緊急指令10-4-10-10 第12話 | ロロモ文庫

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天才ゴリラの初恋

三郎に無線連絡する俊夫。「え。それじゃメロンだけ取られたって言うのかい?」「そうなんだ。レジに入っていたお金はそのままだし、他の果物には全然手をつけてないんだよ」「へえ、変わった泥棒だな」「今、おまわりさんが調べてるけど、気乗りしない様子だよ」「無理もないよ。今時、メロン泥棒じゃな」「またなんかあったら連絡するよ」「了解」

くだらねえなと嘆く一平。「近頃ろくな事件がないな。たまに飛び込んでくりゃメロン泥棒だってさ」ただのメロン泥棒じゃないかもしれないと呟く哲夫。「同じ事件が7,8回も続いたとなると、何かあると疑って当然だろう」喜ぶナミ。「こりゃ面白くなってきたわ」

雑貨屋に何か変わったことはなかったかと聞く三郎。「そう言えば店に入った時に動物のニオイがしましたね」「動物?」「犯人は犬でも連れていたんですかね」八百屋に何か変わったことはなかったかと聞くナミ。「シャッターのことなんですが、シャッターを壊して中に入ったですが、錠がかかってるのを無理矢理引きちぎったんですよ、どうやって壊したのかねえ」果物屋に毛が落ちていたと言う一平。「調べたところ、ゴリラの毛とわかりましたよ」

これでわかったと呟く哲夫。「ゴリラなら、シャッターの鍵をねじ切っても不思議はない」「ええ」「被害を受けた店は円形に並んでいる。その中心にあるのは自然動物園だ。これだけデータがそろえばゴリラの犯行と見て、間違いない」「でもゴリラはどうやって檻から脱け出したのかしら。檻が壊されたらすぐわかってしまうわ」「ナミ。動物園でノイローゼにかかったチンパンジーにテレビを見せるという話を聞いたことがあるだろう」「ええ」「この動物園に面白いゴリラがいるんだよ」

このゴリラはニュース番組に興味を示すと哲夫に言う園長。「チャンネルも自分で選ぶし、明らかに自分で番組を選んでます」テレビを消して寝っ転がるゴリラ。「時々思うんですよ。人間並みの頭脳を持ってるんじゃないかと」「ゴリラと話していいですか」「え」「いや、ちょっとした思い付きなんですが」「そりゃ、こっちの感情を読み取る知力は持ってますよ。でも言葉を理解するとは」

ゴリラに話しかける哲夫。「君が店を荒らしてメロンを取っていることはもうとっくにわかってるんだ」「……」「一体、何のためにあんなことをやるんだ」「……」「君が話してくれないなら、僕の方から言ってやろう。君は人間並みの頭脳を持っている。しかし君がどんなに悔しがっても、人間と対等に扱ってくれない。これはどうしてだ。それは君がごりらだからだ。君は表に出て鏡を見たことがあるだろう。その顔が人間の仲間に入れてくれないのだ。その腹いせにあんなことをするのだ」園長に檻の鍵をなくしたことはないかと聞く哲夫。「ええ、どこに行ったかわからないんで作り直しました」「そうですか」

夜中になって、鍵を使って檻を抜け出すゴリラ。哲夫に無線連絡する一平。「やっぱり、ゴリラがでてきました」「一平。方角はどちらだ」「うわあ、やめろ、やめろ」「どうした、一平」一平を襲って姿をくらまし、果物屋のシャッターを開けるゴリラ。「誰かいるの」「……」「誰なの。あっ」きゃあと叫ぶ光子を抱えて、果物屋から飛び出すゴリラ。

哲夫に無線連絡する一平。「ゴリラの行方がわかりました」「本当か」「光子ちゃんを抱えて牛乳を盗んで、町で一番高い木の上に登ったそうです」「了解」威嚇射撃をしろと命令する班長。「うむ。まったく動かんな」「催涙弾でも打ち込んだほうがいいんじゃないですか」「うむ」班長に待ってくださいと言う毛利。「なんだね、君は」「私にやらせてくれませんか」「君が撃つと言うのか」「いえ。説得するんです」「なんだって。相手はゴリラだよ。人間じゃないんだ」「人間の言葉がわかるんです」「まさか」「私は信じてます。やらせてください」「まあ、いいだろう」

ゴリラに向かって語り掛ける毛利。「ゴリラ君。今すぐ光子ちゃんを返してもらいたい。君には私の言葉が理解できることを信じている。どうか返してもらいたい。そうすれば安全に君を動物園に返してあげよう。私は私の命を賭けて、君の安全を約束する」木から降りて、光子を放し、再び木を登るゴリラ。「どうした。約束したぞ。君は動物園に戻るんだ。信じてくれ」木のてっぺんから飛び降りるゴリラ。「あっ」ゴリラの亡骸にすがって泣く光子。「ゴリラちゃん、死なないで。どうしてみんなでいじめたのよ。ゴリラちゃん、とっても優しかったのに。光子に牛乳飲ませてくれたのに」

しみじみと語る毛利。「彼は動物園に帰ってもどうにもならないことを知っていたんだよ」「でも」「頭脳がどんなに優れていても、形がゴリラでは人間の世界に受け入れてもらえない。檻の中は彼にとって生きた地獄だったに違いない」「死を選ぶより方法はなかったわけですね」「そうだな」「……」「さあ、行こうか」「はい」