「いくらですか?」をやめて、MAKE AN OFFERにした理由。 | ロックベーシスト 西本圭介

ロックベーシスト 西本圭介

テクニカルベーシストとしてベース・マガジンでも紹介 / ディープ・パープルのグレン・ヒューズ達と共にヨーロッパ11カ国を周り、また巨匠ビリー・シーンと共にKoRnのドラマー[レイ・ルジアー]のリズム隊として登場。

 

ワーゲンバスと、私自身の終活の話

最近、1971年式のワーゲンバスについて、ありがたいことに何件かお問い合わせをいただいています。

「3丁目のたこボール」の移動販売車として長年走ってきた、Volkswagen Type 2 Westfaliaです。

移動販売のキッチン設備を降ろし、もともとのキャンパー仕様へ戻してから、少しずつお問い合わせも増えてきました。

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ただ、何人かの方とやり取りをしているうちに、ひとつ思うようになりました。

それは、

「いくらですか?」から始まる商談って、意外と不毛なんじゃないか。

ということです。


ASKって、だいたい想像より高い(笑)

私自身も最近、スポーツカーが欲しくて、グーやカーセンサーなどをよく見ています。


「このくらいの予算なら買えるかな」

と思って探すのですが、希望する年式、走行距離、グレード、状態まで絞っていくと、

自分が出したい金額では、欲しい車がない。

ということが普通にあります。


私も過去に「ASK」と表示されている車やバイクの価格を問い合わせたことがあります。

でも正直、

「安っすー!」

と思った経験は、ほとんどありません(笑)

たいてい、

「やっぱり想像していたより高いな……」

となります。

でも、それって当然なんですよね。

自分の予算と、その車が市場で売られている価格は別の話です。
 


まず相場くらいは調べてから聞いてほしい

今は昔と違って、相場を調べる手段はいくらでもあります。

カーセンサー、グー、ヤフオク、専門店のホームページ。

同じ年代、同じ車種、近い仕様の車を何台か見るだけでも、

「だいたいこの辺りなんだな」という価格帯は見えてきます。

安い順で並べています。

そして今なら、AIに

「1971年式のType2 Westfaliaで、このくらいの状態なら個人売買ではどのくらい?」

と聞くだけでも、絶対的な査定額ではないにしても、大まかな価格帯を考える材料にはなります。

もちろんAIは実車を見て査定しているわけではありません。


でも、

「100万円台の車なのか」
「200万円台なのか」
「300万円以上の世界なのか」

くらいの感覚をつかむ助けにはなると思います。


何百万円という買い物をしようというのであれば、問い合わせる前に10分でも調べる。
 

少し厳しい言い方かもしれませんが、それくらいは大人の買い物として準備してから話を始めてもいいんじゃないかなと思っています。
 


さすがに100万円台の車ではないと思う

現在、私の車と同年代で、同じようなカラーのWestfaliaキャンパーが、ショップからヤフオクに

4,350,000円スタート

で出ています。

別のショップでは、同じようなカラーのType2で、写真を見る限り私の車よりかなり錆やヤレが目立つ個体が、

2,980,000円即決

で出ています。

 

 

もちろん、これはどちらも出品価格です。
 

実際にその価格で成約したという意味ではありません。

そして、フルレストアされたType2やWestfaliaになれば、さらに高額になります。
 

当然ながら、私の車はフルレストア車ではありません。

錆もあります。
傷みもあります。
これから補修したいところもあります。
 

だから、フルレストア車の価格にはならない。

ショップ販売と個人売買の違いもある。

これから必要になる整備や補修費用もある。

そういうものを一つずつ引き算していけば、

「この辺りの価格帯の車なんだろうな」

というのは、ある程度見えてくると思っています。
 

なので私としては、

「さすがに100万円台で買える車ではないでしょう」という感覚です。

ビンテージのフェンダーのギターを30万円で買いたいと言っているようなもんです。
 


「自分が出したい金額」と「その車の値段」は別

これは、スポーツカーを探している自分自身にもそのまま当てはまります。

自分は100万円しか出したくない。

でも、自分が欲しい年式、走行距離、モデルの車は200万円する。

だったら、

予算を上げる。
条件を下げる。
今回は諦める。

このどれかになります。

「自分の予算は100万円だから、この200万円の車を100万円で売ってください」

とは普通はならない。

欲しい人の予算と、その物の市場価値は別のもの。

売る側になってみて、改めて強く感じています。
 


なので「MAKE AN OFFER」にしました

これまでワーゲンバスについて、

「いくらですか?」

と聞かれれば、こちらから希望価格を伝えていました。

でも、今後はその方法をやめます。

MAKE AN OFFER

です。

つまり、

「あなたなら、この車にいくら出せますか?」

という方式です。

「○○万円なら購入を検討したいです」

と、まず購入希望額を提示していただく。

その金額が私の想定範囲内なら、現車を見ていただいて商談を続ける。

大きく離れていれば、

「その金額では難しいです」

とお返事する。

それだけです。


値段だけが独り歩きするのも避けたい

こちらから先に価格を言うことに違和感を持つようになった理由は、もうひとつあります。

私が金額を伝える。

相手が、

「高いな」

と思って買わない。

そこまでは全然いいんです。


でも、そのあと、

「3タコのワーゲン、西本さん○○万円って言いよったで」

みたいに、価格だけが切り取られて独り歩きするのは、あまり気持ちの良いものではありません。
 

その価格には、

車両の状態、
整備内容、
補修状況、
内装、
今後予定している作業、

いろいろな前提があります。

しかも私は今も乗っています。

これから錆を直したり、内装を補修したり、12か月点検をしたりすれば、その分だけ当然費用もかかります。

つまり、

今日の状態と、半年後の状態では価格が違って当然。

むしろ早い段階で、現状のまま商談してもらった方が、補修費用が乗る前なので価格は抑えやすい。

だから固定した金額だけを外に出すより、

その時点の車両を見て、自分ならいくら出せるのか。

そこから始める方が自然だと思うようになりました。


古い車は「待てば安くなる」とは限らない

普通の中古車なら、「もう少し待てば安くなるかな」

という考え方もあります。
 

でも、50年以上前の旧車は少し事情が違います。

事故で失われる車もある。

腐食が進んで再生できなくなる個体もある。

部品取りになって消えていく車もある。
 

そして当然ですが、1971年式のType2がこれから新しく生産されることはありません。

もちろん、

「旧車は今後絶対に値下がりしない」

とまでは言えません。
 

景気や為替、人気によって市場価格は動きます。

ただ、Type2やWestfaliaのように世界中に愛好家がいて、残っている個体が少しずつ減っていく車について、

「5年、10年待てばもっと安く買えるだろう」
 

という前提では考えない方がいいように思います。

 

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5年後、10年後に、

「あのとき買っておけばよかった」

となる可能性もあります。


私自身も30年前に今から思えば、超安かった時代になんでアーリーのワーゲンバスやビートルを買い占めていなかったのか悔やむことがあります。
 

フルレストア車が高額なのも、車そのものだけでなく、その状態まで戻すために膨大な時間と費用がかかっているからです。
 

逆に、まだ手を入れる余地のある車を買って、自分で少しずつ仕上げていく。

それも旧車の楽しみ方のひとつだと思っています。
 


でも、私は別に売り急いでいるわけではありません

ここは誤解されたくないところです。

私は、今すぐワーゲンバスを売らないと困るわけではありません。

このまま所有して、

錆を直したり、
内装を補修したり、
機関を整備したり。

そういうことを趣味として楽しみながら乗り続けるのも、全然ありだと思っています。


条件が合わなければ、無理に売る必要もありません。
 


「だったら全部残しておけば?」と言われそうですが

ここで、

「そんなに思い入れがあるなら、バイクも車も全部残しておけばいいじゃん」

と思う人もいるかもしれません。

でも、私の中では少し違います。

今やっていることを、私は単純な

「聖子の遺品整理」

とは思っていません。

むしろ、

私自身の終活

だと思っています。


56歳で終活なんて早い?

そう思う人もいるでしょう。

でも私は今回、

人はいつ何が起きるか分からない

ということを、本当に身をもって知りました。

だからこそ、

自分が元気で、
判断力があって、
自分で動けるうちに整理しておきたい。

そう思うようになりました。

価値があるものは、価値が分かる人へ。

使わないものは、必要な人へ。

残したいものは、自分できちんと維持する。

そして、必要なら現金という一番分かりやすい形に変えておく。


子どもたちに「面倒な相続」を残したくない

これが大きいです。

将来、子どもたちに、

「この古いバイク、どうするん?」
「このワーゲンバス、いくらするん?」
「誰に売ればいいん?」
「動くん?」
「名義どうなっとるん?」
「この部品、何なん?」

そんなことをやらせたくありません。

 

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古いバイクやワーゲンバスが好きなのは、私です。

だったら、

その後始末まで含めて、私の趣味。

そう考えています。

子どもたちにとって価値の分かりにくい大量の旧車や部品を残すより、

自分で整理して、
必要なものを選んで、
価値があるものは価値があるうちに現金化しておく。

その方がずっと分かりやすい。


売ることと、大切にしないことは別

最近、バイクも何台か新しいオーナーのところへ旅立っています。

「3丁目のたこボール」の設備も少しずつ譲っています。

 

当然、寂しさはあります。

でも、

全部を自分のところへ置いておくことだけが「大切にする」ということではない。

そう思うようになりました。

 

自分ではもう使わない物を、ガレージの奥で埃まみれにしておくより、

次の誰かに使ってもらう。

その方が道具として幸せかもしれない。

そして、その対価は現金として残る。

それもまた、ひとつの残し方だと思っています。


ワーゲンバスも、良いご縁があれば

ワーゲンバスも同じです。

良いご縁があれば譲る。

条件が合わなければ、私が乗る。

少しずつ直しながら、キャンパーとして楽しむ。

 

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だから焦って安く売るつもりはありません。

でも、

「この車なら、この金額を出してでも欲しい」

と言ってくださる方が現れたら、その方と話をしたい。

それでいいと思っています。


だから今後はMAKE AN OFFER

ワーゲンバスについてお問い合わせいただく場合は、

「いくらですか?」

ではなく、

「私は○○万円で購入を検討したいです」

という形でお願いしたいと思っています。

そのオファーが私の想定内なら、そこから現車確認へ。

大きく離れていれば、

「今回は条件が合いませんね」

で終了。

無理な値切り合戦もしない。

こちらから価格を吊り上げることもしない。

お互い、

自分がその車に感じる価値を出す。

その方が、ずっと気持ちの良い個人売買だと思っています。

 

 

 


残すものは残す。

乗るものは乗る。

直すものは直す。

そして、次の人に託した方がいいものは託す。

 

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今の私は、そんなふうに自分の持ち物と向き合っています。

 

これは、聖子の遺品整理だけではありません。

私自身の人生を、少しずつ整理していく作業です。

 

そしてワーゲンバスについては、

売れてもいい。
売れなくてもいい。

良いご縁があれば、そのとき考える。

今はそれくらいの距離感が、ちょうどいいと思っています。