ダイナマイトどんどん | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

昭和25年盛夏。小倉警察署の署長岩崎は、岡源組組長の岡谷と幹部の香取、橋伝組の組長橋本と幹部の花巻を警察署に呼びつける。「お前ら、警察署長の顔をぶっ潰す気か。昼間からピストルをぶっ放す。機関銃やダイナマイトじゃで、北九州の市民は夜もおちおち眠れんじゃないか」

成り上がり者をのさばらせておけん、と言う岡谷に、戦争が終わって五年、世の中は全部民主主義、だから民主的な博徒の体質改善を考えねばならんと反論する橋本。

これからイザコザは一切やめえと一喝する岩崎。「これからは全て民主的に片をつける。喧嘩も民主的にやる、実は進駐軍のほうからもお達しがきとる。このままじゃひとからげにみんな沖縄に行って、強制労働ばい。それでもよかか」「……」「しかし、民主主義の喧嘩ちゅうて、それはどげんことじゃろうか」

岡源組の斬り込み隊長の加助は、橋伝組のチンピラに追われて、割烹・川太郎に逃げ込む。どこの男に操を立てとるんじゃ、と女将のお仙に聞く加助。「畜生。思い出し笑いじゃろうが。言うてみい」「いやあねえ。変なこと言わんといて」「どうせ、カタギじゃないじゃろ。極道じゃろ。俺より男前か。あれは上手か」「な・い・し・ょ」「お仙ちゃん。たったいっぺんでええけえ。拝むけん。拝むけん」加助を適当にあしらうお仙。

北九州の博徒が集まって連合会を作ることになったと、加助たちに説明する香取。「わしらも抗争ばかりせんと、市民によか印象を与えようつうことばい。そういう趣旨のため、第一会の大会として、野球の試合をばやるちゅうことに決まった。親分は相撲のほうがええ言うたが、橋本の奴が野球と民主主義はアメリカが本場じゃと生意気なこと抜かしやがった」「それじゃ、ワシらは喧嘩をやるんじゃなかとですか」

がっかりする加助。「試合は参加12チームによるトーナメント方式。優勝旗は市長が出す。その優勝旗は岡源が頂く。間違っても橋伝には渡さん。ええか、岡源組の野球は任侠野球じゃ」

わしは渡世人じゃ、とうめく加助。「棒振り競技に命を張れんばい」花巻は全国を駆け回って、野球のうまいヤクザを集める。元東急セネターズの黄金の右腕と言われた片足片腕を戦争で失った五味が、岡源ダイナマイツの監督に就任する。野球をガキの遊びと馬鹿にする加助であったが、仲間や芸者たちが野球に熱中するのを見て、ふてくされる。

野球は男のスポーツよと加助に力説するお仙に、随分野球に詳しいのおとからかう加助の兄弟分の留吉。「このままじゃ加助さんにお酒飲ますわけにはいかんのよ」「なんじゃい」泥酔して大暴れする加助。

トーナメント大会が開かれ、岡源ダイナマイツは橋伝ハンニバルズと対戦する。川太郎の二階で目覚めた加助は、一階で小指のない精悍な男が飲んでいるのを見て、貴様誰や、と怒鳴る。「お前こそ、お仙の何だ」試合はハンニバルズの助っ人作蔵のピッチングに手も足も出ず、ダイナマイツは大量リードを奪われる。

球場に現れ、お仙を呼び出す加助。「あんた、何しとるの、ダイナマイツは負けとるんよ」「お仙。お前、指のない男を知っとるか」「……」「ほうか。やっぱり知っとるか」「どこにおると」「川太郎じゃ。でげな知り合いか」「私の亭主。ごめんね」「謝ることあるか、馬鹿たれ。はよ行って、顔ば見せちゃれ」「ありがとう」

加助はキャッチャーとして試合に参加する。川太郎で銀次と再会するお仙。「あんた、いつ保釈に」「おい、飯」加助は試合の合間に作蔵が酒を飲んで栄養補給していることを知り、打席にはいる作蔵にええもんがあるぞ、とベンチの横にあるヤカンを顎で指す。それから作蔵のピッチングは急におかしくなる。回ってきたと喜ぶ加助。「鬼殺しの焼酎じゃ」

イニングが終わるごとにヤカンに入っている焼酎をがぶ飲みし、次第にマウンドに立つのもやっとになる作蔵。お仙の作った飯を無言で食う銀次。「ねえ、何か言うて。あの人はなんでもなか。加助さんはいい人よ」試合は加助の逆転サヨナラ満塁本塁打でダイナマイツが逆転勝ちを収める。

あの人はもとノンプロの投手だったの、と加助に言うお仙。「道理でお仙は野球に詳しい思うたわい」「大阪で繊維会社に勤めていたあの人は、神戸でヤクザの妾をしていた私と知り合った。あの人の指はその時の落とし前でああなったの。岩国の親分のとりなしで指だけで許されて。それからのあの人は、喧嘩出入りのためにあっちこっちやらされて。鉄砲玉をやらされたあげく、傷害罪で監獄に入っていたの。出てきたのは五日前」

銀次は岩国の親分から岡源組に助っ人として送られてきた投手であった。加助は喧嘩好きな男で手が早いと言う香取に、女にも早いんじゃないのかな、と言う銀次。マウンドに上がった銀次は、指のないのを利用した魔球で、三振の山を築き、ダイナマイツを勝利に導く。加助はお仙に指一本触れてないと宣言して、銀次に喧嘩を申し込む。互角の殴り合いを展開する二人。そこに現れて二人とも馬鹿よと泣くお仙。

橋本は大町の縄張りを賭けるから、お前は元町の縄張りを賭けて、次の試合に挑めと岡谷を挑発する。橋本の挑発に乗る岡谷。銀次の前に現れた花巻は、橋伝組に寝返ってくれと金と岩国の親分のお墨付きを銀次に渡す。「お宅の身柄は預からせてもらいますばい。あんたの野球は、男尽くしの渡世人の野球。まさか大恩ある岩国の貸元の指図に背くことはなかでしょうの」銀次は橋伝組に世話になることになる。姿を消すお仙。加助は留吉を連れて、橋伝組に殴り込みをかけるが、銀次に斬られて病院送りになる。

姿を消していたお仙が加助の前に現れる。「どこに行っとんたんじゃい」「い・わ・く・に」「ほうか。岩国の貸元に会ってきたんかい。銀次のことをなんじゃ言うとった」「……」「さぞかし怒ってなさるやろうのお。ワシもあの銀次いう男はもうちょっと根性ある男じゃ思うとったが、とんだ見込違いじゃったわい」「……」「お仙。元気出しない。わしがおるけえ。お前がどうなってもわしが最後におる」「加助さん」「わしはのお、男を賭けてお前に惚れとるんじゃ」

縄張りをかけてのダイナマイツとハンニバルズとの大一番が始まる。スタンドで見守る市長に署長に進駐軍司令官。ベンチ上ではストリッパーや芸者たちがにぎやかに応援する。どんな手を使ってもいいいから死んでも勝つんじゃとゲキを飛ばす花巻に香取。銀次に「銀次いのち」とメモを添えて花を贈るお仙。お仙は加助にも「かんにんね」とメモを添えて花を贈ろうとするが、留吉はそのメモを握りつぶして、花を加助に渡す。

試合は予想通り、乱闘あり、死球ありの血生臭い展開で、負傷退場者続出の中で試合は進む。これは野球ではないと呆れる進駐軍司令官。試合は最終回になり、ここでホームランが出れば、ダイナマイツの勝ちという場面で、加助に打席が回ってくる。銀次は簡単にツーストライクと追い込むが、加助は、三球目を大ホームランする。勝利に喜ぶダイナマイツナインにこうなったら破れかぶれじゃと襲いかかるハンニバルズナイン。たちまちグラウンドは修羅場となり、MPや警官やストリッパーや芸者も入り乱れての大騒ぎとなる。どさくさにまぐれてお仙にいっぺんだけやらせろと言う加助。

沖縄に強制労働で送られる岡源組と橋伝組。「加助兄いのホームラン、最高ばいのお。銀次の魔球、あそこまでよう飛ばしたもんですんのお」あれは魔球じゃなか、と言う五味。「ただの棒球たい」「なんで」「わしもいっぺん投げたことがある。あれは投げた本人しかわからん」「……」「あれは昭和19年の夏、セネターズとイーグルスの優勝ばかけた最後の一戦じゃった」

『大東亜戦争たけなわの今、プロ野球の開催も来年は危ぶまれております。ここに雌雄を決する時が刻々と近づいております。セネターズ五味投手の右腕は今日も冴えておりまして、イーグルス打線はわずか一安打。最後のバッター榊原に対しても一球、二球とストライク。ここで榊原にホームランが出れば、イーグルスの逆転優勝であります。榊原はこの試合を最後に出征、バットの変わりに銃を握ることになっています。五味と榊原は本当の好敵手。その榊原の最後のバッターボックスです。五味、三球目を投げました。討ちました。大きな当たりです。榊原のホームラン。逆転サヨナラホームランです』

榊原に打たれてすっとしたと言う五味。「すっとした?ほいで、先生。後悔は」「しとらん。ばってん、あの男、レイテ沖で死によった」何か言おうとする加助のところに、銀次は決闘の申し込みじゃとボールを握って現れる。「ようし。上等じゃ。受けてやろう」