暗黒街の弾痕 | ロロモ文庫

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三角峠で高性能エンジンをテストしていた草鹿一郎は、背後から近づいたバイクに気を取られ、正面から飛びだしたダンプカーをよけようとして、崖下に転落して即死する。電報で兄の死を知った捕鯨砲練習所の指導員草鹿次郎は、小松モーターズで小松と会う。その様子を電信柱に登って盗撮する三木。

「じゃあ、兄の死は事故死なんですか」「実地検証の結果ではね。現場は事故の多いところでね、ドライバー仲間でも「殺し屋の曲がり角」と言われている。しかし僕は過失とは思えない。S活動の犠牲になった」「S活動?」「スパイだよ。産業スパイだ。スパイといえば戦争。現在の産業界は戦争以上だよ。莫大な費用と研究の結果、完成した新製品をごっそりやられるんだ。ここみたいな小さいところはいいカモですよ」「小松さん。こんなぼろ車が兄が命を賭けるほどの値打ちがあるものなんですか」「問題はこのエンジンだ。一リットルで30キロも走れ、生産コストも安い。20万円台の国民車も夢でなくなる画期的なものだよ」

次郎は警察に行き、担当の東と会う。「どうかね。納得いったかね」「納得いきません」「調書に八百長はないよ」「これは鯨を追っかけたときの勘です。臭いと思った海面には必ず出てくるんです」「警察は捕鯨会社じゃないよ」事故現場に行く次郎に問う東。「鯨は見えましたか」「どうしてここに」「刑事の勘。僕は徹底的にやるタチでね」「目撃者はいないんですか」「ダンプカーの運転手以外はね」

その運転手である房州と居酒屋で飲むトップ屋の須藤。「三角峠の話をしてくれたまえ」「いえ、それが」「俺が話をつけてもいいぜ。野仲に何を頼まれた」そこに現れる次郎。「電報まで打ったのに薄情だぞ」須藤と次郎は大学時代の友人で、ともに野球部に所属していた。そこに現れる野仲組の組長の野仲。「房州。こっちにこい」「話はこっちが先約。公衆電話だって順番だからね」たちまち乱闘になり、野仲組をボコボコにする次郎と須藤。

三木は撮った写真を互栄経済研究所長大鳥に売りつけようとするが、写真でなく設計図じゃなくてはダメだと大鳥は拒否する。次郎は兄が死んだことを須藤に話し、兄の手記を見て、兄が脅迫されていたことを知る。東は房州こと中江房吉が死んだことを須藤に伝える。「オートバイにはねられてね。須藤、何をかぎつけたんだ」「犬みたいに言いなさんな」次郎に聞く東。「鯨は浮いてきましたか」「いや、まだです」

その鯨は浮いてこないんじゃないかと次郎に行った須藤は大鳥のところに行く。「軍資金調達。金がないと遠来の友もおもてなしできんからなあ」脅迫状が来てるのになぜテストをしたのかと小松に聞く次郎。「草加君が警察に行かなかった理由はよくわかる。産業スパイは事件として成り立った例がないんだ。闇に消えるケースが多い」「日本は法治国家ですよ」「その法律が問題なんだ。被害者が起訴に踏み切った場合、被害者側は証拠を全部提出しなくてはならない」「藪蛇というわけですか」「それが奴らの狙いなんだ」

マルサン製薬の最近の株の値上がりの裏にはあなたがいるんじゃないですかと大鳥を脅す須藤。「そのビル工事に便乗して、野仲組に砂利」「わかった。いくら欲しいんだ」「これと三角峠の話は興味ありませんか」「なんだそれは」「三角峠でテストドライバーが殺された。房州も殺された。テストドライバーの弟は怪しいとにらんだ」「それで」「ここで高く買ってもらうつもりだったんですがねえ」大鳥の部下の前川は須藤に小遣銭を渡す。「三角峠のは入ってませんからね」

買収の話は3つあったと次郎に教える小松。「ABC工業、ビーナス石油。もうひとつは互栄経済研究所」互栄経済研究所で前川と会う次郎。「土地の利殖と同じで、これはと思ったものを買うんです。多角経営のひとつです」「さっき、須藤が来たはずですが」「じゃあ、あなたが疑いをもたれているという弟さんですか」前川は須藤は何でも金にする男と須藤を中傷する。

次郎は自分をつける男を締め上げて、ナイトクラブ・パロゾンに乗り込む。ホステスのトミとじゃれる須藤。「あんた、つまんなそうな顔ね」「お前みたいに営業用の顔なんてないからな」「今夜、泊まっていくでしょう」倶楽部の支配人の志満に迫る次郎をなだめる須藤。「何事も民主的に話し合うべきだ」「話してわかる相手じゃない。どうして止めるんだ」「友情だよ」「友情は金にはならんぞ」

大鳥は小松の買収に自信を見せるが、小松は前川に買収の話はなかったことにしてくれという。「実はある会社と技術提携することになりましてね、仮契約したんだ」「仮契約?」前川は小松が仮契約したと大鳥に連絡する。仮契約なんて嘘をつくなんてと驚く次郎の説明する小松。「こういう情報はすぐに洩れるんだ。今に動き出すよ、S活動のやつらが」

パロゾンで話し合う前川と志満。「そろそろ高跳びしなくてはいけませんな」「ボスからの指令をもちましょう」そこにやってきた次郎は前川が志満と会っているのを見て驚く。「アルバイトでここの税務顧問をしているんです」「ボスって誰ですか」「しつこいですな」

次郎はパロゾンの経営者が大鳥であることを知る。須藤はトミから五年前の汚職事件で技術士が死んだ一件に大鳥が絡んでいることを知り、大鳥を脅迫する。「立派な商取引ですよ。飴玉をもらうようなものです。僕はあなたがパロゾンの秘密の経営者であることも知っているんですよ」

パロゾンの裏部屋にやってきた大鳥は酒に毒薬を仕込む。そこにやってくる志満と前川。「前川君。どうしてここに」「いろいろとありましてね」そこに現れる須藤。「御揃いですなあ、みなさん」百万円を大鳥に要求する須藤。「酒でもどうだ」「酒なんかいらんですよ」須藤に百万円を渡す前川。「さすが経済顧問ですなあ」喜んで帰ろうとする須藤の前に立ち塞がる次郎。「その金はなんだ」「正当な商取引ですよ」「大鳥さん。兄さんに脅迫状を書いたのはあなたですか」「知らん」

強引に部屋から次郎を連れ出す須藤。前川と志満に聞く大鳥。「君たちは何を考えているだ。脅迫状を書いたのは君たちだな」そこに香港から電話がかかってくる。「小松モーターズの設計図は手段を考えずに、手に入れるんですね。それでは香港で逢いましょう、ボス」不気味な笑いを浮かべて大鳥に迫る志満。「事情はこういうことなんです。大人しくしていただきましょう。血圧があがりますよ」

球場でホームベースを挟んで向かい合う次郎と須藤。「健、お前,打ったらどこに行く」「ファーストだ」「今のお前はサードに向かっている、何故だ。誰のサインでサードに走るんだ」「次郎。お前はもうちょっとで背中に風穴があくところだったんだぜ」「健、お前は誰が兄貴を殺したか知っているな」「兄貴もいいが、もうちょっと自分のことも考えるんだな」そんな二人を殺し屋が狙うが、二人は協力して殺し屋を捕えて締め上げる。「おい、誰の差し金だ」「志満だ」「脅迫状は」「前川だ」「三角峠は」「前川がオートバイでやった」

パロゾンは改修工事をする。見回りをする野仲に聞く須藤と次郎。「大鳥は何処に行った」「知らねえ。今日からここは俺の店だ」「志満はどうした」「あいつはクビになった」パロゾンをクビになったトミは前川が竹山町のガレージに入るのを見かけたと二人に教える。「次郎とトミはガレージに行け。俺はパロゾンを洗ってみる」ガレージに行った二人はオートバイを発見するが、前川に捕まる。須藤は監禁されている大鳥を見つけるが、志満に捕まる。

志満は設計図を奪いに小松モーターズに向かう。毒入りの酒を飲んだ野仲は死んでしまう。監禁された須藤と大鳥を三木が救い、須藤がガス中毒死しそうになっていた次郎とトミを救う。「畜生、簡単にタッチアウトにはならねえぞ」志満は小松から強引に設計図を奪う。トミに東に連絡するように頼んだ須藤と次郎は志満たちの跡を追う。小松が無事だったのも確認して安心するトミ。「君は誰だ」「次郎さんに頼まれてきたのよ。今、健ちゃんと設計図を追っているわ」「すぐに呼び戻すんだ。あの設計図は偽物だ」

工事現場で落ち合う前川と志満。「須藤と次郎が追ってくるぞ」「よし。待ち受けてやっつけるんだ」工事現場に到着する次郎と須藤。「おい。9回裏幕切れって感じだな。この気持ちは」志満は設計図の入っているケースを開く。そこには「謹賀新年」と書かれてあった。「おめでとうございます」「畜生」怒り狂った志満たちに須藤の放った建設用銛撃銃が炸裂し、東たちが乗り込んで前川たちを逮捕する。「鯨は浮いたようだな」「いやあ、海のようにはいきませんよ」「うまくいったら、俺たちは飯の食い上げだよ」

球場でホームベースをはさんで話す次郎と須藤。「おい、健、どうする」「うむ。打ったらファーストに走るさ」「そうじゃなくて、これからどうする」「うむ。鯨獲りにでもなろうかな」「そうか。ははははは」