私の横に車が止まり、窓が開いた。

「乗って」

私は言われるままに、熊谷さんの四駆の車に乗りました。

「お住まいは○○○でしたよね。送ります。食事でもしながら、話しませんか?」
「はい」

なんか緊張していた。
でも旅行のあのできごとは何だったのか、話したかったから、食事を一緒にすることにしました。


うちまでの帰り道にある、ファミレスに車を止めました。ファミレスまで20分くらいだったと思いますが、何を話したか、覚えていません。

「2名です。」

空いていて、すぐに入れました。

「好きなの食べて。」

「はっ、はい!」

私はトマトソースのパスタを頼みました。
熊谷さんもたしか、パスタを頼み、一緒に食べようと言って、サラダも頼んでいました。

注文し終わり、なんとなく気まずくて、私はひたすら水を飲みました。

正面を見ると、熊谷さんはじっと私を見ていました。

「朝倉さん、好きです。」

「…」

「旅行のことは、本当にごめんなさい。でも、朝倉さんが好きで、抑えられなかったんです。」

「はい…」

私はどう答えていいか分からず、でも、好きと言われたことは嬉しくもあり、複雑でした。

太郎は仕事に就かないし、そのためデート代はほとんど私。
ホテル代も飲み代も…

13歳年上の熊谷さんは、大人の男性。
太郎が小さく見えました。
私はメモを握りしめ、デスクに戻りました。

これからも同じ職場で働くのだから、このまま何もなかったかのように過ごすことはできない。
熊谷さんと話、しなきゃ、そう思いました。

夕方、仕事が終わり、会社を出るとすぐに、携帯を取り出しました。

メモを見ながら、ドキドキしながら、

080ー××…

熊谷さんはすぐに電話に出ました。

「あっ、朝倉です。」

「連絡ありがとう。俺、今車で出るから、待っててもらえますか?」

「あっ、はいっ」

電話を切ると、後ろから車が来る気配がした。


旅行後の初出勤。

もやもやとした気持ちのまま、とりあえず仕事をこなす。

もちろん、木村さんや熊谷さんも、何もなかったかのように仕事をしている。


お昼頃だったでしょうか、熊谷さんと階段ですれ違いました。

熊谷さんはポケットからメモを出し、
「時間あるとき、連絡ください」
と言い、メモを私に渡すと、さっと階段を降りて行きました。


メモには
080ー××××ー××××

熊谷さんの携帯番号でした。