福本伸行「賭博黙示録カイジ・常勝皇帝編(1)」 | ロロモ文庫

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黒幕

カイジの前に醜い老人が姿を現す。(この男が黒幕?)「やってみるかな。Eカード」「えっ」「若者には大きな可能性がある。早稲田の創立者・大隈重信はそれを「開かざる扉」と表現し、若者を賛美したが、わしからすれば愚かしい。扉になんの意味がある。問題はその中身だ。最近はあけてみたら、ガラクタという若者ばかり。そんな中で君はましなようだ。あの橋を渡り切った。ひょっとすると、選ばれた男かもしれぬ。ぜひとも計りたい。お前の心の容量を」「……」

「その計りとして、最も効果的な方法が、Eカード。相手との駆け引きが勝敗を決めるギャンブル。目の前の人間との裏のかきあいなのだ。もし、このEカードで、お前がわしの推薦した刺客を上回ることになれば、お前は異才だ。その場合は必然的に2千万はおろか、5千万という金も得ているだろう。無論それ相応にハイリスクを潜ってのこと。ただそんなリスクはこりごりと言うのなら、ノーリスクで50万くらい拾うことができる。そのように設定した。ちゃんと逃げ道も用意してある。」「え」

「これは、完走したのに金を得られない君に対する慈悲。サービスのような延長戦だ。どうする。もしやるというなら、案内しよう。プレイルームへ」わけがわからないまま、Eカードをやることにするカイジ。(このままでは帰れない。この俺と石田さんのチケット。命を賭けて得たこの2千万も紙屑。冗談じゃない。このままでは引き下がれない。なんとしても最低2千万を得る)

 

皇帝

プレイルームに行くカイジ。廊下にはゼッケンをつけた男たちが芋虫のように転がっていた。「これは」「ククク。一本目の橋で墜落した者たちだ。緊急を要する者は病院に送ったが、命に別状のないものは、ゲスト料を払って残っていただいた」「なぜ?」「戒めのためだ。わしはこれが現実だと常に戒めている。この地上は苦しみのたうつ怨嗟の声に満ちている。十人百人のうめきが一人の豊かな生活を支えている」

「ところが世の中にはそれではいかん、金を送れ、という輩がいる。わしは生涯人を助けぬ、と決めておる。無論金はある。なぜだかわかるか」「なぜって」「ここが肝心」老人は杖で傷ついている男を痛めつける。「ぐああああ」「やめろ」「見ての通りだ」「え」「折れた足をいじられると、彼は痛いが、わしは痛まない」「え」「他人がどう苦しもうと、全く問題ない。唯一問題なのは自分の幸福だけ。それにこの男はもっとしてほしかったのに違いなかったのだ」「え」

折れた男に金を渡す老人。「う」「わしがサービスしたやった者にはボーナスを出すと事前に伝えてある。人は目の前のわずかな金のために相当なことに耐えられるのだ。その特性を金持ちは利用し、生涯かしずかれ安楽に暮らす。王は一人で王になれるわけではない。金などいらぬ、と貧しき者が結束したら、王もまた消えるのだ」プレイルームにはいるカイジ。Eカードについて説明する利根川。「簡単だ。使うカードは10枚。その内訳は、この三種。市民、皇帝、そして奴隷」

 

設定

「市民、皇帝、奴隷。使うカードはこの三種。そして10枚のうち8枚が市民。皇帝と奴隷は1枚ずつしかない。Eカードはこの10枚を互いに5枚ずつ分けて戦う。4枚の市民と1枚の皇帝の皇帝側と、4枚の市民と1枚の奴隷の奴隷側に分かれる。このどちらかの陣営を3回ずつ交互に受け持ち戦う。その戦い方は簡単。相手に見えないように自陣のカードを持ち、一つのカードを選び、テーブルに図案が見えないように置く。それを見て、そちら側もカードを一枚選び、同じように置く。そしてカードを開く。これだけだ」

「カードがぶつかった場合の勝敗は基本的に図案で連想される強さで考えていい。つまり皇帝が一番強い。次が市民。残った一枚の奴隷は最低のカードだが、皇帝を撃つのだ。整理しよう。皇帝は市民より強く、市民は奴隷より強い。そして奴隷は皇帝を撃つ。市民と市民は引き分けとなる。どのカードでも絶対ではない。皇帝側も奴隷側も勝機がある。皇帝側のカードを持ったものは、いかに皇帝を通すかが鍵になる。奴隷側から見れば、いつ皇帝を出すか読めばいい」「……」

「単純さ。最も単純な形での心理戦。やればわかるが、これがなかなか奥深い。この社会はこの心理戦が複雑に錯綜している。しかし実際のところはこう言い切れる。人間は二つのうち、どちらかを常に口にしているのだ、と。偽りか、真実か、を。このEカードはそんな世の中の急所を見極める練習台。そういうゲームだ」「……」「カイジ。お前は強運だ。ビッグチャンスであるEカードに巡り合えたのだからな。このEカードは、お前があるものを失うリスクを背負えば、1億だって得られるように設定してある」

「1億?」「そうだ。夢みたいな大金だろう。ククク」「リスクってなんだよ」「命さえ賭けたカイジくんからすれば、微々たるリスク。器官さ。つまり、目か耳」

 

装置

そして針のついた装置が運ばれてくる。「本来、このEカードは大金を賭けて戦うものだ。しかし今のカイジくんは無一文。だから目か耳を賭けてもらうのだが、負けたらスパッと耳を削ぐ、目を潰すというわけじゃない。段階を踏む」「……」「猶予がある。この道具の仕組みは簡単だ。それぞれのリモコンを操作すると眼球用、鼓膜用ともに装置の中心にある針がのびる。フフ。金をもたぬカイジくんはこれを装着してもらう。目、耳どちらを選んでもらっても結構だ」

「どちらも、この針が3センチ伸びた時に、その器官を破壊するように設定してある。さきほどから言っている猶予とはこの3センチのこと。つまりカイジくんは、この3センチを賭ける。3センチが1ミリ刻みで賭けることができ、もし1ミリ賭けて勝てば、我々が10万支払う。しかし負ければ針は1ミリ進む。1センチ賭ければ、勝ったときは100万得られるが、負ければ針は1センチ進む」

「今回はそういうギャンブル。十度負けても二十度負けても構わぬといえる。張る単位は最低1ミリだ。1ミリずつ張れば、仮に20連敗しても針は2センチしか進まず、器官の破壊に届かない。それでも無制限に限りなくやれば、いつか針は器官に届き、光か音を失うかもしれないが、今回はそんなことにならない。つまり12試合で終わりだ」「え」「12試合で区切る。仮に2ミリずつ張って、全敗しても24ミリ。破壊には届かない。つまりカイジくんの安全は最初から保証されている」「……」

「ククク。疑い深い顔をするな。もう一つ重要なことを話そう。今1ミリ賭けて勝ったら10万払うと言ったが、これはあくまで皇帝側のカードを持った時の話で、奴隷側で勝った時はそんなものでない。5倍。つまり1ミリにつき50万を支払う」「え」

「理由は簡単。勝ちがたいからだ。このEカードは皇帝をあるいは奴隷をいつ出すかが、勝敗を分ける鍵。皇帝サイドにたって考えれば、初戦皇帝を出して勝つ確率は80%。2戦目も75%。3戦目も67%。4戦目でも50%、と、選択の許される4戦まで、常に50%以上。だから勝ちがたい奴隷側のカードで勝った場合はその分戻しを多くした。5倍だ。もし1センチ張って勝てば、500万」