手塚治虫「ブラック・ジャック(70)」 | ロロモ文庫

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報復

日本医師連盟の呼び出しをくらうブラックジャック。連盟の会長が質問する。「何故あなたを呼んだのかおわかりですな、あんたは医師免許を持っていない。だが堂々と開業しべらぼうな報酬を取っている。今まで何度も忠告した。だがこれが最後の忠告だ。すぐに国家試験の手続きをとって免許を取りたまえ。そして日本医師連盟に加わり、今後は決められた料金を払うことだ」

「私は医師連盟で決めた料金なんてバカバカしくて相手にしませんね。私は自分の命をかけて患者を治してるんです。それで治れば1000万でも1億でも高くはないと思いますがね」「黙りたまえ。君は思い上がってる。青二才のくせに。もし君がこの忠告に従わないなら、二度と手術ができないようになるぞ」「まさか、この腕をもぎとると言うのではないでしょうね」「法律というものがある。無免許で医者をやる男は社会から抹殺できるのだぞ」

「ほっといてください。私はルールという奴が嫌いでしてね。枠にはめられた医者になりたくないのです。失礼」「やむを得ん」「警視庁のものです。あなたを医師法違反の容疑で逮捕します」

逮捕されたブラックジャックのところにピノコが面会にやってくる。「どうちてつかまったのよさ」「無免許だから捕まったんだよ」「らかや、言わないことじゃないのよさ。車の免許あんのにお医者の免許ないなんて、アッチョンプリケよのさ」

ブラックジャックにイタリアの億万長者ボッケリーノが面会に来る。「わしの孫を助けてください。どうか、命を助けてくだされ」「どういうことです」「本態性動脈血栓症とかいう病気なのです。いろいろ手をつくしたのですが、そこの病院もダメでした。孫のピエトロがジワリジワリ死んでいくのを手も足も出せんとは。先生、助けられるのはあなたしかいない。保釈金なぞ1億ドルでも積むぞ」

「日本にはほかにいい医者がいますよ」「わしゃどうしても先生をここから連れ出すぞ」しかし医師連盟の会長はボッケリーニの申し出を拒否する。「あの男は確実に犯罪者です。法を犯して勝手に医者の真似をしたのですから。あの男を許すと日本でモグリの医者をはびこらせることになります。絶対ダメです。我々医者のプライドにかけて」「どうだろう。日本医師連盟に1000万ドルを寄付しますがね」「我々は金は欲しくない。腐るほどありますからね」

今度は総理大臣に会うボッケリーニ。「ボッケリーニさん。今会長から電話がありましてね。ブラックジャックを出すなら日本中の医師がストライキを行なうそうです」「まさか、それを間に受けて」「日本中の医師がストをやるとなると。これは大変なことで」「あなたはそれでも総理大臣なのかね」「日本医師連盟は総理大臣より強いのですわ」ピエトロは別の医者によって手術されることになる。

会長は執刀する山川に電話する。「どうなんだね」「本態性のトロンホージスだ。血管のあちこちにイレウスが見える。こいつは治してもキリがないぞ」血が固まったまま血管の中を流れると狭いところを塞いでしまう。これをトロンボーゼという。生まれつき血が固まりやすいタチだと傷もないのにトロンボーゼがよくおきて、血のめぐりが止まりあちこちが腐って死んでしまうのだ。

「血液凝固防止剤を使ってもダメなのか。なんとか治してくれ。メンツの問題なのだ」ピエトロは危篤状態になる。怒り狂うボッケリーニ。「だからブラックジャックじゃないとダメだと言ったのだ。さあ助けろ。助けないとただではおかんぞ」ピエトロは死ぬ。会長の息子が拳銃で撃たれる。飛行機の中でそのことを聞くボッケリーニ。

「あの思い上がった会長め。思い知ったじゃろう。このボッケリーニがマフィアのゴッドファーザーということをなめてかかった報いじゃ」息子の容態を心配する会長。「どうなんだ。せがれは」「胸に三発。そのうち一発は心臓で止まっています。仮死状態です」「すぐ手術だ。摘出だ。せがれを救ってくれる人はおらんのか」会長はブラックジャックに会いに行く。「ここに医師免許がある。あなたのために取ったのだ。すぐ手術してくれ」免許状を破り捨てるブラックジャック。「頼む。わしの息子を救ってくだされ」