にっぽん三銃士 おさらば東京の巻 | ロロモ文庫

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一流会社の一流社員である24歳の風見一郎は森川副部長から服装や髪形をちゃんとしろと言われてムカッとする。一郎は満員電車でマリという娘に痴漢と間違われる。「私をどうする気」「こうなったら仕方がない。酒でも飲むか」「つまんない。ただ飲むだけじゃ」「じゃあ、ホテルでも行くか」タクシーにマリを乗せる一郎。「池袋西口に行ってもらいます」「どんなホテル?」「ジャングルのようなホテルだ。そこで恋人たちは原始人のようなセックスを楽しむんだ」

しかしマリはホテルに行く直前で嫌だと泣き叫ぶ。仕方なくマリをまたタクシーに乗せる一郎。「お前、何やってるんだ」「コラムニスト」「パンタロンの脱ぎ方・脱がせ方?ナンパ全学連の性意識?なんだこりゃ」「いいじゃないの。そういうあんたは何なの」「俺は一流会社の一流社員だ」「ふん。体制に買われた羊か。玉抜きされた羊ね」「なんだと」

新宿駅前でマリと別れて、バー・ネスパに行く一郎は、いつもと違うじゃないとママのキキに言われる。「俺、怒ってるんだ」「珍しいわね」「殺してやろうと思った。俺を会社で怒った奴。犯してやろうと思った。電車で俺を痴漢と誤解した奴」「珍しく怒ってるのね。あそこにも一人怒っているのがいるけど。電車が混むと言っちゃ怒り、四月に雪が降ると言っちゃ怒り」

トイレから出てくる元陸軍中尉で零細出版社の編集局長をしている48歳の黒田。「ふん。女房子供さえいなけりゃ、俺だって。どうだい、やってるかい」「ええ、まあ、やってますよ」自分の作っている「ハイタク公論」はハイヤー・タクシー業界の太鼓持ち月刊誌だと怒鳴る黒田。「俺は記事を取るために自分の娘みたいな事務員に頭を下げる。この卑屈な気持ちが君にわかるか」「ええ、まあ」

店に不景気な顔をして入ってくる36歳の大学病院に勤務する八木。「どうしたの」「教授と医局員の板挟みで大変なんだよ。僕は学問の間に政治が入ることに抵抗を感じている。でも政治的抵抗なしで、学問の自由も独立もないことも僕にはわかっている」「そう。男の人って大変なのね」そうだと怒鳴る黒田。「男の生きる道は大変なんだ」実は女房の性的欲求が激しくて悩んでいると言う八木に同情するキキ。

ネスパにマリが飛び込んでくる。「誰かに追われているの。助けて」「コラムニストじゃないか。どうしたんだ」「催涙弾にやられたのよ。匿って」刑事がネスパに現われ、ここに女の子は来なかったかと聞く。そんなものいないと答える黒田。「いったいどうしたんですか」「いや、パトカーに投石してフロントガラスを割ったんです」「帰りたまえ。ここは健全な酒場だ。そんな者はおらん」「どうもお邪魔様。失礼しました」

随分優しい刑事ね、と言うキキに無気力なだけよと答えるマリ。「体制に買われてると誰でもああなるのよ。玉抜きされたポチね」再び現れる刑事。「やっぱりいた。こっちに来い」「嫌よ」刑事の前に立ちふさがる黒田。「見逃してやれ、まだ子供じゃないか」「君も公務執行妨害で逮捕するぞ」「なんだと」揉みあう二人。その隙にマリを連れてネスパを出る一郎。

新宿駅前では学生と機動隊が激しくもみ合っていた。刑事に連れられてネスパを出る黒田。僕は不能なんだとキキに訴える八木。「じゃあ、私を試してみる?」「え」「誤解しないでね。私はあなたの実験に協力する。それだけですからね」八木とキキはホテルを探そうとするが、動乱のために帰れなくなった人たちでホテルは満室となっていた。「どこかベッドのあるところはないかしら」「あ、あった。大学病院の第三病棟」

怪我をしたマリをおぶって新宿をさまよう一郎。第三病棟で八木はキキは実験しようとするが、警備員に見つかって病院から逃げ出す。黒田は刑事の手を振り切って、新宿の雑踏の中に身を隠す。新宿西口では若者たちが集まって、反戦フォークを歌っていた。そのギターの下手なのに腹を立てた一郎は、もっと真面目にやれと怒鳴り、ブーイングを受ける。

「俺は君たちの歌に文句をつけてるわけじゃない」「じゃあ、なんだ」「君たちのギターが調子はずれと言ってるんだ」「僕たちは反戦と民衆への連帯の情熱で弾いているんだ」「下手な演奏は下手な演奏だ。音楽は正確で美しいものでないといけないだろう」「じゃあ、君の言う正確で美しい音楽をここでやってくれ」

一郎はギターを弾きながら反戦フォークを歌う。そこに刑事の追跡から逃れた黒田が現われ、卑猥な歌をしみじみ歌う。そこに酔っぱらって現れた森川副部長は流しの真似などするなと一郎に注意する。「もしも騒動でも起こして社名が新聞にでも出たらどうするんだ」「僕はここでギターを弾いて歌を歌ってるだけだ」「すぐにやめないと君はクビだ」「この野郎。死んでもらいます」ギターで森川副部長の頭を殴る一郎。そこに現れる八木。「俺はキキを見捨てて逃げてきた」

もう家にも大学にも帰れないと嘆く八木。みんなダメになってしまったとボヤく一郎。元気出せと二人を励ます黒田。「編集局長の俺は君たちくらい養ってみせる」しかし家に戻った黒田は、妻から会社からクビになったという電話があったと言われ、子供たちから出ていけと言われてしまう。

あの刑事に身分を喋ったのがまずかったなと八木と一郎に言う黒田。「社長が交通安全協会の支部長をやっているんで、さんざん絞られたらしい。そのとばっちりを受けてクビだ」「それはとんだことに」「いやあ、いいんだよ。みみっちい給料のためにペコペコ頭下げるのはもう沢山だ。よし、今日から俺は自由な天地に羽ばたくぞ」夜行列車に乗ろうと叫ぶ八木。「どこか遠くに行くのが僕の夢だったんだ」三人で東京におさらばしちまいますかと言う一郎。

貨物列車に乗って、東京をおさらばする黒田と八木と一郎。今日から我々は第二の人生のスタートを切ったわけだと言う黒田。「これからは三人は死ぬ時は一緒のつもりでやっていきたいんだ。俺はつまらん男だが誠心誠意友情に賭けるつもりだ。よろしく頼む」こちらこそよろしくと言う八木。兄弟仁義をうなる一郎。あなたのおっしゃることはわかりますと黒田に言う八木。「しかし僕は貴様と俺とはの同期の桜的発想じゃなくて、ルンペン同士の持たざる者の連帯感と考えたいんですが」「それはまあどっちでもいいや。要するに三人仲良くやろうってことだ」

お互いの利害や感覚の違いもあるでしょうと言う一郎。「死ぬまで一緒なんて固いことは言わないで、自由に好きにやりましょう」一郎君の言うこともわかると言う八木に、八木さんはなんでもわかると感心する一郎。そうだと言う八木。「学生のことも教授のこともわかる。自己批判しよう」三人はさまざまな思いを抱えながら、新たな人生に向かうのであった。