手塚治虫短編集(25) | ロロモ文庫

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刑事もどき 鹿の角

日本のピカソと称される画家の鬼頭が青酸カリ中毒で死ぬ。怪しい指紋もなく自殺と推定された。「最近は15億円にのぼる脱税が指摘されて手ひどいショックを受けていた」しかし鬼頭は他殺であった。「鬼頭のはめていた入歯に細工がしてあった。大臼歯に空洞があり、そこから青酸カリの粉末が発見されたのだ。捜査でこの入歯は鬼頭が愛用している入歯とそっくりに作られた別物であった」

「諸君も知っているとおり、鬼頭は各所に女を囲っていた。その数は12名」「タフだな」「鬼頭の身辺にはほかに現在通い弟子あった真名子隆がいる。洗うのはこのあたりだな」刑事の団袋は同居人のペテン師の助五郎にグチをこぼす。「12人の女か。女か口が堅くていけねえ」「旦那。その女どもを口説くつもりで根気よくかよいなよ」「俺にプレイボーイの真似をさせるつもりか」

鬼頭の愛人のクラブのママを口説く団袋は、痴漢と間違われる。「女を喜ばせるのは情ですぜ。旦那」ねっちり二番目の愛人を口説く団袋。しかし先客がいた。「旦那もおめでたいね。それがあの弟子の真名子って若僧だ」「あいつは師匠の女とできていたんですかい。三番目の女にとりかかりましょう。小唄の師匠でずぜ」団袋は鬼頭が鹿の角、とつぶやいていたことを聞き出す。

4番目の女の空手師範からも、鹿の角のことを聞き出す団袋。「どういう意味かわかるか、助五郎」「鹿の角は粉末が強精剤になります。中国では古くから催淫薬として珍重されているんだ。鬼頭のオヤジはこいつを入歯の間に入れ、女とチンタラしている間に自然に口の中にこぼれるようにしたんだな」助五郎は団袋に変わり、鬼頭の愛人のお相手をする。「七番目の女が吐きましたぜ。鹿の角は強精剤のことじゃありません。どっか本物の鹿の角があるんです」

助五郎は真名子から10日に一度、鬼頭が山荘で絵を描きに言っていた事を聞き出す。鬼頭の山荘に急ぐ団袋と助五郎。「ココへ来る日がちょっとおかしいでずぜ。一月にきっちり三回でしかも8の日の前後だ。絵を書く目的じゃなく別の目的できたのでは」山荘の中には五年前に鬼頭がアメリカで買った鹿の剥製があった。鹿の角は空洞になり中には薬品があった。「青酸カリですかい」「違うな。ペイだ」そこへ真名子がやってくる。「畜生。死ね」団袋はベンジンを投げつけて真名子を火だるまにする。

事件の概要を助五郎に説明する団袋。「鬼頭は膨大な脱税額を穴埋めするためにペイの密輸に手を出した。あの山荘が取引場所で弟子の真名子が連絡係だった。ところが鬼頭の女癖は弟子の真名子の女に及んでしまった。真名子は鬼頭への恨みとヤクの独り占めを目的に鬼頭を殺すことにしたんだ」「旦那は名刑事だね。あっしは旦那に惚れこんだよ」「おい。そんな目で俺を見るな。お前、コップにあった鹿の角飲んだな」