1978年2月。京都国際科学者会議は城北大学の兵藤教授が突如宇宙人論を唱えたために紛糾してしまう。ヘリコプターの中でしばらくだなと原田に言う沢木。「辞令を預かってきた。お前は特殊部隊に移動だ」「何事ですか」「心配するな。俺も一緒だ」
国営放送JBCの報道部員の南に話があると言う芸能記者の城所。「誰にも言わないでください」「どうした。夕子ちゃんの事か」「この前、彼女、僕のアパートに来て、料理を作った時、包丁でちょっと指を切ったんです。その時、血が出たんです」「それがどうしたんだ」「その血が赤くなくて、青でした」「ははは。こいつはちょっとしたニュースになるな。大河ドラマ「日本元年」の主役に抜擢された高松夕子の血が青かった。はははは」
報道部長の沼田に兵頭が失踪したと言う報道局長の五代。「少し極秘に調べてみたいんだが」「わかりました」「誰か課長クラスで動けるやつはいないか」「では南に」血液学の権威で国立京都医大の前畑教授と頻繁に兵藤が会っていたことを突きとめた南は、前畑の助手の中本と会う。
「前畑教授はアメリカに発たれました」「そうですか。私は兵藤教授と前畑教授が共同の研究をしていると聞いて」「それは共同研究じゃなく、兵藤教授がうちの教授に何かレクチャーを受けてたんじゃないでしょうか」「何のレクチャーを」「詳しくは知りませんが。イカの血液に関する」「イカ。あの海にいるイカですか」「ええ」「イカの血液の特徴は?」「具体的に言えば、イカの血液は青いです」「青?」
わかったことはそれだけかと南に聞く五代。「ええ。それと変な話を聞きました。私の友人の芸能記者の城所ってやつから、うちの大河ドラマの主役をする高松夕子の血が青いと」「できるかぎりの口止めをしろ。それから君もこのことは極秘だ」「はあ」
テキサスにブルーノートと言う機関があるのを知ってるかと論説委員の竹入に聞く五代。「ブルーノート?」「ペンタゴンの中にあったブルーブックと言う調査機関をご存知でしょう」「ああ、あのUFOの調査機関だったと言う」「1966年にブルーブックは解散しています。UFOはいなかったと言う理由で。ところがそれが形を変えて、大統領直属の組織としてブルーノートとして生まれ変わった」「それが?」「そこに例の兵藤博士がいるらしいと言う噂がある」「そうですか」「あなたはUFOの存在をどう思いますか」
1978年3月。B計画がOKになりそうだと幕僚長の宇佐美に言う国防庁次官の相場。「やるんですか。本当に」「最終決定はもう少し後になる。しかしホワイトハウスもクレムリンも準備態勢に入ったから、日本も至急スタンバイせよと言うことだ」「しかし、青い血液を持ってるからって、彼らも人間であることは変わりないんじゃないですか」「青い血を持った人間は世界中ですさまじい勢いで増えている。コンピューターによると、1980年には日本の人口の倍近くになる」「しかし、青い血液の人間は赤い血液の人間に害毒を催すんですか」「わかってないよ、一切。という事は、それは将来人類に重要な危険性を持ちうると言うことだ」
理事会で血液が青いだけで番組をおろすのはどうだろうと言う理事の吉池。「別に病気じゃないんだろう」「そうですね。もう記者会見も終わってますし」「JBCのメンツにかかわる問題だな」しかし夕子は沢木と南の工作で麻薬不法所持で逮捕され、大河ドラマの主役を降ろされ、自殺してしまう。
南がアメリカに行くそうだなと五代に聞く吉池。「例の青い血の取材だって?」「事実の裏側にあるものを調べておくのはいいことだと思いまして」「それはあんたの命令かね。それとも南君の意志かね」「両方ですね。例の兵藤失踪事件から、彼も何かに気づいたようです」「ある筋からそのことについて連絡してきてね。忠告してきたよ」「それは科学者の線ですか。それとも政治の線ですか」
最初は夕子の血が青いことは全然気にならなかったと南に話す城所。「むしろどうして気にするんだと怒ったくらいです。ところがそのうち、どうも変なんです」「変とは?」「よくわからないけど、無意識のうちに暗示にかけられているような」「暗示?どういう」「つまり、青い血は怖い。彼らは人間と違った生き物だ。いつどこで牙を剥くかわからない。彼らは敵だという。南さん、この世に本当に謀略ってものがあるんでしょうか」「謀略?なぜ」「夕子がどうしてマリファナなんかを。あれは謀略じゃないですか」「誰の?」「JBCです」「何のために」「勿論、彼女を番組からおろすためです。血の色が青いことがバレたからです」
1978年4月。アメリカで取材する南は、城所の助言でニューヨークで兵藤に接触することに成功する。「青い血の人間が増えている?」「世界各国で見つかっています。私もいくつかの例を見ました」「しかし、それはどうして」「恐らくある種の宇宙光線の影響でしょう。専門家はあり得ないと言ってるが。その血液はUFOを見たものに限られている。恐らくUFOの出す光線が、血液中にヘモグロビンの中にある鉄分を銅に電子分解したものと思われる」「じゃ、なぜそれが隠されてるんですか」「なぜでしょうな」
確かにその秘密は隠されているという兵藤。「ところが一方でその秘密は漏れている。現にあなたはどこかでそれを知り、わざわざここまで来られた。私はそこのところに事態の異常な発展を感じます」「どういうことです」「秘密は漏れたんじゃなく、誰かが一方的に恐怖の噂として流されたんじゃないでしょうか。宇宙のどこかの侵略者の手により、全人類が次第に侵されつつある。侵略者は青い血液をしている。そういう噂を流し、全世界的に青い血液に対する恐怖を植え付けつつある。そんなふうにあなたが感じませんか」
青い血は人類の敵と言う証拠はないと言う兵藤。「だがそうでないという証拠もどこにもない。青い血に関して将来の予測はまったくついていない。だから地球の指導者は最低限安全な手を打つしかない。青い血に対する恐怖を植え付けること。それが今まで為政者がやってきたやり方じゃないですか」「だとすればどうなります。この後に来るものは」
ブルーノートはご存知ですかと聞く兵藤。「やっぱりあるんですか。それはUFOの調査機関」「いえ、医療機関です。そこには約300人のロボトミー手術を受けたものが収容されています。彼らは一年前までは平凡な人間だった。それがUFOの光線を浴びて、青い血になった。彼らは秘密裡に運ばれて、拘禁され、尋問され、そして手術を受け、植物人間にされ、生体実験の材料となる」「……」「詳しいデータはまた明日にでも」
ホテルに戻ろうとする南は日本大使館員からJCBから帰国命令が出ていると言われる。「ではホテルに戻って荷物を」「ホテルに帰ると、あなたは逮捕されますよ。兵藤教授誘拐の嫌疑がかかっています」「兵藤博士はどういう」「それはあなたのお知りにならなくていいことです」
帰国した南に、取材中止だと言う五代。「君はヨーロッパに行ってもらうことになった。パリ支局に転勤だ」「この取材はなぜ中止になるんです」「君の報告は見せてもらう。しかしこの件は放送するわけにはいかん」「特番を組むって約束じゃないですか」「事態が変わった」「いったい何があったんです」「レポートを出してくれたまえ。それでこの件は終了する」城所が事故死したことを知り、ショックを受けて飲んだくれる南。
1978年12月。国民血液総点検法反対の学生デモをオフィスから見つめる吉池と竹入と五代。「学生ってのは不思議だねえ。いつも何か時代の匂いってやつを嗅ぎ付ける」「まあ、見当はずれのモノが多いがね」「で、どの程度発見されましたか。例の青い血は」「さあねえ」「密かに発見された青い血の人間はアメリカに送られてるって聞いたんですが」「そういう噂もあるらしいねえ」
「どうですか、五代さん。何か情報はありませんか」「報道管制がこう厳しくちゃ、何も入って来ませんよ、ただパリの南から私信がありました。フランスでは青い血の人間で強制隔離から逃げ出す者が出始めているそうです」「どうして逃げるんです」「何か危険を察してでしょうな」パリでロボトミー手術を受けて廃人となっている兵藤と出くわし、呆然とする南。
12月になり、世界各地でUFOを目撃したというニュースが頻繁に流れるようになる。<恐怖!UFOの大飛来><宇宙からの侵略か。東京上空にも頻繁に><政府が隠すUFOの謎><野党一致で、UFO問題提出。国会折衝活発に><宇宙戦争への準備。国連事務総長、世界的蜂起があれば><ニューヨーク緊急報告。国連はすでに宇宙人と接触している?>
恋人の冴子とデートの最中にまどろんでしまい、城所に責められる悪夢を見てしまう沖。(沖さん、あなたの身元を調べようとしてあなたに殺された城所です。あなたの後ろにいる人もみんなあなたの犠牲者だ。UFOを見て、血液の色が変わった。それがそんなにいけないんですか。夕子が何をしました。何か悪いことをしたんですか)
うううと呻く沖にどうしたのと聞く冴子。「なんだかすごく疲れてるみたい。休暇はいつまで?」「あと五日ある」「それが終わるとまた全然連絡が取れなくなるの」「ああ」「今日は兄さん、帰らないの」「……」「いいの」沖と冴子は初めて結ばれるが、シーツの血から冴子が青い血の持ち主であることを知ってしまう沖。
仙石原でUFOを見てから青い血になったと沖に話す冴子。「あの日から私の体は変わったの。何が変わったかわからなかった。ただ前のようにイライラしたり嫉妬深かったり人を憎んだり。そういう性格が嘘のように変わった。あなたは私の青い血を見たんでしょう」「……」「私、あれからずっと考えてるの。もしも私に赤ちゃんが生まれたら、その子の血も青いのかなって」「……」「それでもあなた、その赤ちゃんのことを」
12月23日。国防庁ホールで訓示をする宇佐美。「本日午後5時30分、内閣総理大臣より緊急出動の要請が極秘に発せられた。これは同時に国連事務総長より各国の軍隊に発せられたものである。宇宙的侵略者による地上蜂起の計画が、このほど極秘裏に発覚した。すでに3万人を超える宇宙人が蜂起準備に入っている。日本国内でも971人が確認されている」
「対象は全く人間と変わらないが、その血液は赤くない。青である。行動は明日、12月24日、20時ジャスト。抵抗者ならびにそのシンパは射殺しても構わない。これは殺人ではない。相手は人間とは全く異なる者である。ただいまから行動時刻までの一切の外出を禁止する。これより分担地区を決める」
対象敵生物のリストを配布すると言う沢木。受け取ったリストの中に冴子がいるのに呆然とする沖。「沖、どうした。誰か知ってる者でもいるのか」「いえ」真夜中、赤電話に向かう沖に、外部に電話は通じないという沢木。「西田冴子にかけようとしたのかね」「……」「沖、俺はこの半年、自分の体内に流れる血のことを考えて怯えていた。何度も腕を切って確認した」「……」「西田冴子を愛していたのかね」
12月24日、20時。冴子を射殺する沖。その沖を射殺する沢木。それを皮切りに世界中の青い血の人間が射殺されていくのであった。