喜劇 頑張れ!日本男児 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

CM会社アパッチプロを経営する荒木は松野屋の男性化粧品のCMを製作するが内容が低俗すぎると言われる。「こんなもの放送できるわけないだろう。馬鹿者」君とは縁切りだと荒木に言うニッセン広告社の部長の水野。昔エロ新聞社でオーバーな記事を書いた癖が抜けんなとボヤく荒木は、週刊誌のエロライターの斉藤に相談する。

「ほんまにピンチや。もう事務所の家賃も払えん。なあ、ええポン引き紹介してや。代理店の水野に女抱かしたいんや。こいつ小児科でな。若い女に目がないねん」「処女のコールガール屋があるがね。勿論再生だけど」「じゃあ、そいつを頼むよ」

荒木は戦争体験からアメリカに対して重度のコンプレックスを持つ男で、荒木の妻の京子は全く自分にサービスしない荒木に対して不満を持っていた。「あなたは全然私にかまってくれないじゃないの」「だからその埋め合わせに去年斉藤の女房とハワイ旅行させてやったじゃないか」「どうせならヨーロッパに行きたかったわ」

ハワイで世話になったヒギンス夫妻から手紙が来たと言う京子。「いい御身分よね。定年退職して世界中で夫婦の気の向くままに旅行してるんだから。今度日本に来るのよ。ねえ、うちに泊まっていただかない」「なんやて」

お世話になったお礼がしたいと言う京子。「それにあなただってアメリカに行くかもしれないでしょう。向こうはテレビの本場なんだから。それにヒギンスさんは定年まで国務省にいたの。絶対にあなたのためになるわ。ねえ、あなた、いいでしょう。あたし、英語学校に通おうかしら」「日本人は日本語だけ知ってりゃええんや」「そうかしら」

「俺の中学校のころはな、戦争の真っ最中で、教師は日本人はイエスとノーだけ知っときゃええて言ったんや。俺はアメ公なんか絶対におべっか使わんぞ」「とにかくヒギンスさんはうちに呼ぶわ。この話はこれで終わり。ねえ、あなた」京子は荒木に迫るが、そこに京子の妹のマキが帰ってくる。「マキちゃん、帰ってきたで」「もう」

水野に処女を紹介すると言う荒木。すぐに会わせてくれと言う水野。ヒギンスが日本に来ると斉藤の妻の里子に電話する京子。「東京案内する時は奥様も是非ご一緒に」「わかったわ」「ところで今晩お暇?麻雀でもやりません」10回も再生していると言うユミを荒木に紹介するコールガール屋の田丸。

すぐにユミを連れ出す水野。うまくいったと軍歌を歌う荒木と斉藤。麻雀しならがらどこを観光させればいいか話し合う京子と里子。「ありきたりの観光コースじゃねえ」「ホストクラブはどうかしら。若い男が奴隷のようにかしづくそうよ」「あら。そこいいじゃない」

荒木に最高だったと言う水野。「早速だけど大きな仕事がある。フラワー製薬がビタミン剤を出す。そのCMをやってくれ」「ありがとうございます」ヒギンスを家に迎える準備を着々と整える京子。「あなたも英会話学校に通えば」「俺は絶対英語なんか使わんぞ」ヒギンスが日本に来る日となる。一緒に迎えに行きましょうと言う京子に俺は重要会議で行けないと言う荒木。

誰か来るのかねと荒木に聞く水野。「ええ。なんかヒギンスいう国務省のOBが来るんですわ」「国務省?その人を紹介してくれ。アポロ飛行士が来月日本に来るという話があるんだよ。富士電気がその飛行士をCMタレントに使いたいと言ってるけど、国務省のOKがいるんだ。君の筋で話がうまくいったら、これからも君に仕事を回すよ」

京子と一緒にヒギンス夫婦を空港に迎えに行く荒木。ヒギンスが日本語ができると知って驚く京子。「ハワイではちっとも使わなかったのに」「進駐軍で半年日本にいました。今度日本に来るので猛勉強しました」「よかったわね、あなた。英語使わなくてすむわよ」「ははは。それはどうも」

家にヒギンス夫婦を連れて行く荒木と京子。「それで国務省に友達はいるんですか」「はい。いっぱいいます」「そうですか。ははは」マキを見て相好を崩すヒギンス。「マキさん。あなたは素晴らしいですね」若い子が好きですかとヒギンスに囁く荒木。「はい、とっても」「あれくらいの子ならいっぱいいます」

またこの間のポン引きを世話してくれと斉藤に頼む荒木。「今夜、アメ公のおっさんに若い女世話したいんや」「お前アメリカ嫌いじゃなかったのか。新聞社時代、ただ一つ俺とお前が意見が一致したのはアメリカ嫌いってことだ。俺はアメリカ帝国主義反対の立場から。お前は自分の父を戦争でアメリカ兵に殺された恨みから」「そりゃあな、おふくろかて戦災で体壊して死んだしな。こりゃみなアメリカのせいや。でもそのアメ公の顔見てると無性にサービスしたくなるんだな。これがおかしいんだ。嫌な男にナニされた女がその男を忘れられなくなるという理屈と同じや」

ホストクラブのヒギンス夫人のメリーを連れて行く京子と里子。ハッスルするメリーを見て、歌舞伎を見てた時は23回もあくびしてたのにと呆れる京子。ヒギンスは世界中の女性のヌードを撮るのを趣味としていた。田丸は若い女の子は二人準備できなかったと荒木に言う。「一人は先日のユミちゃんですが、もう一人は年増」「しょうがない。その年増は俺が相手するわ」

昨日はとても楽しかったわと荒木に言う京子。「あなたはどこに言ってきたの」「年増ばかりのバーや。何やこのマッチ。「ホストクラブ・鉄仮面」やと」二人とも大騒ぎしてるのと恋人の友也に言うマキ。「見てておかしくなるくらい」「アメリカコンプレックスがあるんだよ。中年の連中には」「てんでわかんないな」

「うんざりするよな。戦争体験やカボチャの葉っぱまで食った話なんて」「挙句の果てに今の若い奴には根性がないと来るんだから。できた?新しい曲」「ああ。ところでそのアメちゃん、向こうで大物なのか」「らしいわ」「うまく利用してアメリカ無銭旅行できないかな」「それ、いいアイデアね」

国務省の方は頼むよと荒木に言う水野。アメ公に実演みせてやりたいと斉藤に言う荒木。「どういうつもりだ」「あの外人、いくらこっちがサービスしてもてんで動じんのや。こうなったら日本が世界に誇る白黒ショーでも見せんと。斉藤、やっとわかった。あのヒギンスになんでサービスせにゃならんかが。なんでもええからあいつをギャフンと言わせてやりたいんやな。日本の何かにあのじいさんを熱中させたいんや」「わかるな。その気持ち」「そやから。その男はウルトラサイズの持ち主やないとあかんで」「うん。あてはある。まかしとけ。俺だってアメ公がびっくりするところ見たいからな」

荒木と斉藤は白黒ショーにヒギンスを連れて行くが、男優の吉ちゃんが不能状態になってしまう。話し合う荒木と斉藤。「吉ちゃん、俺らと同じ年頃やろ」「うん」「全く俺らと同じような経験してるんと違うか。進駐してきたアメリカ兵のどでかい体に怯えた想い出。ぎぶみーチューインガムとねだった記憶。肩までない天皇と並んだマッカーサーの写真。一列に並んで頭からボンボンかけられたDDT。乗り込んだ買い出し列車。吉ちゃん、ヒギンス見て少年時代思い出して、インポになりよったんやわ」「きっとそうだ。これは俺たちの年ごろじゃないとわかんねえな。アメリカ人の中で身構えなくて済む奴には俺たちの中のアメリカはわかりっこないんだ」

家に戻った荒木とヒギンスを待ち受けるマキと友也。「ヒギンスさん。車に乗ってください」「おお、マキさん。乗りましょう」「兄さんも一緒に来る?」「どこに行くんや」「ヒギンスさんがあっと驚くところ」「そんなもんあるかい」「一緒に来ないの」「一人で家におってもしょうもないわい」幽霊バー「ドラキュラ」にヒギンスを連れて行くマキと友也。こんなもんあかんでと荒木は言うが、ヒギンスはとても恐ろしいと怯える。

「マキさん。助けてください」「おじさま。私たちをアメリカに連れて行ってくださる?」「はい。何でも言うこと聞きます」「じゃあ、約束のキッス」そこに観光バスツアーの一貫で京子と里子と一緒に現れるメリー。「あなた、どういうこと」「許してくれ。メリー」「恥知らず。我慢できない。37年も連れ添ったのに。もう別れるわ」

アメリカ人言うてもやってることは長屋の父ちゃん母ちゃんと変わらんやないかと京子に言う荒木。「あなた。ヒギンスさんは奥さんに責められて何もかも白状したわ。二人でコールガール買ったんですってね」「そんなもん買うたか」「不潔ね。私の相手もしない癖に女を買うなんて」「ヒギンスのついでやないか」「自分が遊びたかったから、ヒギンスさんをダシに使ったんじゃないの」「お前だって鉄仮面ってヘンテコな店に行ったやいか」「私は何も悪いことをしてないわ。私は貞淑な妻です。それなのにあなたは」

ティーパックを見て「アメリカひじき」かと呟く荒木。「ヒギンスが来なかったらこんなことにならんかったのにな。ほんまに一生アメリカに脅かされて暮らさなならんのかいな」アメリカひじきって何ですかと聞く友也。「この紅茶の葉っぱのことや。終戦の翌日な、アメリカ軍の捕虜に支給する衣料や食い物をB29が落としたんや。俺らそれを全部くすねたんやけど、その中にこれが入っとったんよ。英語の読める奴なんかおらん。みんな集まってこれ何やろなと話しおうた。郵便局のおばはんがこれは水でもどして炊くんやないかと言いおった」「……」

「ひじきみたいなもんやでと言うたから、こっちは食いたい一心で鍋に入れてグツグツ煮たがな。赤うなった湯をこれはひじきのアクや言うて捨てて、また赤うなったのを捨てて、全然赤うならんまで煮て岩塩つけて食うたら、まあ苦いの苦うないの言うて、吐き出してしもうたんや。アメリカ人もロクなもの食うとらんなと笑うたが、これくすねたんがバレて、アメリカ軍が上陸して死刑になったらどないしようとビクビクしたりしてな」

紅茶の葉を食べる荒木に、そんなことより私たちの話を聞いてと言うマキ。「テレビの音楽プロデューサーを紹介してほしいの。彼の歌最高なのよ。実はヒギンスさんをたぶらかしてアメリカ無銭旅行を企んでたけど、あの事件でパーになったの」「このままで終わるのおも癪だから、テレビで金儲けしてアメリカに行こうと思うんです。アメリカに行くのは若いほどいいですからね」「よろしくね」

俺はあの事件以来、京子と冷戦状態だと言う荒木。「君たちがヒギンスをあんな店に連れていくからやで」「でもメリーさんがあの店に来たのは偶然よ。それに兄さんが言ってたヒギンスさんをあっと言わせることができたから、よかったんじゃない」「俺はあんな西洋お化けじゃなくて、なんかもっと日本のものであいつをあっと言わせたかったんや」

それで西洋コンプレックスを吹き飛ばそうってわけですかと言う友也。「なに。なにがコンプレックスや」「まるで楽しんでるみたい」「楽しむ?」「アメリカひじきを楽しんでるのよ。兄さんは。俺たちの世代しかわからないこの心。男涙の子守唄なんてイキがってるのよ。カッコ悪い」

「それじゃ一生アメリカひじきから解放されませんね。その話しはここらで打ち切りにして、紹介してくださいよ、プロデューサー」「カッコ悪い言うたな。じゃあ君たちはカッコいいわ」「話しにならないわ。感情問題の微妙なとこつかれると、理屈は通らないわけね。じゃあね」「さようなら」

私たちは大阪に行きますと京子に言うヒギンス。「大変ご迷惑をかけた」ヒギンスはあれから誠意を見せてくれたと言うメリー。「精神的にも肉体的にも。やっぱり私の主人ですわ」「そうですか」「今度は是非アメリカに来てください」ヒギンスさんは大阪に行ったわと言う京子を抱きしめて精神的にも肉体的にも誠意を見せる荒木。

事務所で部下にもっとパンチのある作品を作れとハッパをかける荒木。「パワーのある音楽使って、わしのイメージに合ったのを作ってや」そして水野に電話する荒木。「あの例のヒギンス。国務省言うても下っ端の下っ端でしたわ。いやもう、アメリカ言うても大したことおまへんな。あはははは」