夕べのひとときのこと(逆流) | むかし日記

むかし日記

僕の古い日記です。

高校の頃,寮に入っていた。
 

実は3年生の頃に老朽化が激しかった寮の第4棟と第5棟がつぶされて,全室一人部屋の寮として新築された。

僕らは運がよく,4年生に新築の寮の第4棟に入ることになった。

これまでの4人部屋や2人部屋ではなく,一人部屋になった。

なんと小さなベランダもあり,そこから太平洋に沈む夕陽を見ることできた。
僕はクラブ活動はやっておらず,授業が終わるとすぐさま寮の部屋に帰っていた。
夕方,ほとんど人のいないがらんとした薄暗い食堂で,一人,早めの晩御飯を食べた。
その後,持ってきていたバスタオル,下着,風呂桶を持って大浴場へ向かう。
人のいないお風呂は静まり返っていて,天井近くにある窓から明るい日差しが浴槽に注いでいた。
お風呂を上がると,部屋に戻り,ベランダからの夕陽を眺めながらラジオを聞いた。


ちょうど,夕方,6時からNHK-FMで「夕べのひととき」というリクエスト番組が放送されていた。
この番組は少し変わっていて,DJは大学や短大に通っている女の子が1年交代で担当していた。
4月になると,新しいDJに変わる。
変わりたての新人のDJは,何となくたどたどしく,ぎこちない語りであり,やっぱり,前の人の方がいいなと思ってしまう。
それでも,2か月ほど経つと,結構,耳になじんでくる。


彼女はミナミデヤエコという名前で,ミナミノヨウコをナンノと呼ぶようにニックネームはナンデだと言っていた。
僕は自分と同い年のナンデちゃんにリクエストハガキを書いてみることにした。
リクエスト曲は,当時よく聴いていたライブLPの「ギャクリュウ」にした。

しばらくして,いつものように「夕べのひととき」を聞いていると,番組の最後に僕のラジオネームと弾き語りの「ギャクリュウ」がかかった。
自分のラジオネームとリクエスト曲がラジオから流れたことにすごく興奮した。
残念ながら,お便りは読んでもらえなかったが。

それで,一気に火が付いてナンデちゃんの番組にリクエストハガキをせっせと書くようになった。
しかし,毎回,リクエストハガキが採用されるということはなかった。

ある時,僕のリクエスト曲「ナガイノボリザカ」がかかった。
リクエストに添えた,
"僕はこの曲のエンディングのメロディーの部分が特に好きです"
というコメントも読まれた。
僕のコメントに対して,
「私もこの曲のエンディングが昔から好きですよ。昔のナガブチツヨシの曲いいですよね。」
というナンデちゃんの言葉があった。
僕はその言葉にいたく感激した。
この女の子と気が合いそうだ,仲良くなれそうだ,と声だけのナンデちゃんに少し恋をした気分になった。