で逃走する弥十郎。怒りに燃える市兵衛は尾州藩の侍たちに追いつくと、銃で皆殺しにする。そして日食が始まる中で、弥十郎と対決した市兵衛は見事に弥十郎を斬る。それと同時に終わる日食。

極楽亭に行き、太助が無事なのを知ってほっとする棺桶辰やおかねの前に部下を引き連れて現れる野呂。「棺桶辰。お前の罪は全て明白じゃ。やれ」皆殺しにされる棺桶辰たち。逃げる太助を射殺する野呂。そこに金の入った棺桶を蛭徳に大八車に引かせて現れた市兵衛は、太吉の亡骸を見て歯ぎしりする。ご苦労だったと市兵衛に声をかける野呂。「貴様の役目はこれで終わった」

怒り狂った市兵衛は一瞬にして、野呂ら八人をあの世に送る。「てめえは地獄に行って、金は極楽に送ってやらあ」市兵衛は蛭徳とともに江戸に向かうのであった。