昨年のことですが、伊藤忠商事の岡藤正広会長兼CEOのメッセージに、とても印象に残るエピソードが紹介されていました。
短大を卒業後、1970年代半ばに伊藤忠商事へ入社し、40年以上にわたって繊維カンパニーで事務職として働いていた女性社員のお話です。
きっかけは、彼女がまだ若手社員だった頃。
当時、業績不振によって伊藤忠商事の株価が100円台まで低迷していた時期がありました。
その頃、若手社員だった岡藤会長は、
「今こそ自社株を買おう」
と周囲に声をかけていたそうです。
そして、当時の女性事務職の同僚にも、
「毎月1万円でもいいから持株会に入りなよ」
と勧めたといいます。
彼女はその言葉をきっかけに、社員持株会で自社株の積み立てを始めました。
その後、40年以上にわたって積み立てを続けます。
株価が低迷していた時期もあったでしょう。
それでも持株会をやめることなく、淡々と積み立てを続けました。
そして定年退職を迎えた彼女は、岡藤会長のもとへ挨拶に訪れます。
そこで、
「あの時、岡藤さんに言われて、ずっと持株会を続けて本当に良かった。一生豊かに暮らせます」
と、お礼を伝えたそうです。
その時、彼女が保有していた伊藤忠商事の株式は10万株。
当時の株価は7,600円程度で、時価にすると約3億8,000万円。
さらに、年間の配当金だけでも約1,000万円になっていたといいます。
毎月1万円から始めた積み立てが、40年以上の時間をかけて、約3億8,000万円の資産になっていた。
これは、すごいですよね。
もちろん、伊藤忠商事の株価が長期的に上昇したことが大きな要因ですし、同じような結果が誰にでも訪れるわけではありません。
それでも、このエピソードから学べることは多いと思います。
投資というと、
「安いときに買って、高いときに売る」
「成長する会社を見つける」
「相場を読んで売買する」
といったことを考えがちです。
でも、彼女がやっていたことは、とてもシンプルでした。
毎月コツコツ買って、長く持ち続ける。
それを40年以上続けたのです。
最初は毎月1万円。
それが何十年という時間をかけることで、大きな資産へと育っていきました。
私はこの話を知って、改めて「投資って、時間が味方になるんだな」と思いました。
そして何より印象的なのは、最初から3億8,000万円を目指していたわけではないということ。
若い頃に勧められて始めた小さな積み立てを、途中でやめずに続けた。
その積み重ねが、退職する頃には「一生、豊かに暮らせる」と思えるほどの資産になっていたのです。
岡藤会長は、このエピソードを日本型企業の「ジャパニーズ・ドリーム」として紹介しています。
派手な投資をしたわけでも、特別な才能があったわけでもない。
一人の会社員が、毎月の小さな積み立てを40年以上続けた。
その結果、3億8,000万円の資産と年間約1,000万円の配当を手にした。
もちろん、これは伊藤忠商事という会社の成長があってこその結果です。
それでも、
「小さく始めて、長く続ける」
という資産形成の力を感じさせてくれる、とても夢のある話だと思います。
時間をかけることも、立派な投資戦略。
私自身も、投資を続けてきて「もっと早く始めておけばよかった」と思うことがあります。
だからこそ、これから投資を始める人には、目先の利益だけではなく、10年、20年、その先の時間も味方につけてほしい。
40年後に振り返ったとき、今の小さな一歩が、大きな資産になっているかもしれません![]()