作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(124)」 | ロロモ文庫

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ポテト・ボンボン

栗田の母校の大学祭に行く栗田と山岡。「あ、栗田先輩」「まあ、町野さんに木富さん。あ、この屋台、アジア・アフリカ研だったの」「そうなんです。資金集めのために屋台を開いたんです。でも私たちのポテトチップス、ちっとも売れないんです。他の物に比べて、あまり魅力がなかったみたいで」「あら、困ったわね」

へえと呟く山岡。「アジア・アフリカ研究会って、アジアとアフリカの文化を研究するのか」「私が4年の時、町野さんと木富さんが新入生で入ってきたのよね」「私たちも先輩たちに負けないだけの活動をしてるんです。今、アジアの難民を日本に受け入れる運動をしているんです」「まあ、えらいわ」

「しかし、ポテトチップスって子供が喜ぶ物じゃないの?さもなきゃビールのおつまみって感じで。女子大生はもっとお洒落な物か、反対にお腹にたまる物を選ぶんじゃないかな」「そうらしいです」「何とかならないかしら。大学祭は明日までなのよ」「商売替えしたら?」「でも、屋台は作り変えられませんわ。それにジャガイモを100キロも買ってしまって」「100キロも」「売れると思ったもので」

難民たちの住んでいるアパートに山岡と栗田を連れて行く町野と木富。「こんにちは」「お邪魔します」「どうぞ。新しい友達、大歓迎です」「晩御飯、食べていきなさい。ベトナム料理、ご馳走する」「あの、恥ずかしいんですけど、これ皆さんで、お茶菓子の代わりに」「おお、ポテトチップス。大好きです」

語る山岡。「ベトナム戦争のあと、大勢のベトナム人やカンボジア人が国外に脱出して難民となった。ボートに乗って命がけで逃げ出したボートピープルと呼ばれる難民を、アメリカやヨーロッパの国々は受け入れて、定住の道を開いているのに、日本は同じアジア人の癖に、ほとんど難民を受け入れようとしないんだ。本当に恥ずかしいことだね」

「これじゃ世界中から嫌われ、軽蔑されるのも当たり前よね」「私たちの運動もなかなか協力を得られなくて」「ポテトチップスもうまくいかなかったし」「おいおい、そんなに弱気になるなよ」「そうよ。私たちだって協力するわ」

「さあ、お菓子、どうぞ」「まあ。変わったお菓子。まん丸に膨らんでいる」「中華のお菓子ですね。芝麻球だ」「わっ、熱々で」「このパンパンに膨らんでるところが魅力的ね」「ほんと。アンコと皮の間が中空になっていて、噛むとパフッと空気が出てくる感触が何とも言えない快感よ」

ああと叫ぶ山岡。「これがあったじゃないか」「どうしたの」「この芝麻球のおかげで100キロのジャガイモと、アジア・アフリカ研究会を助けることができるんだ」「えっ」「明日の朝早くからフライドポテトを作っておいてくれ。ポテトチップスみたいに薄くなく、3、4ミリの厚さにジャガイモを輪切りにして、色がつかない程度にしておくんだ」

ひたすらフライドポテトを作る町野と木富。そこに現れる山岡と栗田。「こんなに沢山フライドポテトが出来たけど」「上出来、上出来」<ポテト・ボンボン>と言う貼り紙を屋台の看板に貼る山岡。「最初揚げたのはもう冷めちゃいましたよ」「これじゃ売り物にならないわ」「冷めてしまわなきゃダメなのさ」

冷めたフライドポテトを油の中に入れる山岡。「え。冷えたフライドポテトをもう一度揚げるんですか」「そんな。一度冷たくなったものを温め直すなんて」「えっ、平べったいフライドポテトがピンポン玉のように膨らんだわ」「さあ、食べてごらん」「わあ、香ばしい」「ぷしゅと潰れて」「それでサクサクして」「美味しくてお洒落」

「本当の名はポム・スフレと言って、フランス料理の付け合わせによく出てくるんだよ」「でも、どうして膨らんだの」「いったん揚げたフライドポテトを冷やすと、中に水蒸気がたまる。そしてもう一度揚げると、その水蒸気が膨張して、ポテトを風船みたいに膨らますのさ」「これなら売れます。自信あります」「よおし。売るぞ」

屋台に殺到する女子大生。ヒイヒイ言いながらポテト・ボンボンを作る山岡。「冗談じゃないよ。なんで俺がこんなに働かなきゃいけないんだよ」「もう少しの辛抱よ。ジャガイモはもう少しでなくなるかな」「お待ち遠さま。ジャガイモ追加100キロ、持ってきました」