いよいよ、ライブハウスでのライブが近い。
今日は大事な練習だ。
僕の気合いもばっちりだ。大きく深呼吸。シンセもマイクもばっちりだ。
「今日はライブでやる曲を一回MCありで流してみよう」
まこっさんが言った。
緊張している僕、楽しそうな顔してるジン、微笑んでいるかおちゃん、そして、寝ているへーぞーさん。
「おいっ!へーぞーいい加減にしてくれっ」
「あぁなんだ松本……。怒鳴ると美容に悪いぞ」
「だれがこうさせたと思ってやがる!」
「そんなときはな……ゴマ豆腐と絹豆腐とゴマ豆腐と絹豆腐を、交互に交互に食べてだな……」
「あたしは卵豆腐が一番好きなんだっ……いや、どうでもいーよ豆腐なんか!」
「しかし、沖縄の豆腐は死ぬほどうまいんだ」
「沖縄のやつって木綿だっけ?いや、うん豆腐はもういーから。ガチでそろそろ脳みそも起きてくれないかな」
「……俺は脳みそまで豆腐でできてるんだ」
どやぁー。
そしてこのドヤ顔である。
「あーバカだから脳ミソにシワが一個もないって事?」
「……」
まこっさんの一言にへーぞーさんが言い負かされた。
やっぱりへーぞーさん天然だわ。
ライブの曲順は、
Dr.stain、Helloween
覇王樹 オリジナル(作詞作曲へーぞーさん サボテンと読む)
映写機回せ、オリジナル(作詞作曲へーぞーさん)
リボルバージャンキー、thee michelle gun elephant
レッドゾーン、オリジナル(作詞かおちゃん作曲まこっさん)
ライジングウォリアー、オリジナル(作詞作曲まこっさん)
駆け抜けて性春、銀杏boyz
漂流教室、銀杏boyz
tell me、hide
覇王樹、レッドゾーン、ライジングウォリアーは、最近できた新曲だ。
覇王樹は、ヘヴィメタル。シンセである僕の出番だ。ツインギターにシンセがからんで、どんどん加速していく。
レッドゾーンは、英語。早口で捲し立てるようなパンクだ。
ライジングウォリアーは、ヘヴィメタル。特攻隊の歌だ。筋肉少女帯みたいな感じだ。まこっさんの鬼気迫るボーカルがやばい。
全員、対バンのやつらに負けないぞー、キメキメにいくぜーって張り切るけど、僕は緊張している。
なんてったって駆け抜けて性春、漂流教室は僕がボーカル担当だからだ。
き、緊張するー。
「テルくん、平気平気。しんこきゅー」
かおちゃんが後ろから声をかけてくれる。
ジンの目がギラギラしている。
ブー……ンンンン……
マーシャルアンプも鼓動を始める。
ついにはじまる。
僕の緊張はもうピークだ。
ああ……なんか、
「……!」
なんかなんか……
「お……!……ル!」
まぶしいやあ……
「テル!おいテル!」
「テル!おいテル!」
はっ
「ま、まこっさん」
「出番だっボケっとすんな」
そうだ今日は、高司劇場でのライブの日だ。
いつの間にか、リハーサルの事を思い出しながら、ボーッとしていた。
対バンとすれ違いに舞台に出ねばならないんだ。
対バンは、同年代の青春パンク野郎だ。
負けたくない。
ドグラマグラは得意なジャンルは無い。何でもチャレンジするのが、うちらのバンドの音楽性だ。
さあ、出番だ。
扉を開けると、歓声と光が僕らを包み込んだ。