バニー・レークは行方不明 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

保育園で娘のバニーがいないと事務員のエルビラに訴えるアン。「4歳の娘よ」「バニー・レイク?覚えがないわね」「あなたに電話したでしょう。今朝のことよ。「バニーの初日ですが遅れます」と」「思い出したわ」「指示通り、ここに連れてきたのにどこにも見当たらないわ」「食事なしの子は全員帰したわ」「全員と言うけどうちの娘はいないのよ」「4歳ならダフニ先生が」「その先生なら歯痛で帰ったと聞いたわ。子供を預かる身で何もわかってないのね」兄のスティーブンに電話して、保育園に来るように頼むアン。

警備は万全だろうねとエルビラに聞くスティーブン。「まさか部外者は入るまい」「当然ですわ」「バニーが来たのは10時。あの子が一人でここを出るわけない。つまり誰かが連れ去った。そうだろ。では誰が連れ出した」「連れ出したとしても保育園の外とは限りません」「保育園の中を探したのか」「勿論」「僕らだけで探していいか」「どうぞ。私は事務室にいますので」

園長の部屋にいる老女にあなたが園長かと聞くアン。「いいえ、ベントンは入院しているわ。私はフォード。彼女とここを始めたけど、私は引退したわ。今は本を執筆しているの。子供の空想についてね。この部屋には子供は滅多に来ないけど、時には勇敢な子が目を盗んでやってくるの。あなたの娘さんの名前は?」「フェリシアですが、いつもはバニーと」「バニーと呼びかけるのよ。聞こえても陰に隠れて私たちを笑ってるけど」

この人は変よとスティーブンに言うアンに、誰だって多かれ少なかれクレージーなものよと笑うフォード。「特に子供はね。バニー、どこなの。どこかで眠り込んでるのかも。怖い思いをして眠ったのかもしれないわね」「怖い思いって?」「さあ」「何が言いたいんです。娘に何があったと」何かご存知なら教えてくださいとフォードに頼むスティーブン。「ご迷惑をかけません」「迷惑とは?」「警察に連絡しません」「まあ、面白いこと。電話ならここよ」「警察を呼んでも?」「父親なら当然のことよ」「アンは僕の妹だ」

そこに現れるエルビラ。「ここに入る権利はないわ」「敷地内ならどこでも入れるはずだ」警察に電話すると言うスティーブンにそれはやめてくださいと頼むエルビラ。「ベントン園長が知ったら大変なことに。ダフニ先生と連絡がついたんです。彼女が戻ったら全て説明しますから。ベントン園長は警察が嫌いなんです」「だめだ。電話する」

ニューハウス警視とアンドリュース刑事から事情を聞かれるアン。「ダフニ先生は娘さんを見てないと言っている」「でも娘は10時にここに」「あなたはそれから?」「引っ越し業者が来ると言うんでアパートに戻ったわ。娘を待合室に残して」「心配いりません。周辺を探させます。きっといますよ。娘さんの写真はありますか」「持ってないわ。まだ荷物が届いてなくて。英国に来たばかりなんです」「お兄さんは持ってますか?」「聞いてみないと」

アンにフォードと話してきたと言うスティーブン。「前にも2人が迷子になったそうだ。先生と動物園に行ったそうだ」「見つかった?」「勿論。でも見つかるまで大騒ぎだったそうだ」ご主人はとニューハウスに聞かれ、私は結婚してないと答えるアン。「そうですか」「未婚だと何か不利に」「いえ」スティーブンにバニーの写真を持ってるかと聞くニューハウス。なんてバカなのかしらと呟くアン。「娘のパスポートがアパートに」「僕が取りに行こう」「お願いします。あなたは署に。お話を聞かせてください」

バニーの身体的特徴をニューハウスに話すアン。「すぐに手配しますのでご安心を」ニューハウスに電話するアンドリュース。「子供の物が全て持ち去られています。もちろん旅券も」「わかった。すぐにそっちに行く」

まるで悪夢だわと嘆くアン。来た時にはドアが開いてたとニューハウスに言うスティーブン。カギをしなかったのかとニューハウスに聞かれて多分と答えるアン。「バニーはこのアパートに?」「いえ、船旅で風邪を引いてずっと家にいたから。今日が初めての外出で」「今日、ここに引っ越したんですか」「そうよ」

僕はアメリカの雑誌社のロンドン支局長代理だと言うスティーブンに今日のことを話してくださいと頼むニューハウス。「フログモアの支局長の家を出ました。彼は文化交流庁の仕事で不在です。妹とバニーもここへ移るまでその家に」「5日いたわ」「4日だ。そしてここに」「何か都合でも」「今日から契約だから。まずフログモアで運送業者と会い、そのあと取材で空港へ行きました」私にはわからないとニューハウスに言うアン。「子供が突然消えるなんて」「よく思い出してください。この国に来てからバニーを見た人は誰ですか。それをリストにしてください」

バニーを傷つけないでと嘆くアンを慰めるスティーブン。「連中は大袈裟に言うんだ。まるで大事件みたいに」「あの人、警察だもの。事情に詳しいはずよ」「無神経なだけだよ。聞いて。そんなことは絶対にないから」「どうして?」「持ち物がない」「証拠にはならないわ」「証拠だよ。もし子供を殺すならオモチャや服をあてがうと思うかい」「そうだわ。でも誰が」「それを考えるんだ。泣いてちゃダメだよ」

「あの警視さん、リストを出せと。英国でバニーを見た全員のリストを。何のためなの」「容疑者だよ」「いいえ、そうじゃないわ。あの言い方はまるでバニーが実在するか確かめるような。あの人は信じてないのよ。だから捜索を打ち切ろうと」「そんなバカなこと」「そうだわ。泥棒も見逃した物が」引き出しの中から箱を取り出すアン。「なんだ、これは」「お菓子が入ってるの。宝探しをしようと思って」「警視に見せるよ」「スティーブン、思い出したわ。30人以上がバニーを見てる。保育園に行くバスよ」「わかった。警視に伝えるよ」

消えた子は何人もいるとニューハウスに言うフォード。「子供は親の意のままなのに、悪い親が多すぎるんです」「子供を育てる資格もない?」「そんなことを言ったら私が疑われますよ。変わり者の老女が子供を隠したとかね」「ではバニーの話を」「本名は違うのよ。フェリシアよ。品があるでしょう。あのお兄さんだけど、どこか変わった青年ね」「彼とどんな話を」「彼女に空想上の友達がいたと。彼女はそれをバニーと。ごく自然なことよ。孤独な子にはね」「なぜ彼はあなたにそんな話を」「気が合ったのよ」

エルビラに事情を聞くニューハウスに箱を見せるスティーブン。「今朝、妹がバニーに買ったものです」「早く教えてほしかったですな」「隠したまま忘れてたんです」「隠す?」「宝探しですよ。昔、アンと僕でよく遊んだ」「思いもよらない証拠ですな」「ではバニーが実在すると認めますね」「私が実在しないとでも」「リストを作れと」「それは言った」「ならバスの乗客に聞いたらどうです。2人はフィンチリーで降りた」「乗客は追跡が難しい」「調べもしない?」

それより重要なことがあると言うニューハウス。「この1年に入園した子供の記録を調べました。バニーの保育費を払いましたか」「ええ、ひと月分」「あなたが?」「妹は米国にいたし、それにいつも僕が面倒を」こちらには何も記録がないと言うエルビラ。「子供の名前も」「記録がなければ存在も否定できる」「何が言いたいの」「密かに証拠を処分したんだろ。警視、どちらかがウソをついている。向こうには理由があるが、妹に何か理由が?」

どちらもウソをついていることがありえると言うニューハウスに、明朝までに子供を見つけないと最悪の事態になるぞと言うスティーブン。「と言うと?」「記者として訴える。米国の少女、行方不明。ロンドンの警察は捜査もせず、とね。あなたには大打撃だ。僕は探偵を雇う」「訴えるのも雇うのも自由ですよ。必死ですな。妹さんのためなら金も払うし、探偵も雇う」「当然だ」「二人の渡航の手段は?」「船だ。クイーンメリー号で先週の木曜に」「あなたと妹さんとの関係は?」

父は戦車に轢かれて死んだと言うスティーブン。「母は少し変わってました。死後の世界を信じていました。警視は信じますか」「現世だけでも奇跡ですよ」「とにかく母はよく教会に。そこで死んだ父と話すんです。ともかく当時からアンの面倒は僕が見ていました」「少年には重荷では?」「別に」「2年前に死にました」「アンは孤独だった?」「普通でしょう」「どんな遊びを?」「絵本や人形と言ったところです」「一人で?」「一体何の話です」「時に孤独な子供は空想上の友達を作る」「妹さんには?」「僕は知らない」

スティーブンから妹にバニーと言う架空の友達がいたと聞いたと話すフォード。僕は妹とは言ってないと話すスティーブン。私はウソは言わないとニューハウスに言うフォード。「彼は妹と言ったのですか」「直接言わなくても話の流れがそうでした」「妹さんのことでないなら、なぜバニーと」「仮にバニーと言っただけだ」「彼女を訪れた理由は?」「彼女は何か知ってるから話したかった。彼女は保育園をかばおうとしている」「もしバニーが妹さんの妄想だったら」「もういい。僕だけでバニーを探す。君は交通係に降格だ」

バニーを見た人のリストを考えたとニューハウスに言うアン。「今朝のバスの乗客と下船した港の人だけ。娘はずっと風邪で家にいたの。でも娘のお菓子を見つけたわ。兄から聞いてる?」「ええ」「じゃどうして」「打てる手は打ってます。ひとつ聞きたい。誰か出産に反対を?」「兄は中絶が一番だと言って、必要なら手配すると。でも私は産みました」「父親は?」「私の父?」「バニーの」「同級生で映画やダンスに行ったわ。彼は重要じゃないわ」「子供を産むと言ったら?」「結婚を申し込んだけど、兄が追い払ったわ」「それっきり?」「いいえ、あきらめないから私から断ったわ。もう愛してないし、兄も会うなと」「賢明なお兄さんだ」

子供の頃に空想上の友達がいたかと聞かれ、兄に聞いたのと答えるアン。「女の子よ。小さい頃、空想して遊ばなかった?」「名前は?」「バニーよ。バニーは童話の主人公で可愛かったから友達にもつけたの。そのあと娘にもバニーってあだ名を。それが聞きたいんでしょう」「いや、あなたのことを知りたくて。バニーはどうなるんです。お話の最後に」「覚えてないわ」「空想上のバニーは?」「私たちで話し合って、天国へ送ることに」「私たち?」「私と兄よ。日本では壊れた人形を毎年供養すると聞いて、庭に墓を掘って彼女の物と埋めたの」「物とは?」「その子が使う空想の物よ」

二人でバニーを探そうとアンに言うスティーブン。「明朝、ロンドンで一番の探偵と約束している」「それまでに死ぬかも」「やめないか。この話はしただろう。バニーが死ぬことはない。犯人と一緒で見つからない場合でも、それは最悪の場合さ。必ずどこかで生きている。会えないなら死にたい」「アニー、よく聞いて。慰めたかったんだよ。たとえ会えなくても誰かに愛されてるとね」「バニーを隠せる?」「無理さ。だから見つかる」

人形のことを思い出したと呟くアン。「兄さんがバニーの人形を修理に出したのよ」「忘れてた」「受け取りに行くわ」「もう閉まってるよ」「ドアを破っても開けさせるわ。人形があれば警察も信じるはずよ」クイーンメリー号の木曜日の乗船記録を調べるニューハウスとアンドリュース。「乗客名簿には母親の名もない。この意味はわかるか」「あの母子そのものが存在しないことに」「待てよ。兄は4日。妹は5日と言っていた」

人形修理屋に行き、バニーの人形を見つけて喜ぶアン。そこに現れるスティーブン。「これで警察も信じるわ」「そうだね。表に車がある」「代金を払わなきゃ」アンが修理屋に金を払いに行く間に人形を燃やすスティーブン。「スティーブン。どうしたの」アンを殴り倒して病院に連れていくスティーブン。「軽い打撲のようです」「きった倒れた時に頭を打ったんだ。ここ数日疲労は続いて」「今は何よりも睡眠です」「金はいくらでも払うから治してください。ここ数日、妹の精神状態はおかしかった。空想上の子供が行方不明だとか何とか。精神科に診せた方が」「そうですな。我々も努力します」

病院から抜け出し、アパートに戻るアニー。穴を掘って様々な物がはいった箱を入れ、車のトランクに閉じ込めていたバニーをアパートの中に運び、ネクタイでバニーの首を絞めようとするスティーブン。「賢いのね、スティービー」「なに?」「保育園のことよ」「先回りして見張ってたんだ。ずっとね」「そしてバニーを」「急いで連れ出したよ。先生が来る前にね」「勇敢なのね。私には無理だわ。バニーはどこに?」「眠らせて車のトランクに。でもなぜ君がいるの?来ちゃいかないのに」

「でも来たの。スティービーと一緒にいたかったの。誰かがあなたを傷つけたり泣かせないように」「僕、悪いことをした?」「いいえ」「でも君は悪いことをしたね。僕を忘れて男の子に夢中で。あの汚い男の子に。悪いことだね」「ええ、スティービー。悪いことよ」「そして、この子を産んだ。必要なかったのに。もう昔と違う。この子が邪魔に入る」「誰も邪魔なんかしないわ」「あの人形は悪かったね」「ただの人形よ。怒っていないわ」「もう一人のバニーも邪魔だったね」「いいえ、あの子は空想だもの」

ママと呟くバニー。やっぱり邪魔をしたと呻くスティーブン。「天国に送らなきゃ」「やめて、スティービー。私がやるわ」「ダメだ、アニー。僕を裏切った」「信じて、スティービー。私は裏切らないわ」「ずるいよ。もう一人のバニーは君が天国に行かせた。今度は僕だ」

バニーの首を絞めようとするスティーブンにこの遊びは飽きたと言うアン。「かくれんぼしましょう」「僕が勝つよ」「どうかしら。あなたが鬼になるのよ」かくれんぼをして遊ぶアンとスティーブンとバニー。「ははは、今度は目隠し鬼だ」バニーを連れて逃げようとするアンに怒るスティーブン。「やめて」「僕をだましたな」「バニーを返して」「……」

穴の中にバニーを埋めようとするスティーブン。ブランコに乗るアン。「スティービー。早く来て。あなたが来ないと高くこげないわ」「……」「今すぐ来ないと、もう一生遊んであげない」「……」「スティービー。アニーと遊んで」アンの背中を押すスティーブン。「もっと押して、空にさわりたいの」「空まで飛んでけ」「空まで高く」「空まで届け」「空まで高く」「高く」「高く」「高く」「高く」そこに現れるニューハウスとアンドリュース。船の嘘はいけませんなとスティーブンに言うニューハウス。「いずれわかったことだ」バニーを抱きしめるアンなのであった。