作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(248)」 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

残されたベーコン(前)

荒川夫婦と山岡とピクニックに行こうとする栗田。そこに現れ、永一さんがさらわれたと大騒ぎする栗田の祖母のたま代。「永一さん?」「大柱永一さんて言うのは、広告会社の銀宣社の相談役で、栗田さんのお祖母さんのボーイフレンドなんだ」「へえ、ボーイフレンド」「今朝早く、永一さんの家に行ったのよ。朝ガユ作ってあげようと思って。そうしたら永一さん、昨夜から行方知れずだって」

大柱の家に行く一同。「永一さんから連絡来るの待っててどうするの。警察に行きなさいと言ったでしょう。さらわれたのよ、あの性悪の黒柏のヤツに」「し、しかし、栗田様」「だまらっしゃい」「誰なの、おばあちゃん、その黒柏って人は」「永一さんの友人だけど、私のことを好きなのよ。それで永一さんにヤキモチやいて、永一さんをひどい目に合わせようとさらったのよ」「でも、どうして大柱さんがさらわれたなど」

事情を説明する大柱家のお手伝い。「昨夜、黒柏さんがお見えになったんです」

『さあ、これが最後だ。これがダメなら、たま代さんのことは諦めてもらうぞ』『よし、たま代さんのことはどうしても譲るわけにいかん。来い。お前は呼ぶまで来んでいいぞ』『は、はい』

「私はお呼びがかかるまで、自分の部屋で待機してましたが、突然食堂の方から大声がしました」

『もう我慢ならん。私がこの手で片をつけてやる』『話が違うぞ。これでダメなら、たま代さんのことは諦めると』『黙れ、私はとことんやるぞ。お前は手を引け』『誰が手を引くか。バカ者。一緒に来い』『あ、何をする』

「あまりの激しい言い合いに、私は驚いて飛び出しましたが、一足違いで間に合わず、旦那様と黒柏さんは、黒柏さんの車で」「私のせいだわ。私があまりに魅力的だから」「それにしても、食堂だなんて変なところで言い争ったんだなあ」「昨夜のままにしてありますが」

食堂に行く一同。「二人で何を食べてたのかしら」「鍋料理にしちゃ変だわねえ」「ジャガイモ、玉ねぎ、ベーコン。なんだこりゃ」「ううむ」

「旦那様からお電話です」「永一さんから」「えっ、4,5日、お帰りにならない?旦那様、今どちらに。あ、お切りになった」「おかしいわね」「お身の周りの支度もお持ちもならずに、4,5日もお出かけになるなんて、今までなかったことです」「今の電話、誰かに無理矢理させられたのかも」「ひいいいい。永一さん」「おばあちゃん」

若手刑事の井出を一同に紹介する中松。「この地域の所轄なんで、さっそく調べてもらった」「今のところ手がかりは掴めません。黒柏氏も行方不明で、黒柏氏の家族も心配しています」「大柱氏は銀宣社の創業者で大金持ち。黒柏氏も高級食品販売会社の会長で大金持ち。金持ちの老人二人が行方不明とは穏やかじゃねえ」「黒柏が永一さんをどこかに監禁してるのよ」「警察としては、第三者による身代金目当ての誘拐と言うことも考えています」

文化部で事情を話す山岡と栗田。「そりゃ大変なことになったねえ」「しかし、その黒柏って人が、栗田さんのお祖母さんを横取りにするために、こんなことをすると言うのは無理があるね」「やっぱり、お金持ちの老人を狙った身代金稼ぎの誘拐の線に思えるわ」「報道機関は協定を結んで、まだこの件はどこも報道しないように見えるが」

「おう、山岡、ちょっと助けてくれ」「あら、政治部の松川さん」「ベーコン料理の仕方を教えてくれですって?」「うん、女房のヤツにタンカ切ってしまったんだよ」

『おい、トースト。バターをたっぷり塗ってな』『ねえ、あなた。来週、私の従妹がアメリカから来るでしょう。従妹の前で、今みたいなことをしないで欲しいの』『え』『おい、トースト、だなんて、典型的なジャバニーズ・ハズバンド』『ぐふ』『そんな姿、見られたな、恥ずかしいわ。日本人の評判がまた悪くなる』『わかったよ、どうすればいいんだ』

『横暴な態度だけは、取らないでほしいの。従妹の御主人は、卵焼いたり、ベーコン焼いたりするけれど、あなたにそんなことできっこないから望まないわ』『てやんでえ、ベーコンぐらい焼けるぜ』『ウソばっかり』『ふざけるな。お前の従妹に見せてやるよ。ジャバニーズ・ハズバンドがどんなに料理が上手かをな』

「そんなわけだ。ベーコン料理教えてくれ」「ベーコン料理と一口に言っても」「ほら、アメリカのホテルなんかで、朝食にパリパリに焼いたベーコン出てくるだろう。あれ、どうやって焼くんだ」「呆れた。ただベーコンを焼くだけのことができないなんて。本当に日本人の男の人って、甘やかされて育ってるのね」「そう言うなって」「とりあえず社員食堂に行きましょう」

パリパリベーコンを作る栗田。「フライパンを熱したら、ベーコンを乗せます。時々ひっくり返してやって、そのまま焼き続けます」「そんなに焼き続けて、焦げないの?」「大丈夫です。ベーコンの脂身からどんどん油が出て、フライパンにたまっていくでしょう」「うん、」油がたまってベーコンを浸しちまった」「そうなんです。ベーコン自信から出た油にベーコンが浸って、ちょうど油で揚げてるみたいになります」「ホントだ」

「焦げないように火加減に気を付けて焼き続けます。脂身から油が抜けきった頃合いが出来上がり。脂身に部分はシャクシャク、赤身の部分はレンガ色でカリカリ。全体で、パリパリベーコンの出来上がり」「なるほど、途中からはベーコン自身から出た油で揚げたみたいになる。それでパリパリベーコンができるんだね」

「目玉焼きに添えて、このパリパリベーコンで半熟の黄身をすくって食べると、とても美味しいわ」「あは。パリパリ香ばしいベーコンに、卵の黄身のとろりとした味が加わって」「スクランブルエッグをパリパリベーコンの上に盛って食べるのも、とても素敵です」「うん。ほっこりしたスクランブルエッグの風味が、ベーコンの塩辛さと調和するね」

今度はベーコンの炭火焼きだと言う山岡。「ベーコンを金網の上に乗せる。ジュウジュウ油がしたたって、炭火の上に落ちて、煙を上げる。その煙でベーコンが燻されると、風味が加わる。ベーコンが縮れて、あちこち凸凹になり、脂身が半透明になったら頃合いだ。トーストにマスタードをたっぷり塗る。そこにこのベーコンを乗せ、その上にまたトースト。これでトーストサンドイッチの出来上がり」

「うお、脂がジュッと出て。脂の煙で燻された風味が妙に魅力的で。ベーコンだけのサンドイッチがこんなに旨いなんて」「なんでも炭火で焼くと味も増すんです。この場合、ベーコンは焼き過ぎではダメ。パリパリベーコンとは違って、これはベーコンの脂身の旨さを味わってもらいたいんだ。レタスやトマトを挟んでもいいけど、上々のベーコンならベーコンだけで味わってほしいね」「なるほど。ベーコンが上々なら、ベーコンだけの方が美味しいんだね」

「そう、上々の。あっ」「山岡さん、どうしたの」「よし、山岡、次は何だ。もっと手の込んだのを教えてくれ」「大柱さんの家に行こう」「え」「急ぐんだ」「山岡、ふざけるなよ。ベーコン料理二つでおしまいかよ。日本人の評判が悪くなったら、お前のせいだぞ」

大柱の家に着き。お手伝いに聞く山岡。「昨日のベーコン、どうしました」「ベーコン?」「大柱さんと黒柏さんが食べていたベーコンです。あのベーコンが大柱さんの消えた秘密を明かしてくれるかもしれません」「あのベーコンなら、冷蔵庫にしまってありますが」「しめた」「これです」ベーコンを齧る山岡。「大柱さんがいなくなった理由がわかったぜ」「え、ホントに」