女賭博師 花の切り札 | ロロモ文庫

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三田村組の代人として銀子は兼松興行の代人の浅造と信州松本一円の縄張りを賭けて、テホンビキの勝負をするが完敗し、三田村組は縄張りを全て失ってしまう。だから銀子にまかすのは反対だったんだと三田村の妻の伸代に言う代貸しの矢頭。「俺の言うとおり、半次に任せばよかったのに」「三田村の決めたことです。それに半次はとかくと評判のある男です」申し訳ないと謝る銀子に仕方がないと言う三田村。「見事な勝負だった。私は本望だよ」旅に出る銀子。(私は浅造と腕では負けてない。だが私に欠けているのは鉄のように冷たい心。それを持った時、壷降りは初めて一人前の勝負師になれる)

銀子が壷降りを務める河合組の賭場で、三人組の賭場荒しが現われ、テラ銭を奪って逃走する。宿に戻った銀子に匿ってくれと言う覆面を取る矢頭。「一体どうしてこんなことを」「済まない」「あなたを庇おうと思ったのは、あなたが捕まったら三田村の親分にどれだけ迷惑がかかるかと」「親分はもういない。あんたが出て行ってしばらくして自害した」「え」

私が負けたばっかりにと言う銀子に誰もあなたを責めてないと言う矢頭。「でも、こんなことをしていると、あなたたちは」「心配いらねえ。せめて親分の三回忌までだ」「三回忌?」「あと半年。それまでの辛抱だ。じゃあな」「矢頭さん。三田村のおかみさんは今どこに?」「それは言えない」「私は死んでも探し出しますよ」「しょうがねえ。浅間温泉の吉野湯にいる。だが私たちのことを言うとただじゃおきませんよ」

吉野湯にいる伸代と会う銀子。「三田村が自害したのは誰のせいでもありません。三代続いた組と一緒にあの人の魂も燃え尽きてしまったんです」「本当にご苦労をかけてしまって」「私も本当は四国の実家に帰ろうと思ったんですけど、せめて三回忌が澄むまではここにいてあげようと思って。三回忌には三田村ゆかりの人が集まって、供養盆を開いてくれるそうです」「供養盆を?」「組がなくても一度だけ供養盆が開けるそうで。その時には、銀子さん、壷をお願いしますね」「ありがとうございます」

山上組の金張盆で浅造が盆を務めると聞いて、見学に行く銀子。そこに賭場荒しとして矢頭たちが現れるが、浅造の投げた札で動きを封じられて、リンチにあう。山上に命だけは助けてくださいと頼む銀子。「この人たちをこんな目に合わせたのは私のせいなんです」「わかった。お前さんも同じ目に合わせてやる」山上にこの始末をつけさせてくれと頼む浅造。「どう始末をつける?」「お銀さん。俺と勝負をしよう。俺はこの三人の命を賭ける。お前さんは利き腕を賭けろ」サシの勝負で浅造に勝つ銀子。(浅造さんは私に勝ちを譲ってくれた)入院した矢頭たちにどうしてこんなことにと聞く伸代。「この際、はっきり言います。あっしら、賭場荒しで捕まりました」「まさか」「どうしても供養盆の資金を作りたくて」「バカだねえ。お前たちは」

供養盆の資金を稼ぐために壷を振り続ける銀子に、サシの勝負をしたいと言う半次。そこに現れ、勝負の無理強いはいけないと半次に言う浅造。「誰だってあんたの腕を知ってりゃ、勝負を受けないだろう。あっしだって願い下げだ」「なるほど。浅造さんにそこまで言われりゃ、この俺もちょっとした顔ってわけだ」「まあ、今日のところは私の顔に免じて、一つ収めてください」

浅造に感謝する銀子。「先ほどはありがとうございました。また先日も危ないところを助けていただいて」「別に礼を言われる覚えはないよ」「あの時はわざと」「もう忘れたよ」「本当は浅造さんとはまともな勝負をしたかったんです」「盆で他人の命をやりとりするなど、私はごめんだよ」「でも、壷振りは盆が命です」「私は戦争で人が死ぬのをイヤと言うほど見てきた。命だけは大事にしたいね」「……」「お前さん、今日は随分稼ぎなさったね。あれじゃ半次に狙われるのも無理はない」「三田村の親分さんの供養盆の足しにしたいと思いまして」「勝負師は勝つことが大事だ。だがあまりそれに執着すると半次になる」「……」「あいつは恐ろしい男だ。勝つためにはどんなあざといこともする」

供養盆に必要な2000万がそろったと伊豆の大野木組に行って話す銀子。「その話なら三田村の女房からも聞いている」「親分さえご承知願えば、各地の親分衆にもご足労願えます」「だが具合の悪いことになってね。供養盆の当日、兼松が金張盆を開くと言うんだ」「なんですって」「名目は浅間神社への奉納盆だそうだ」「それでは供養盆は」「兼松のやり方はわしも腹にすねかえるが、わしが供養盆に肩入れすれば、関東の親分衆は真っ二つに割れる。血の雨が降りかねないよ」

金張盆をやめてほしいと言う銀子にお前にそんなことを言われる筋合いはないと言う兼松。「どうしても供養盆を」「あんた、2000万を用意したそうだな。その金で盆の権利を賭けてみないか。お前は勝ったら、金張盆はやめて、私も供養盆に参加しよう。私が勝ったら2000万いただく」「わかりました」兼松の代人である半次のイカサマが見破られずに敗北する銀子。「お銀さん。私をイカサマ師よばわりしたね。利き腕一本いただくよ」やめとけと言う兼松。「そんな女の腕なんかほしくない。その代わり、三田村の供養盆、私が仕切らせてもらうよ」「そんなこと、私の一存では」「わかってるよ」

伸代にいきさつを聞いたなと言う兼松。「それで三田村の供養盆を私に預からせてもらえないか。私は生前、三田村と何かと張り合った。これも何かの因縁だろう。ただの金張盆じゃなかなか腰を上げない親分衆や旦那衆も、供養盆となりゃみんな集まってくる」「……」「お銀さんの右腕がかかってるんですがね」「わかりました。社長さんに全部お願いします」

三田村の供養盆に変わったそうでと言う浅造に金張盆ならいつでも開けると答える兼松。「供養盆は一度だけだからな」「いきさつは聞きました。なんでもお銀と半次の間に間違いがあったそうで」「とにかく半次が勝って供養盆が転がりこんだんだ」「しかし、とかく噂のある半次をどうして」「半次は博奕は勝つためのものだと言った。どんな手段を使っても勝つ。その気合が俺にはたまらないんだ。どうせ博奕は所詮博奕だ」「……」「なんだ。気乗りのしない顔だな。イヤなら、今度の盆、無理にとは言わないよ」「社長、まさか、あっしの代わりに半次を」「まあ、お前が病気でもならない限り、そんな話にはならないが」

兼松の子分に襲われて、右腕の筋を切られた浅造を見舞う銀子。「お前さんとは勝負ができなくなったよ。供養盆は半次が務めるそうだ」「……」「兼松とは長い付き合いだったが、もう俺の手には負えなくなったよ。壷振りは所詮雇われ者。一生盆に命を賭けて、それで終わりだ」「……」「お銀さん。半次のからくり返しを教えてあげよう。札を返す瞬間に、爪先で札を蹴って、台札をケツにすり替えるんだ。半次のヤツは神業だ。5分の1秒とかからねえ。だから、イカサマと気づき、待ったと声を掛けた時にはもう遅い。そのために命を失ったヤツが大勢いる」「5分の1秒」「私は何度も半次に挑まれた。だが受けなかったのは、このイカサマを見抜ける自信がなかったからだ」

供養盆で挨拶する兼松に半次とサシの勝負がしたいと申し出る銀子。「ケチな勝負じゃ親分衆に失礼だ。いくら張る?」「私が勝ちました場合は、本日の盆の上がりをそっくり三田村の遺族に」「お前が負けた時は?」「私の命を差し上げます」「よかろう」半次がからくり返しをした瞬間に、半次の手の甲に簪を投げて、からくり札を突き刺し、半次のイカサマを暴く銀子。子分に半次を斬らせて、不始末を詫びる兼松にドスを投げる大野木。「てめえのところの壷振りがイカサマをした時は、どんな仕置きを受けるか知ってるだろうな」「……」

改めて供養盆を開く大野木。「本日の胴師は故人とゆかりの深かった大滝銀子。後見人として素走りの浅造が相努めます」「ふつつかながら務めさせていただきます」供養盆はしめやかにかつ盛大に開かれるのであった。