tell me、テル ME 5 | きままに小説書いてるブログ

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She gave rock n roll to you という小説を書いています。
どん底な少年がロックとヒロインで救われていく話です。

雨だ。
「あーめーだー」
「わかってますよまこっさん」
「あーあーあー」
練習はもう終わったのだが、まこっさんに言われて、僕とまこっさんは居残り練習だ。
理由は、僕が緊張しいなせいで、演奏しながらコーラスができないからだ。
「テルくんて、いい声してるよね」
「そうですか?」
「うん、ベッドでひいひい泣かせたいね」
「いや、ホント勘弁してください……」
「うぶなやろーだなぁ」
「セクハラです……」
まこっさんは、スコアを見ながら、僕の自主練に付き合ってくれている。
ペラペラめくりながら、こっちを見据えて言った。
「いや、いい声なのはホントさ」
「そうですか?」
「うん。てことで、テルくんボーカルやってみようか」
「ええ?」
「ボーカルもコーラスも恥ずかしさはにたようなもんだ。」
そーいうもんか?
「あたしが、歌ってほしいのはこれ」
ちょいちょいっと手招きしながら、彼女が言う。来いってことらしい。
隣にいくと、イヤホンを片方差し出された。
片耳ずつ聞くような形だ。
まこっさんのピンクのかみが近いのに、ドキドキしながら、耳をすます。
なんか、まこっさんの髪の毛、シャンプーの匂いだ。
ドキドキがばれないか心配だ。



あなたがこの世界に
一緒に生きてくれるのなら
死んでも構わない
あなたの あなたのために
あなたがこの世界に
一緒に生きてくれるのなら
月まで届くよな
翼で飛んで行けるのでしょう


「銀杏boyzですか」
「駆け抜けて性春」
これはまた難しいやつを。
「でも僕、恋の歌なんか歌えないですよ」
「なんでよ?」
「そんな、」
「今恋してないからってか?」
「はい……」
「歌えるようになるさ」
「はい?」
「歌えるようにしてやろうってんだよ」
にやり、と笑うと、僕の手を握り、僕を引っ張って立たせた。
「ど、どこいくんですかっ」
「いーとこいーとこ」
「ベッドとかヤですよ」
「そんなわけねーだろこの変態」
まこっさんの顔が真っ赤だ。ウブなのはこのひとも一緒だ。さっきの仕返しができたから、まあいいか。
「これもっとけっ」
タオルを掴まされた。
そして、そのまま僕らはずんずん廊下を進んでいった。


夜の学校。
下駄箱の前。
夜だから、もちろん誰もいない。
「で、何でまこっさんは濡れてるんですか」
まこっさんは、びっしょりだった。
「雰囲気でるだろ」
まこっさんは雨にうたれながら、外にたたずんでいる。
ライブではいつも立たせている髪の毛も、今はぺしゃんこだ。
制服が濡れて引っ付いているので、目のやり場に困る。
でも、かおちゃんはおっきいのに何でまこっさんは、なんというか、慎ましいんだろう。
「なんか言ったか!?」
「い、いいえなんにも!」
恐ろしい、心が読めるのか、あの人は。
てか、いつまで立ってるんだ。
「風邪引いちゃいますよ」
「平気平気。テルくんもこいよ。きもちいぞお。かわいがってやるから」
「やですよ」
「たのしいぞぉ……へっくち」
「ほらやっぱり」
僕は、外に出ると、急いでまこっさんを中に引っ張り混んだ。
「あーもう、へっくち。まだ立ってるんだぁー」
校舎に引っ張りこまれながらも、ぶつぶつ言っている。
あんまりにもびしょびしょなんで、渡されたタオルで頭と顔を拭いてやった。
頭は乾いたかな。
ほっぺたをごしごししていると、まこっさんが僕の手をつかんで止めた。
僕の右手は、ほっぺたと、彼女の左手に挟まれた。
そのまま、彼女の右手が僕の右手首に絡み付く。
鼻息がかかるくらい密着してくる。
潤んだ瞳で見つめてくる。
「え……」
何やってんだこの人。
当たってる当たってる。
ちっさいけど、有ることは有るんだから、そんなに押し付けたら、意識しちゃうじゃないか!
まこっさんは、にっこり微笑みながら、もっと身をのりだし、囁くように歌い出した。

「私は幻なの あなたの夢の中にいるの
触れれば消えてしまうの
それでも私を抱き締めてほしいの」
僕は、思わず歌い出していた
「「強く、強く、強く……」」

「あなたがこの世界に 一緒に生きてくれるなら
死んでも構わない
あなたの あなたのために」

「おまえ、やっぱり、いい声だよ。」
僕の顔の五センチ前で彼女は、くしゃっと笑った。
コツン
額と額が触れあう。
そのまま、僕は押し倒されてしまった。
「ま、まこっさん」
なんだか、まこっさんの様子がおかしい。
いやに息があらい。
「!?まこっさんすごい熱じゃないですか!いつからですか!」
「練習始まるくらいから……」
どうりで、少しエッチだったわけだ。もうろうとしてたんだな。
「無、無理しないでくださいよ!帰りますよっ」
「歩けないぃ」
「まじっすか!」


そして、今ぼくはまこっさんをおんぶして下校している。
タクシーを呼ぶ金は二人にはなかった。しかし、恥ずかしいなこれは。
傘をまこっさんに持ってもらっているが、危なっかしい。まこっさんが濡れないようにしなきゃ。
そうこうしてるうちについた。
松本家のチャイムを押しながら、まこっさんに声をかける。
「まこっさん、つきましたよ」
「ああ、今日はありがとな」
「なに言ってんすか。お互い様です。」
「お姉ちゃん!テルくんありがとね。ほんとに何てお礼したらいいのか。」
事前に電話しといたかおちゃんがでてきて、まこっさんを引き取る。
ドアがしまる間際、まこっさんがいった。
「テルくんは、恋してるか?」
「え?」
「恋してたら、叶うぞ。恋の歌はそんな力がある。へっくち。」
「もぉ、お姉ちゃんはねなさい!」

バタン

ドアがしまっても、僕はたたずんでいた。
雨のなか、一人で。



「恋……」
僕は、恋してるのかもしれない。



「恋ならしてるよ……」
まこっさん、あなたに