第四章 夏と合宿とロックフェス 2 | きままに小説書いてるブログ

きままに小説書いてるブログ

She gave rock n roll to you という小説を書いています。
どん底な少年がロックとヒロインで救われていく話です。

リーダーのまこっさんが乗り気なせいで何となくみんなも巻き込む形で、海で遊ぶことになった。
いやー。しかし、海はいーね。
焼けた砂浜。まぶしい日差し。爽やかな潮風。
人で混んでいるのが若干気になるけど、そんなのは問題にならないくらい楽しい。
「わっふーっ」
「ライダーキッーク」
ぼくとジンは、岩場から順番に高跳び込みをして遊んでいる。ジンは毎回特撮ヒーローのポーズで飛び込む。それをかおちゃんがにこにこ見ている。
砂浜では、まこっさんが気絶させたブンサンを生き埋めにして頭だけ出した状態にして遊んでいる。
首から下には、砂で作ったグラマラスな美女の体で、股間には砂で作った山が変にモッコリという、ひどく卑猥で悪趣味なオブジェが出来上がっている。顔がイケメンなせいで、よけいに変だ。
ブンサンのダンディーオーラは夏の変なテンションのせいで霧散した。
まこっさんは爆笑しながら記念撮影。あ……悪魔だ。
へーぞーさんは、ギャルに逆ナンされておろおろしている。彼女がいるとか言ってるけど信じてもらえないらしい。まあ実際信じろって方が無理。かおちゃんの助け船でうまく逃げ出せたみたいだ。
まこっさんがいきなり怒鳴った。
「テルくーんティッシュかタオル持って来てー!」
見ると、座り込んだまこっさんの小さめな胸だとか、お腹だとか、足だとか、とにかくどこもかしこも焼きそばがメチャメチャにぶちまけられている。
急いで食べてこぼしちゃったのかな。
「どうした、そんなに見て。焼きそば食べたいのか?食べる?じかで」
「焼きそばなんか食べませんよ!!」
「じゃあまさか、あたしのほうか!焼きそばはいーけど、体はちょっと……まだ心の準備が……」
「どっちもちがいます!」
「んもう!うるさいうるさい!冗談いーからはやくもってこいっ!」
「はいーっ」
冗談はあなたが言ったんでしょう!
灼熱の日差しの中、僕は使いっぱしりに命を燃やすのだった。




夕方になると、別荘ではバーベキューが始まった。
iPodを接続したミニコンポからは甲斐バンドやムーンライダース、子供ばんどが流れている。ブンサンの趣味らしい。懐メロでバーベキューだなんてダサいなと思ったけど、落ち着いた雰囲気で意外と楽しかった。
新鮮な海の幸や、肉や野菜を堪能する。
ふと、ジンが話しかけてきた。
「テルくん、後でちょっと、相談乗ってくれる?」
元気なさげに微笑みを浮かべている。珍しい。ホントに辛そうだ。
「わかった。何でも聞くよ」
「わるいね。テルくんくらいにしか頼めないんだよね」
「力になれないかもだけど」
「まあ、気分悪くなってもあれだし、バーベキューの後にしようか。俺も話まとめたいし」
「そっか。それもそうだ」
まあ、ジンなりに色々考えてるんだろ。
「まとまったら話してよ」
「ほんと悪いね」
今は彼の言うとおり、御馳走を堪能するとしよう。
僕は気を取り直して肉を焼いた。
いやあ、ブンサンの持ち込んだ食材はホントにウマイ。
しかし、まこっさんの妨害は困る。常に僕のそばにいて僕の食べようとする食材を横からかっさらって楽しそうに食べている。
暇人め!
まあ、でもまこっさんが楽しそうにしていると、こっちまで楽しくなっちゃうんだな、これが。


後片付けの皿洗いを二人でやっていると、ジンが相談してきた。
「テルくんってさあ、かおちゃんのこと好き?」
「へ?いきなりだな」
「俺さあ、好きなんだ。いてもたってもいられないくらい好きなんだ」
ジンがガチな表情してる。
「なんだ、そうゆう事か。」
「どっちなんだよっ」
「がっつくなよ。僕は好きじゃないよ」
「そっか。よかったぁ」
本気でホッとした表情している。しかし何でまた、こんなこと聞いてきたんだろう。
「でも何でまたそんなことを?」
「いや、テルくんもすきだったら、三角関係でやばいじゃんか!きまじぃーよ」
「バンド内でそれはヤバイかもなあ」
「だしょー?そんでさ、たのみあるんだけどさ」
「ふんふん」
「かおちゃんの好きな男性のタイプ聞いてきてよ。たのむっ」
恋の悩みか。これは聞いてやるしかないなっ。楽しそうだし。それに、うまくいったら、まこっさんのことも相談に乗ってもらおう。
「わかった!ジンの頼みなら聞いちゃるわい!」
ぼくは、快諾した。
「おぉさっすがテルの旦那!それでこそ俺の兄者だ!」
「まっかせなさい!」
しかし、実際問題どう切り出すかだなあ。
悩みどころだ。いきなり聞いたら、僕がかおちゃんのこと好きみたいじゃないか。
少し悩んでたら、かおちゃんの声がした。
「誰かこっち手伝ってー?」
「ちょうどいい!テルくん!ゴー!」
よし、行くかっ!
行ってみると、物置から布団を運び入れているかおちゃんがいた。
「あ、テルくん。ちょうどよかった。これ終わったら、相談のってくれない?」
な、なんだ?デジャブだなこれ。また面倒なことになりそうだなあ。
僕は一人冷や汗をかいた。