作:工藤かずや 画:浦沢直樹「パイナップルARMY(17)」 | ロロモ文庫

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フォルショー通りの決闘

パリで婦人会の護身術講習をする豪士。「誰だってスキをつかれりゃ、あっさりやられてしまう。しかし護身術がまったく役に立たないわけじゃない。現にそれで身を守った婦人警官はいくらでもいる」「ねえ、豪士先生。そのポリ、いや婦人警官の護身術というヤツを教えてくれよ」「よし、ソフィー、あんたは模範演技の相手だ」「男なんて、キンタ、あっ、違った、大事なとこをやっつければ簡単さ」

襲い掛かるソフィーを投げ飛ばす豪士。「これは街の道場なんかで教えている柔術とはまったく違う。練習用の型などない。実戦本位の体術だ。一歩間違えれば、相手に致命傷を負わせることになる。では、そのコツをこれから教える」「……」

ホテルで新聞を読む豪士。「現れる頃だと思ってたよ、バレンヌ。<フォルショー通りの娼婦殺人。三人目の犠牲者>この記事の件だろ?」「あたしたちが娼婦だって知ってたのかい」「昨日の婦人会の中に、夜のフォルショー通りで見かけた顔が何人はいたんでね」「なら、話は早い。助けておくれよ。あたしたち、フォルショー通りを縄張りにしている女たちが狙われてるんだ」「昨日教えたようにすれば、変質者の一人や二人、退治できるぜ」「それですむなら、わざわざ頼みに来ないわ」「……」「ここじゃ話ができない。フォルショー通りに来て」

一週間前の夜更けにフォルショー通りで男が殺されたと話すバレンヌ。「その現場を偶然この娘たちが見ちまったのさ。他に三人いたが、その娘たちは殺られちまった。そして犯人はDST(国土監視局)のクリュネー局長とその部下たち」「DSTのクリュネー?フランス政府の役人が殺しを?DSTと言えば。RG(公安警察)と並んで、強力な警察セクションだ。その局長が一体何を」

「殺された男はDGSE(対外保安部)の副長シムノンよ、シムノンはひと月に一度はここに来て、娼婦相手に変態プレーをやってた男さ。こっちは殺されてせいせいしている。でも問題はそんなことじゃない。目撃した女の口止めのために、クリュネーたちがフォルショーの女を変質者を装い、無差別に殺し歩いていることさ」「……」

「あたしらが知りたいのは、DSTの連中をやっつける方法だよ」「バカな。DSTと戦おうってのか。DSTはDGSEとともに国際的にも恐れられてる機関なんだぞ。FBI、CIAと並ぶプロの集団に、あんたら何10人かかったって、とてもかないっこない」「じゃあ、あたしら、黙って殺されろって言うのかよ」「……」

あたしはパリでも指折りの娼婦だと言うバレンヌ。「このバレンヌ様の得意客にはパリでも三本の指に入る大金持ちだっているんだ。敵が殺しのプロだとしたら、こっちの頼みは金さ。金はいくらでもある。必要なら大砲だって機関銃だって最新式ミサイルだって買ってやるさ」「……」

「あ、バレンヌ。サンドニのマリーよ」「これはこれは、お揃いで。夜逃げの相談かい」「マリー、あんたの方でもいずれ殺される女が出るよ。今のうちに組まないかい?」「冗談じゃないよ。こっちはいいとばっちりさ。殺しの犯人が捕まるまで、ホテルで客を取ることにしてるんだ。じゃあね」

怒鳴るソフィー。「へっ、臆病風に吹かれやがって」バレンヌに聞く豪士。「サンドニ通りの娼婦か?」「ああ、フォルショーのあたしらより格は落ちるけど、あのマリーは昔、一緒に仕事した仲間だったのさ」「そうか。最低10万フランと銃器の扱いに一週間の猛特訓が必要だぞ」「やってくれるのかい、豪士」「昔の仲間に見放されたんじゃ、黙って捨てておけないだろう」「ありがとう。恩に着るよ」「三日後の朝4時、ブローニュの森に集合」「朝4時、とても無理だよ」「ソフィー。豪士はこっちの無理を聞いてくれた。今度はこっちが無理を聞く番だ」

電話してマシンガンを手配する豪士。「あと、種類は問わんから催涙銃と最新式の防毒マスク。それに最軽量の防弾チョッキを頼む。全部を三日後の夜明けに欲しい」電話に出る豪士。「ああ、俺は豪士だが、あんた誰だ。え、サンドニのマリー?」

DST本部で話し合うクリュネーたち。「やはりあの場所で殺ったのはまずかったのでしょうか、局長」「我々の行為は間違いなかった。あの娼婦どもに見られたことだけが誤算だった。DGSEのシムノンは熱烈な反ユダヤ主義者だけでなく、ネオナチの党員だった。そんな事実がマスコミにでも流れてみたまえ、たとえ娼婦が何人死のうと、我々はシムノンを処理せねばならなかったのだ」

ブローニュの森で射撃練習をする娼婦たち。「豪士、あたしのガン、弾が出ないよ」「頭を吹き飛ばされたいのか。お前にはこいつの方がよさそうだ」「なにこれ?」「催涙銃だ。使い方はあとで教える。よし、全員集まれ。訓練は一週間続けるが、襲う方は一週間待ってくれん。従って作戦だけは今夜からでも展開できるように指示しておく。こいつは超音波を発する発信機だ。地面に落とすだけで発信する。これを各自携帯するように。さて、具体的な作戦だが」

DSTの局員に襲われ、バッグを落とすイサドラ。「合図だ」「モンマルトルの丘の方角よ」ベッドから出るバレンヌに驚く客。「なんだ、防弾チョッキなんか着て。新手のSMか」「悪いね、明日たっぷり相手してやっから」局員を取り囲むバレンヌたち。「イサドラを離しな」「なんだ、お前らは」マシンガンをぶっぱなされて驚いて逃げる局員。「ざまあみろ。金輪際、あたしたちを狙おうなんて気を起こすんじゃないよ」何だとと怒鳴るクリュネー。「娼婦たちが銃を持って反撃してきた?部下を全員集めろ。フォルショー通りだ」

マシンガンをぶっ放しては逃げるバレンヌたち。「撃ったら退却よ」「くそう」「はははは。この路地はあたしたちのホームグラウンドなんだからね」「何をもたもたやっとるんだ。まわりこめ。挟み撃ちだ」「豪士の言ったとおりだ。ヤツら、相当熱くなってきた」呻くクリュネー。「これは素人の戦い方じゃない。誰だ。女たちを訓練したヤツは誰だ」

「うまく広場へおびき寄せたわ」「あとはソフィーの催涙弾で仕上げよ」「あ。ソフィーがいない」「信じられない。こんな時にあの娘ったらヒマなもんだら、客でもとっちまったんじゃあ」「豪士、助けて。こんな時のこと、教えてもらわなかったよ」

そこまでかと笑うクリュネー。「こんな場所に逃げ込むとは。しょせんアマチュアだな」待ちなとホテルの窓を開けて怒鳴るマリー。「バレンヌたちに手を出したら、全員生きてこの広場から出られないよ。とっとと引き上げないなら、このサンドニのマリー様が許さないよ」「……」マシンガンをぶっぱなすマリーたち。「消えな」「ははは、ざまあみろ」「あたしらをなめんじゃないよ」「もう二度とフォルショーに来るなじゃないよ。あたしたちは何度でもやってやるから」

シャルルドゴール空港で<DST局長クリュネー逮捕。シムノン暗殺の疑惑が>と言う新聞記事を読む豪士とバレンヌ。「へへへ」「じゃあな」「豪士、またパリへ来たらフォルショーへ寄りな。みんなで相手してやっから」「体がもたねえよ」