手塚治虫「ブラック・ジャック(168)」 | ロロモ文庫

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二人三脚

小学校の運動会で二人三脚をする親子。「足並み揃えて。オイチニイ。オイチニイ」ビリッカスだと泣く子。「泣くんじゃねえ、ビリッカスぐらいで。わしなんか小学校の成績は6年間ビリッカスだった」競技委員がレースが終わったことを告げに来る。「てやんでえ。俺たちがまだ走っているのに、なぜ終わらせるんだ」「すいません」

(あの頃の、せがれは可愛かった。だが、あれから10年。今のせがれときたら、とんでもない悪がきになりやがった)昭吾はすっかり父親に対して反抗的になっていた。昭吾は赤軍派のメンバーとなっており、ブラックジャックに1億円を出すよう脅迫状を送るが、勿論ブラックジャックは断わる。大騒ぎする昭吾たちのグループ。「人民の敵、ブラックジャックを倒せ」「家もろともぶっ飛ばせ」「時限爆弾の用意はいいだろうな」

昭吾の父は昭吾の様子が変なのを不審に思い、昭吾を尾行するが、昭吾たちのグループに捕まる。父親を見て驚く昭吾。「我々のアジトを知られてしまったぞ」「余計な真似をしやがって。親父は土建屋をやっているんだ。つまらない男さ。何より俺が気に食わないのは、えらそうに親父風をふかすことさ」「とにかくグズグズしていられん。これからブラックジャックの家を爆破に行く。昭吾も来いよ」「ああ。行くとも」

「今一番もうけているのは、医者と土建屋と言うじゃないか。ブラックジャックの家をやったら、次は親父の会社だ。社長を人質にとったと脅せばいい」「そこまで必要ない。お前の親父は死んでもらうんだ」「別に殺すことはないだろ」「バカ。俺たちのアジトを見られたんだぞ。そっちから足がついたらどうする。そいつは車と一緒に爆破装置を持ってつっこんでブラックジャックと一緒に死んでもらうぜ」

気を失ったままの昭吾の父は、車に乗ったままブラックジャックの家に向う。しかし昭吾は父を助けようと、車に飛び乗る。車は大爆発し、2人は吹き飛ばされる。失敗した、と逃げる赤軍派。ブラックジャックとピノコは2人を家の中に連れて行く。「年上の方はダメだ。脳塞栓だ。若い方は、無闇と焼け焦げと骨折があるが助かるかも。それにしても右足はほとんど使い物にならない。グダグダにつぶれているからな。「ピノコ。久しぶりにマラソン手術になるぞ。大丈夫か」「うん。大丈夫。まかちてよ」

心電図を見るピノコ。「あーん。ヒョウタンツギが出たわのよ」「そいつはいい。じゃあこの患者はきっと治るぞ」昭吾の母がブラックジャックのところにやってくる。「主人と子供が本当にお世話になりまして」「ご主人はお気の毒でした。しかし不幸中の幸いですが、息子さんは助かりましたよ」

昭吾と会う母。「お父さん、死んだよ」「知っている。まあ、しょうがないさ。それより、母さん。偉いことになるぜ。このお医者にかかったら、目玉が飛び出るくらい払わされるよ」「その通り。このオペには1億円はかかったな。だが、お前さんが1億円を帳消しにしてくれればトントンになるがね」「なに」「わかってるんだ。お前さんが脅迫の手紙を出した一味だってことを。お前さんを治してやる代わりに、二度とあんな脅迫の真似をしないよう仲間に言うんだな」

「そうはいくもんか。お前がぼろもうけしている間は、何度でも押しかけてやる」「その足でかね。お前さんの足の骨はほとんど親父さんの骨だぜ。親父さんの死体の骨を移植しだんだ」「親父の骨」昭吾の母は父の書いた手紙を昭吾に見せる。「人の生きかたにはいろいろある。お前も自分の道を進めばいい。だが小さい頃、運動会で二人三脚をしたろう。お父さんはあのことが忘れられないんだ。昭吾、人生は一人じゃないんだ」すっかり改心する昭吾。「お父さん。父さんと俺はこれからは二人三脚だよ」