地獄の底までつき合うぜ | ロロモ文庫

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碇勝五郎とその次男の源次の七回忌法要中に、霊柩車が乱入し、柩の中から死んだはずの源次が登場する。「兄貴、久しぶりだねえ。幹夫、元気か。おう、黒田さんも岸本さんも山口さんもお揃いだねえ。忘れもしねえ、七年前にお前たちに殺された源次よ。その仕返しのために地獄の底から蘇ったというわけだ。俺はお前たちの手で地獄の底まで叩き落されたんだ」怒鳴る山口。「てめえ、気が狂ったのか。酔っぱらって海に落ちたくせに」

源次の兄の千造は、源次が可哀相と思ったからこそ、こうして七回忌法要を営んだのだと主張する。「よく、のめのめと帰ってこられたな。もうこれ以上恥をかかせないで、とっとと消えてくれ」兄に冷たく言われた源次は乱闘騒ぎを起こす。そこに半年前に岸本にサイゴンに売りとばされたという早苗も現れて、ますます事態は混乱する。早苗を俺が助けたと主張する源次に、サイゴンだがコロンボだが知らないがこんな女見たことない、と反論する岸本。結局、気違い扱いされて、警察に連行される源次。行方をくらます早苗。

流れ者の松吉は腕に自信があるので、源次のことはまかせろ、と岸本に売り込む。了承する岸本。警察で確実な証拠がないと動けないと言われてむくれる源次。「人殺しはほうっておいて、ちょっとばかり暴れた奴は豚箱か。変わったもんだな、日本も」警視庁では香港から流れてきているという贋造紙幣のことで頭を悩ませていた。「これだけの印刷技術は香港では無理だ。やはり日本国内で製造しているものと思われる」

大学生の幹夫は源次兄さんは事故で死んだのじゃなかったのか、と千造に聞く。説明する千造。「今まで隠していたが、七年前に源次は親父の勝五郎を殺したんだ」「え」

七年前、南シナ海に沈んでいる金塊を求めて、第一黒田丸は出航していた。船に乗っているのは勝五郎と千造と源次、それに岸本と山口と黒田の六人だった。六人は見事に金塊をゲットする。金塊の分け前は船の持ち主である黒田と船長の勝五郎が折半、勝五郎の取り分から岸本と山口と二百万、千造と源次に百万ということで決まる。

これで念願の孤児院が建てられると喜ぶ勝五郎。源次になんで百万もやるんだ、とむくれる千造。「あいつは親父の本当の子じゃない。どこからか拾った孤児だ」「あいつが一番金塊を拾ってきたんだから、文句は言えない。野郎に親が違うからとひがませたくないんだ」

源次と山口が酔って喧嘩しているというので仲裁に行く勝五郎。やがて銃声が鳴り響く。その銃声に驚いて千造が甲板に上がってみると、そこには勝五郎の死体があった。山口と岸本は源次がやったと千造に説明する。「それで源次は」「船長に撃たれて海に落ちた」「……」「まさか、親子が撃ちあったとはいえまい。これは事故ということで内聞にしたほうがいいぜ。警察に探られて金塊のことがバレたら、元も子もなくなるぜ」

千造から話を聞いて憤慨する幹夫。「源次兄さんって、そんなひどい奴だったのか」釈放された源次にもう顔も見たくないと罵倒する幹夫。源次は松吉に連れられて、バー「ボンティック」のママの夏枝と会う。源次と夏枝は将来を誓い合った仲であったが、夏枝は今は岸本の情婦と成り下がっていた。

「あんたが死んだとばかり思っていたの。女一人で生きていくには七年は長すぎたわ。私が弱かったの。でもあんたが生きていたなんて夢みたいだわ」「俺も夢を見ているようだぜ」「法要の時の騒ぎを聞いたわ。あんたにも可愛い子がいるようね」「そんなんじゃない」

南シナ海から帰って来た後、千造は印刷会社、山口はボクシングジム経営、岸本は運送会社とバー「ボンティック」の経営、黒田は船会社とそれぞれ自分の夢をかなえていた。黒田の娘の順子の誕生パーティーに順子の恋人として幹夫が紹介されるが、黒田は幹夫に順子との交際を禁止するよう言い渡す。これも源次のせいだ、と歯ぎしりする幹夫。岸本と山口は早苗をさらい、源次のことについて何か聞きだそうとするが、夏枝は早苗のことは自分にまかせてくれと申し出る。了承する岸本。

早苗に聞く夏枝。「あんた、銀次さんと一緒にいるようね」「違います。銀次さんにサイゴンに助けられたんです。岸本たちに騙されてサイゴンに売られたところを」「岸本はそんなことをしていたのね」早苗を逃がす夏枝。松吉に連れられて、「ボンティック」に早苗を連れ戻しに現れる源次。夏枝は早苗はもうここにいないと源次に言う。「なるほどねえ。マダムの顔にここにいないと書いてある。じゃあ、また来るぜ」

松吉は源次の男っぷりの良さに惚れる。山口のボクシングジムに所属する幹夫はプロの選手になれ、と山口に強要されるが、幹夫はスポーツとして拳闘を選んだ、と拒否する。怒った山口は幹夫を袋叩きにしようとするが、源次が幹夫のピンチを救う。港に幹夫と順子を連れ出した源次は、解体船で立ち入り禁止、と看板が掲げられた第一黒田丸を感慨深く見つめる。「幹夫。この船さえなけりゃ親父も死なずに済んだんだ」

幹夫に俺が勝五郎を殺すはずがないと訴える源次。「俺は酔って山口と喧嘩していた。それを仲裁にはいった親父が撃たれた。俺は駆け寄ったがそこを背中から撃たれたんだ」「背中から?誰が撃ったんだ」「それがわかれば苦労しねえよ。それが知りたいために俺は地獄から帰ってきたんだ」「源次兄さん。僕が間違ってました」「お前がわかってくれればいいんだ」「でも千造兄さんはなんであんなことを」「兄貴もいつかは目がさめるさ。ところで、このお嬢さんはお前の恋人さんかい」「黒田さんところの順子さんだよ」

黒田の家に乗り込む源次。「あんたは立派な屋敷に住む御身分になりましたね」「何の用だね」「うちの幹夫とあなたの娘さんのことだが、俺のせいで交際禁止を言い渡したそうだね。俺のどこが気に食わないんだ」「お前は霊柩車を乗り付けたり、棺桶から飛び出したり、とやることが言語道断だ」「誰がそんなことをさせているんですかね。第一黒田丸は六人しか乗ってなかった。誰が親父を殺して俺を撃ったか、あんたが知っていそうなもんですがね」

「何を寝ぼけとる。君が船長を撃って、君は船長の弾を食らって、海に落ちたんじゃないか。源次君、我々は千造君の立場を考えて、親子が殺し合ったあの事件を隠してきたんだぜ。帰りたまえ。恩を忘れてつまらんことをすると警察に訴えるぞ」「訴えるなら訴えてみな。俺はこれっぽっちも悪いところはないし、証拠の品も握っている」「帰ってくれ」「お前の娘さんはいい娘さんじゃないか。あの娘さんがお前さんのために泣くことがないことを祈っているよ」

贋造紙幣を千造の印刷所で作られている、と通報を受けた警視庁は、千造の印刷所をガサ入れする。岸本のところに飛び込む千造。「俺はもうだめだ」「源次のやつが密告したんだ」「源次が?」「やつしかないだろう」「岸本さん。俺はどうすればいいんだ」早苗と松吉の南洋民謡に乗って、陽気に踊る源次のところに千造が現われる。「源次、お前はなんてやつだ。俺は何もかもおしまいだ。工場のことを警察に密告しただろう」「俺はそんなことはしていない。兄貴、いつから警察に密告されるような情けない男になったんだ」「……」

源次は背中の銃創を千造に見せる。「これはあんたの仲間の誰かに撃たれた傷なんだ。そして、それが親父を殺した奴なんだ。それを知って兄貴はなんであんな奴らとつきあっているんだ。兄貴の馬鹿、馬鹿、馬鹿。ガキのころを俺をあれほどかばってくれた兄貴が。それが俺は口惜しいんだ」「……」「兄貴、本当のことを言ってくれ」「源次、何を言わないでくれ。頼むからどこかに消えてくれ」

岸本と山口は千造を岸本運輸の倉庫に連れ込む。「俺をどうする気だ」「お前が警察に行くと何もかもしゃべりそうなんでね。死んで貰うぜ」その様子を覗き見して、千造の家に電話する夏枝。「もしもし、源次さんいますか。あ、幹夫さん。千造さんが大変なの」夏枝から電話をもぎとる岸本。「幹夫さんかね。千造兄さんの命を助けたかったら、岸本運輸の倉庫に来なさい」電話を切った岸本は夏枝を殴る。「お前まだ源次に惚れているな。それで早苗も逃がしたな」

夏枝から千造と幹夫のピンチを知った源次は松吉とともに霊柩車に乗って、岸本運輸の倉庫に殴り込みをかける。しかし千造は岸本に撃たれて倒れる。銃撃戦となり逃走する岸本と山口。虫の息で俺が悪かった、と源次に詫びる千造。「親父まで殺させて。俺は奴に騙されたんだ」「奴とは誰だ」「第一黒田丸にいる」息絶える千造。第一黒田丸に乗り込む源次は、岸本と山口を対峙する。「誰だ。親父を殺ったのは。言わないとぶっぱなすぞ」「待ってくれ。俺たちは命令されただけだ。命令したのは」

黒田は岸本と山口を狙撃する。やっぱりお前が張本人か、と黒田に吐き捨てる銀次。「てめえとは地獄の底までつきあうぜ」黒田の持つ拳銃を見た銀次は、ポケットから銃弾を取り出す。「この弾は俺の背中に入っていたんだ。この弾はこのモーゼルでないと撃てない弾だ。これが何よりの証拠というもんだぜ」

源次の二挺拳銃が火を噴き、黒田は倒れる。船倉には贋札紙幣の製造機があった。松吉は警視庁の警官であることを源次に明かす。源次は孤児院の先生となり、孤児と一緒に障害物競走に出走し、見事最下位になり、幹夫や順子や夏枝を笑わせるのであった。