手塚治虫「ブラック・ジャック(130)」 | ロロモ文庫

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ホスピタル

同級生だった辰巳に会いに行く中立病院に行くブラックジャック。「卒業以来だな」「是非とも君に相談に乗って欲しいんだ。この中立病院は知っての通り東亜大学出身の医者がウジャウジャいてね。特に院長の王仁川先生が東亜大学出身なものだから、病院の中は東亜大学グループの天下なんだ。おかげで僕のようなよそ者大学出身は小さくなっていなくちゃいけない」「噂は聞いているよ」

「ところで、僕が受け持っている患者は骨肉腫なんだ。この少年はピアノに関しては天才的なんだ。それがエウイング肉腫に冒されているんだ。本人も親も泣いて口惜しがっている。もし腕を切り落とせば生きがいをなくすわけだからね。何とか切らないですむよう骨を折って、切らずにすむような感じなんだ」「じゃあ、いいじゃないか」「ところが王仁川先生は一目見て切ってしまえ、と」「仕方ないな」

「とんでもない。あの先生は何でも切ってしまう主義なんだ。僕はあと2、3日で切開手術をしなくてはいけない。でもあの子の一生のことを考えると切りたくない。でも王仁川先生に逆らうことは、この病院を追い出されることになる」「俺にどうしろというんだ」「どうしていいか、教えてくれよ」「俺は無免許医だぜ。あんまり大病院のことにかかわりたくないんだ。君が判断すりゃいいだろう。じゃあな」

ブラックジャックは王仁川と偶然出会わす。「ブラックジャックとかいう評判の悪い男だな。オペの技術がちょっとうまいから大きな顔をするなよ」立ち去ろうとするブラックジャックに追い討ちをかける王仁川。「あいつの顔の縫合のあとは何だ。よっぽどヘボ医者じゃなけりゃ、あんな痕はつかんよ。あれがわしの同期じゃった本間丈太郎って男のオペのそうだ。本間って男はグズでな。だからあんなオペをしたんだ。晩年は野垂れ死に同然だったそうだ。ハハハハハハハ」

王仁川にくってかかるブラックジャック。「もう一度言ってみろ。本間先生のことをなんて言った」ブラックジャックは辰巳に少年の手術を手伝うことを約束する。手術室で辰巳に告げるブラックジャック。「このオペは確かに引き受けるが、私の名前は一切出さないでくれ。君がやったことにするんだ」少年に告げるブラックジャック。「まず右腕を切り離す。これは院長の絶対命令だからな。そのあと患部のエウイング肉腫を切除して元通りつないでみる」手術は成功する。

噂を聞いた王仁川は辰巳に質問する。「君はいったん切り落した患者の腕をまたつないだそうだが本当かね」「一応やりました」「ワハハハ。冗談じゃない。わしができんことを君にできるものか。オペの結果を見せてもらおう」完璧な手術ぶりの驚く王仁川。「こんなオペ君にできるわけがない。三流大学出身のペイペイにできるものか。さあ言ってみろ。どこのだれがやったのか」

辰巳は叫ぶ。「このオペはブラックジャックが執刀しました」「なんだって」「そうです。ブラックジャックの見事な手術です。僕と同じ三流大学の出身です」「む。無免許医に執刀させた責任で君を解任する」そのことを辰巳は電話でブラックジャックに報告する。「何故俺の名前を出したんだ。馬鹿だな」「クビになったけど、セイセイしたよ。一度だけでいいから東亜大学出の大先生をガクッとさせたかったのさ」